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豊かな色彩で描かれたこの絵。新進気鋭の”障害を持った作家”の作品です。障害と向き合い、独特の世界観で注目されている一人の作家を取材しました。

先月、宜野湾市で開かれた展示会。美術教育を受けず、独自の世界観を持つ”アールブリュット”と呼ばれる作家たちの作品です。この展示会「アートキャンプ」は、障害を持つ人の表現活動を支援しようと2001年から続いています。

会場で一際目立っていたのがこの絵。与那覇俊さんが描きました。大小様々な場面が鮮やかに描かれ、文字などが細かく記されています。

アートキャンプ2001実行委員会朝妻彰代表「障害があるないを超えて美術作品として見てもらいたい作品が持っている独自性とかエネルギーを感じてもらえたら」

俊さんが絵と出会ったのは6年ほど前。普段は豊見城市にある地域活動支援センターで創作活動に励んでいます。今、取り組んでいるのは4メートルにも及ぶ大作です。

障害と向き合う作家・与那覇俊さん

与那覇俊さん「全世界を描こうと思っている国際情勢とか神様たちとか友達とのこととかありすぎて説明できない。世界のすべてを描こうと思っている」

世界情勢や世相、時にはおやじギャグなど、次々に思い浮かぶというアイデア。

下書きもなく描かれ、徐々につながった絵は、わずか2時間ほどで色鮮やかに姿を変えました。

与那覇俊さん「バランスを意識しつつ自由に描いていく感じ自由に色をどんどん増やしていく感じ。友達が100%の色合いがあるって言っていたから探していたがきょうは95%(の出来)」

障害を持ちながら絵で自分を表現する俊さん。周囲にとっては励みになる存在でもあります。

施設に通っている人「俊くんの姿勢を我々もいつでも学ばなければいけないと思う。障害者は悩みに左右されて思う存分自己発表できないと思う。一生懸命集中できる人というのはうらやましいと思う」

注目の作家、与那覇俊さんが誕生するきっかけは何だったのか?そこには家族の物語がありました。

今、注目の作家・与那覇俊さんは、4人きょうだいの2番目として産まれました。幼い頃は活発で、高校までサッカーに打ち込みました。その後、沖縄を離れ、茨城県の大学に進学。

卒業前の論文を巡って教授に叱責されたことをきっかけに、精神疾患を発症。俊さんを苦しめました。

障害と向き合う作家・与那覇俊さん

与那覇俊さん「妄想って絶対言われるけど気配がしていた後ろに気づいたらおじいさんがいるのが見えて。そこから始まってどんどん苦しくなっていって毎日毎日どんどん。高校の同級生の女性と友達になって彼女がよく助けてくれたよく大丈夫っていう声が聞こえてきて」

母・与那覇みはるさん「頭の中でこの人に助けられたという(幻想)」

与那覇俊さん「彼女の家から大丈夫という声が聞こえてきていて。霊感の強い方で」

母・与那覇みはるさん「霊感が強いというかあなたが幻聴が聞こえただけ」

与那覇俊さん「お母さんは幻聴って言ってたね」

これを境に家族の生活は一変します。

母与那覇みはるさん「毎週のように誰か交代で(茨城に)父が行き私が行き高校生だった2人の妹が交代で行き。夏の暑さはまだ我慢できるとしても冬の寒さに苦しくてたまらなかったと思うそれも大きなきっかけだったかなって」

卒業後には実家に戻りましたが、入退院を繰り返す苦しい日々。家族に支えられながら出会ったのが絵。作品が入賞したことで本格的に創作活動を始めました。

障害と向き合う作家・与那覇俊さん

これまでに描いた作品は1500点以上になり、いくつもの賞に輝いています。

県美術家連盟佐久本伸光副会長「生きるエネルギーがそこにあるような感じがする。そういうのを大きな大画面にぶつけているような感じ」

障害と向き合いながら独自の世界観を発信する作家・与那覇俊さん。表現者として次のステージを見据えています。

与那覇俊さん「いつかは現代芸術にチャレンジしたい自分の現代芸術の領域自分の画風をひとつ見つけたい。自分だけの手法で自分だけの絵を描きたいなと思っている」