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北朝鮮が核実験を実施したことを受け、国連が全会一致で制裁決議を採択するなど、国際的に北朝鮮に対して圧力をかける動きが強まっています。

一方、沖縄では日米両政府がパトリオットの嘉手納基地への配備を進めていますが『北の脅威論』を上手く利用しているようにも見えるタイミングで沖縄の基地機能が強化されています。

そしてさらに政府の高官が『日本の核保有論』について言及するなど、わずか60年余り前の惨禍を忘れたかのような今の流れとその流れに再び飲み込まれつつある今の沖縄の姿について、岸本記者の報告です。

北朝鮮のニュース(10月3日)「科学研究部門で今後、安全性が徹底して保障された核実験を行う」

北朝鮮が実施した核実験。アメリカのCNNはこれを受けて、アジア地域の緊張が高まり日本が今後、軍事力を拡大する可能性があると世界に伝えます。

CNNのニュース「とくに北朝鮮の問題は懸念材料として非常に大きい。北朝鮮に対しては非常に強硬な態度を取っている安倍首相です。日本は自国で核兵器を開発するという圧力がかかるかもしれません。しかし今の憲法では禁止されています。攻撃はもちろん禁止されています。安倍総理も日本が核兵器を開発するということは反対している。しかし、(日本の核兵器開発の)可能性がある、検討している人がいるというのも事実です」

『内閣総理大臣に指名することに決まりました』

先月26日に発足した安倍新内閣。北朝鮮・強硬派として知られる安倍氏の周辺からはCNNのこの報道が現実味のあることを裏付ける発言も出ました。

自民党・中川政調会長「どうみても頭の回路が我々には理解できないような国が(核を)持ったと発表した。これは何とか撲滅しないといけない訳ですから。(日本に)核があることで攻められないようにするためにその選択肢として核(兵器の保有)ということも議論としてある。その議論は大いにしないといけない」

アメリカに追従するような形で北朝鮮への制裁の色を強める日本。琉球大学の我部教授はそのような政府の姿勢に警鐘を鳴らします。

琉球大・我部政明教授「日本の行動も加速するというか、いわゆる圧力の方に傾く。日本というのは圧力というのは無い。アメリカが圧力を持っているだけで、そうすると日本というのは対話をやめるという形になる」

7月の北朝鮮のミサイル発射。これ以降、対話をほとんど打ち切ってきた日本政府は、これまで国民の間に広がる北朝鮮への反感を利用するような形で着々と沖縄での基地機能の強化を進めてきました。

先月、防衛庁が辺野古への基地建設を前提に進める文化財調査を阻止しようとして逮捕された平和団体の平良夏芽さんは、政府の沖縄に対する姿勢の変化をこう指摘します。

平良夏芽さん「じわじわとではなく、大きく転換したと思います。総領事にしても政府の高官たちも、今まで県民にひざまづいてなんとか誘導をしようとしていたものを強行するように、大きく変わったと思う」

そして先週の嘉手納基地へのパトリオットミサイルの搬入では、県警の機動隊員およそ100人が動員され、座り込む平和団体のメンバーをごぼう抜きで強制的に排除。基地の機能強化に反対し続けてきた住民の声は『北朝鮮の脅威』の前に、完全に打ち消されようとしています。

我部教授「緊迫感が高まれば高まるほど、沖縄への配慮はしないと思います。もともと(沖縄が)入る隙はないかもしれないけど、今後配慮する姿勢はみえなくなってくるんじゃないかと思います。バランスを取っていく政治が今の日本にはない」

北朝鮮の威嚇に過剰反応し、昔たどった道を再び歩もうとしているようにも見える今の日本。平良さんは、もう一度冷静に事態を見据え、住民を巻き込んだ地上戦が展開された沖縄が声を発する時だと訴えます。

平良夏芽さん「今の世の中の動き、反応を見てると、核兵器を持ってて核実験をしている国が、自分たちを棚に上げて非難している。本当におかしいですよね。まずいですよね。そういう雰囲気で北朝鮮を空爆してもいいんだという世論が作られていくんじゃないかと思っている」

確かにパトリオットの嘉手納基地への配備が正式に決まったのは5月のアメリカ軍最終報告で、その時ははっきりと『対・北朝鮮』の配備であるとはしていませんでした。

でも、今は県内でも『備えあれば憂いなし』といった論調の発言も多く見られるようになり、パトリオットは北朝鮮への対策だけのために配備されたように受け取られるような状況が作られています。

憲法9条の改正の動きも含めて、戦争に突き進むかのような、きなくさい今の動きにしっかりと注視する必要がありそうです。