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3年間の休止を経て、今年7月から診療を再開した県立北部病院産婦人科。深刻な医師不足の現場に密着、医師確保の緊急性と、その課題について考えます。

村田医師「10月の6とか8とか、まあ15でもいいや、予約して帰ってください。」

7月から再開した北部病院産婦人科の村田昌功医師。現在、産婦人科は、平岡医師との2人体制。村田医師はこの日の外来担当。

患者さん「じゃあ4時間ですね。(4時間ですか)」村田医師「ある程度安全を確保するために制限はしているんですけども、でもどんどん増えてきているところですね。もういっぱいいぱいですね」

平岡医師「陣痛はつらいしてて、止まらないっていう人が母体搬送でくるんで、まあ、準備して、緊急帝王切開を入れたいと思うんで」

民間の開業医から、緊急の帝王切開の依頼です。搬送されてきたのは、常位胎盤早期剥離の患者。出産前に胎盤が子宮からはがれてしまうもので、胎児に、十分な酸素や栄養が供給できなくなる極めて危険な症状です。担当は平岡医師。

平岡医師「もうこれから、あと5分ぐらいしたらオペレートしますので…」

すぐに、村田医師も加わります。

村田医師「ちょっと超音波所見でですね、非常に急いだほうが方がいいというカテゴリーに入りましたので…」平岡医師「今ちょっと、最後に同意書書いたら、もうすぐ下ろしますから…」平岡医師「危ないです。急がないと、(緊急ですか)緊急ですね。大緊急ですね。」村田医師「(先生も手術に加わるんですか?)一人じゃ無理。(この間外来は?)今、止めてる。」

北部病院産婦人科は、本来まだ救急は、受け入れない、部分再開ですが、本島中部の病院に搬送している時間はありません。手術は2時間以上に及び、結局、この後の外来は全てキャンセルとなりました。

平田医師「ギリギリでしたね。あと1時間遅れたら赤ちゃんアウト(危なかった)でしたね」

残された仕事をこなし、午後8時前。村田医師「僕は今日は結局、朝は普通に食べたけど、昼はだめでしたね。さっき(夕方)一緒にお水飲んだのが、少し飲んだのが初めて。水分補給もできなかったですね」

ようやくの食事。            

村田医師「ごはん食べるの早いでしょ。(ふだんからそういう食べかた)早いですね。」

村田医師は、名護の現状を知り、家族を置いて、秋田県からやってきました。

村田医師「容易にですね、どういう悲惨な状況かというは想像できました。それで、私としては、沖縄県立北部病院でまあ、自分の医療資源を活用できるんじゃないかって判断したんですね」

外来を担当した日は、そのまま夜の当直も受け持ちます。

村田医師「年に100日ぐらいは泊まることになるんですかね」「眠れるときに少し眠ろうと思います」

束の間の仮眠。

村田医師「何時間かは休めました」

村田医師が見せてくれた、医師の確保を訴えるチラシ。そこには、かつてここの産婦人科を辞めていった医師の言葉が刻まれています。

村田医師「特に、子供をとりあげる仕事をしながら、自分の子供たちは知らないうちにいつのまにか大きくなってしまったっというのは、僕の実感ですね」「医学的に見て、これ、まずいぞっていう時も、その当時3人で回していて。。どっからも応援がない場合には、精神的、肉体的な病をおして、毎日診療に携わっていたんだろうなということだと思います。」

大城医師(病理担当)は長年、同じ病院内で産婦人科医の激務を見てきました。

大城医師「一晩おきに病院に泊まる。一晩おきに病院に泊まるだけじゃなくって、帰っていいいはずの日も手術があると呼び出される、つまり、ずーと病院に一週間連続でいるような日もあったんですよ」

院長「(実感されますか)実感しますね。僻地は医師だけじゃなくて看護師やなんかもなかなか地域的に来ていただこうと思ってもなかなか集められない。」

一方で、産婦人科が再開してこれまでに誕生した命は17人に上りました。

患者さん「だいぶ、地元で産みたいなというのがあったので、近くで産めて良かったです」 患者さん「村田先生も遠いところから来られて、とてもありがたいのと、申し訳ない気持もちょっといっぱいなんですよね。朝も昼も夜もずっといらっしゃる体制なので」

村田医師らは今、あるプロジェクトを進めています。それは、地域、行政、そして病院が一体となり、この北部地区を、安心の医療が提供できる理想的なモデル地域に作り上げること。

大城医師「本当に地域で歓迎してほしいと、歓迎し続けて、また働き続けられるようにみんなとしても助けてほしいと思います」

村田医師「そうでないとやはり、今、全国的に不足している産婦人科医がわざわざ沖縄県の名護市には来ないんじゃないかな」

きょうも、帝王切開の患者が運ばれてきました。北部病院産婦人科には、年内にさらに2人の医師が配属される見込みですが、全国で、医師の争奪戦が始まる中、財政的にも厳しい、県内の病院には、今後、安定的な医師確保に向けた次の戦略が求めれているのです。

帝王切開の手術が終わりました。元気な女の子です。

村田医師「残念ながら40代後半なので、若い時みたいに回復力もありませんし、馬力もないんですけども、それはそれで、なんというんですか、つぶれないようにセーブしながら、だけども精一杯やっていこうと思っています」

医師たちの挑戦に、いま、行政、地域がどう向き合うのか?命を守る改革は、もはや待ったなしです。