※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。
News Photo

ベンチャーや異業種との共同事業など、新たなビジネスチャンスを考えている起業家のネットワークが広がりをみせる中、若い世代の起業家が集まって、那覇市内にショップがオープンしました。

店舗の立ち上げには、個人の専門技術やノウハウを発揮しあう起業家同士のコラボレーションと組合形態で事業を行う(LLP)という制度が鍵になりました。新しい試みに取り組む様子を取材しました。

那覇市牧志、国際通りの裏にある小さなお店。店内にはキャップやハンチング帽、ニット帽などおよそ400点の帽子がズラリと並んでいます。豊富な品揃えが自慢の帽子専門店「カラーズ」。オープンしたのは今年の8月です。

カラーズは9人による共同経営。メンバーはインターネットを通して出会った人々が集まってできました。

オーナーの一人、紺野昌彦さん。オープンのきっかけは紺野さんがインターネット交流サービスに開いたコニュミティーがきっかけでした。

国際通りにアジア雑貨と古着屋を営んでいる紺野さんは、今年4月、同じ世代の起業家や起業意欲のある人々の交流を目的にしたコミュニティーを立ち上げ、ネット上で交流を始めました。

紺野さん「これなら何かできそう」

コミュニティーに参加した一人、友利真由美さん。今年、独立したばかりのファイナンシャルプランナーで、9人のオーナーの中で唯一の女性です。

友利さん「同じ自営業者が多くて、通じ合うものがあった」

コミュニティーにはおよそ300人が参加、メンバーが集う「オフ会」は起業や経営に関する「勉強会」となりました。そのうちメンバーの間から「お店を開いてみよう」と話が持ち上がったのは6月。早速準備が始まりました。

その後、2ヶ月の速さで「カラーズ」は念願のオープンを果たしました。

お店はデパートや洋服店が軒を連ねる表通りからおよそ50メートル離れている裏通り。紺野さんらは「お客さんが目的を持って足を運んでくれる専門店」をコンセプトに「県内で少ない帽子だけを扱ったお店」で勝負に出ました。

開店に際しては店舗経営がある人が仕入れや店舗の内装を受け持ち、お店の顔となるホームページはネットショップのオーナーが担当するなど、9人のオーナーが持つそれぞれのノウハウのコラボレーションが大きな原動力となりました。

また、開店にあたって、紺野さんらは有限責任事業組合(LLP)の形態を取り入れました。LLPとは去年施行された新しい事業体で、登記手続きの簡略化、出資金を出した自分達で会社のルールを決められる、法人税がかからないなどのメリットがある一方で、出資する本人が労務提供をしなければならないという特徴があります。

友利さん「集まったオーナーでお店番を当番で担当していけば、人件費も浮くし、配当も多くもらえる。商品も安く提供できる」

お店番は9人が変わりばんこで行っています。この日はネットショップを開いている23歳の平良長さんと、グラフィックデザイナーの中地涼さんの2人が店に出ます。2人は将来、自分の会社を持ちたいと夢を抱く起業家の卵です。

中地さん「足場固めだと思います」

オープンから2ヶ月、お店には20代から30代を中心に一日50〜60人が来店。売り上げも当初の目標通りと順調な滑り出し。お客さんのニーズを掴みつつあります。

店舗の様子や問題点はパソコンを通してお互いに共有できるようにしています。今回のオープンで起業家同士の交流が更に深まったという紺野さん。「起業家コミュニティー」には新たな事業のアイデアや将来、事業を目指す大学生などからの相談が多く寄せられています。

紺野さん「集まってくる情報、知識、スキルをそれぞれ共有できる環境をつくりたい。前に進みたい。現状では納得したくない」

ビジネスを通してメンバーの専門性や個性というそれぞれの色を表現しあう場所「カラーズ」。若き起業家たちの試みは始まったばかりです。

このLLPを利用して新規事業を起こす事例は県内でもまだ数例だということで、出資金は少なくても、事業を行う意欲のある人たちが共同で事業を立ち上げるモデルケースとなっているようです。

この店舗が軸となった起業家同士の活動も盛んで、来月にはITと物流をミックスした新しい事業の講演会、年内までに新しい会社の立ち上げと、若い世代の起業意欲が沖縄経済を底辺から変えるエネルギーになりつつあるようです。