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ヘリパッド移設工事に反対し座り込みは工事車両の通行を妨害していると国が東村・高江の住民を訴えた裁判で、1日、裁判官が現地で調査する進行協議が行われました。

高江で進行協議を行ったのは、那覇地裁の酒井良介裁判長ら3人と、住民2人、そして沖縄防衛局などの国側の担当者です。

酒井裁判長らは、住民が座り込みを続けている北部訓練場のゲート前など4箇所で調査を実施。道路幅を測ったり境界線などを確認したりしました。

この中で住民側は「自分たちの生活を守るためにゲート前で活動をしている」事などを訴え、一方、国側は住民の行為が危険で通行を妨害していると改めて主張しました。

ヘリパッドいらない住民の会共同代表安次嶺現達さんは「部落を囲むように(ヘリパッドが)6ヵ所できてしまえば本当にここでは生活ができなくなるわけですから、そのへんをちゃんとしっかり裁判官に見ていただきたいと思います。」と話していました。

高江の通行妨害訴訟、これまでの流れをまとめました。

1996年12月、日米両政府は「SACO」の最終報告で、2002年度末をめどに北部訓練所のおよそ半分を返還することで合意しました。しかし、それには返還される土地にあるヘリパッドを残される半分の訓練所内に移設することが条件でした。

2006年、移設される6つのヘリパッドは東村・高江区の集落を取り囲むように造られることがわかったのです。

移設に反対する住民は、移設の経緯やヘリパッドを使う機種、その飛行ルートなどについて沖縄防衛局から説明を求めるため、工事車両の出入りする基地のゲート前で座り込みなどの行動を展開します。

しかし移設を進めたい国は、この行動を「工事車両の通行妨害だ」として、おととし住民14人を相手に「通行妨害禁止」の仮処分を申請。那覇地裁は去年、住民2人の行為を通行妨害と認め、妨害禁止の仮処分を決定します。

住民側の弁護士「不当な決定。抗議行動として展開してきたにも関わらず、2人に対しては(妨害を)認定して、禁止をした」

住民側は決定を不服だとして申し立て、一方、国も本裁判を起こし、住民側の行動をやめさせようとしています。新たな施設を作るため、国が住民を訴える異例な裁判。この争いから見えてくる問題とは?

きょう高江で進行協議を取材した中村記者に聞きます。中村さん、きょうの様子を教えてください。

中村記者「きょう現場には仮処分が決定した住民2人と弁護団、沖縄防衛局などの国の担当者、そして那覇地裁の裁判官・職員合わせて30人ほどが進行協議に参加していました」

中村記者「住民側は裁判官らに『集落を囲い込むようにヘリパッドが移設されたら生活ができなくなる』と説明し反対の座り込みは活動一環で妨害行為ではないと主張しています。一方、国は終始、ゲート前での住民の座り込みは『通行妨害である』という主張にとどまりました」

国側はどこに座ったら妨害かというピンポイントを確認してほしい。でも住民は集落がヘリパッドに囲まれているいうリアルな位置関係などもみてほしい。両者はかみ合ってないわけですが、裁判官はどちらに重点をおいたのですか?

中村記者「もちろん裁判官らはゲートと座り込みの場所などの位置関係を確認、住民らの主張する集落の環境についても具体的な質問をしていました。たとえば、住宅に最も近いN4というヘリパッドに足を運び、フェンス越しに基地を見たり、住民に生活をするうえでの不安など、心情面の質問をするなど住民側の主張に丁寧に耳を傾けている印象でした」

そもそもこの裁判は、国の基地政策に反対を表明する市民を、国が司法に訴えるという前代未聞の構図で本裁判に入ったわけですよね?

中村記者「那覇地裁はこの裁判の第1回口頭弁論で和解を提示しています。裁判所としても、この裁判が単純に通行妨害の有無を判断するものとは理解していませんし、この裁判自体が争いとして馴染まないものだと考えていることが伺えます。実際、仮処分の申請が行われたときも那覇地裁は和解の提示をしていましたが、不調に終わっています」

今後のどのような展開が予想されますか?

中村記者「裁判所での審理は今後も継続されますが、それとは別にきょうの進行協議を受け、裁判所は和解案の作成し提示するとみられます。しかし、両者が譲り合うという主旨の話では本来ないので、和解が受け入れられるとは考えにくいです。基地負担軽減をいいながら移設工事を再開しようとしている国の主張と反対する住民との隔たりが大きく、司法の場での解決はたいへん難しいと思います」