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今日はサンゴの日で、しかも今年2008年はサンゴ礁とその生態系の重要さを知ってもらおうという国際サンゴ礁年でもあります。

世界中の海で、急速に姿を消しつつあるサンゴ。早くからその危機について叫び、活動を続けてきたアメリカのサンゴ学者が、沖縄にやってきてある挑戦を始めています。

キャサリン・ミュージックさん「1キロの大豆とちょうど1キロの海水使って、豆乳に海水を入れて混ぜて焼いて豆腐が固くなるでしょ」

山の大豆と海の水が出会い、生まれる豆腐。子どもたちに海の幸と山の幸のつながりを教えているのは、サンゴ学者のキャサリン・ミュージックさんです。

子ども「one, two, three, …12!ロッポウサンゴだから6の倍数で12か36。これはアオサンゴ。なぜ青というと、中に青い色がある」

かつて7年間、沖縄に住んでサンゴの研究にあたったキャサリンさん。20年ぶりに沖縄に戻ってきたのは、ずっと温めてきた夢を実現するためです

サンゴ危機が叫ばれ始めたのは、もう30年も前。早くから自然保護を訴えてきた彼女は、石垣市白保に世界有数のアオサンゴの群落があることを世界に知らしめた人でもあります。

キャサリンさん「アオサンゴはポリプのまっ白。ポリプは八手ある。近くで見ると八本の手。八つあるから八放サンゴ」

「八放サンゴ」が専門のキャサリンさん。とにかく八放サンゴが大好きで、この日は大浦湾で見つかったアオサンゴの大群落を見に行きます。

去年9月に発見されたこの大群落は縦50メートル、横30メートルの規模。北は奄美まで分布しているアオサンゴですが、ここまでの群落に成長することはまれで、白保に次ぐものと注目を集めています。

折れた部分からは、アオサンゴの名前の由来である青い骨格が顔を出しています。

キャサリンさん「大きい!きれい!すばらしい!いくつも種類がある。八方サンゴ、一つじゃない。イソバナ、見たでしょ。赤い、柔らかい八方サンゴの一種」

ほかにも八方サンゴの仲間を見つけると、とてもうれしそうなキャサリンさん。

ポリプの一つ一つが別の命。その8本の手を必死に広げて餌をとろうとしています。出産のときはなおさらいとおしいといいます。

キャサリンさん「お母さんポリプが、赤ちゃんをすぐ近く、ここに置いてる。私が一人のポリプとすると、赤ちゃんはここ、私の手の下に隠れて、お母さんが守ってる。自分の子」

これが、赤ちゃんをもったポリプ。アオサンゴは卵ではなく、プラヌラと呼ばれる幼生を放出します。ただし、すぐに海に放さず、しばらくわきに抱え、ポリプをパンパンに膨らまします。普段はすぐに引っ込むポリプも、幼生を抱えているときは隠れず、必死に守ろうとするそうです。

でも、サンゴ自体が、いま大変な危機にあるのです。

キャサリンさん「世界中のサンゴ礁どんどんなくなった。原因は人間ですね。汚染、赤土、農薬、二酸化炭素。一番心配することは二酸化炭素。人間悪いから、サンゴの世界は汚い」

キャサリンさんは世界の海でみたサンゴのダメージに心を痛め、大好きな沖縄で、腰を据えて、海を守る方法を実践しようと帰ってきたのです。

しかし、すっかりコンクリートに固められた沖縄の海の姿に胸がつぶれそうだったと言います。

キャサリンさん「港を造って護岸にセメントをすると海と山のつながりはなくなる、カットされる。海と山は恋人。愛し合っている、お互いを必要としている。だから、私たちは海と山を元に戻してあげないといけない。陸のほうの人間、特に子どもにこの説明をしたい」

キャサリンさんは本部の土地に「オタマジャクシ城」を作ろうと立ち上がりました。メンバーは地域の子どもたち。荒れ地にごろごろしていた石を集め、畑の囲いを作るところから始め、小さな池も完成しました。春菊やレタスなどの野菜。ミントにセージなど、薬草もあります

この日はみんなで雑草をとりました。野菜は薬草との組み合わせで、農薬なしでも虫や病気に強くなる。植物学にも秀でたキャサリンさんは、プエルトリコでそんなエコガーデンを完成させています。電気は太陽光や風車で生み出し、ゴミもリサイクル。バイオトイレを導入し、海を汚さない暮らしを提案してきました。

そのモデルを、沖縄で子どもたちと作ろうというのです。

キャサリンさん「土が大事、水も大事。水と土があると植物がある。植物あるから人間も牛もウサギも食べる。きれいにすると、赤土が出ないようにしたら海が戻ってくるかも知れません」

サンゴが消えたと嘆くだけでは変わらない。キャサリンさんは永住する覚悟で沖縄の土と人と向き合います。

キャサリンさん「勉強するより、陸の方でがんばります。でないと繰り返すことになります。私たちが変わらなければ」

なぜ、海の中をフィールドにしてきた彼女が真剣に土に向きあい、エコガーデン作りにとリ組むのか。陸の人間が変わらなければ、サンゴは生きられないということ誰よりも知っているからなんですね。

そして、将来この地域を担う子どもたちと一緒に実践する。これが遠回りのようで、一番効果的かもしれません。海に迷惑をかけない暮しとは一体どんなものなのか、今後が楽しみです。