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かつてない規模で進んでいくサンゴの破壊を食い止めるために、今、世界80カ国で一斉に行われている試みがあります。それが、「リーフチェック」。ダイバーなら誰でもできる統一された基準で、サンゴ礁の健康度を定期的にチェックするというものです。

あの俳優のレオナルド・ディカプリオさんもリーフチェッカーの一人ということですでに世界1000箇所以上に広がっていて沖縄でもかなり定着しています。その内容と可能性を取材しました。

沖縄では1998年の白化現象で大きなダメージを受けたサンゴ。地球規模では過去5年で全体の16パーセントのサンゴが消失し、また現在も1/4が危機的な状況におかれているのです。

今回リーフチェックが行われるのは、基地建設で揺れる辺野古と大浦湾。辺野古は8年前から調査が継続されているポイントです。主催するのは、日本でリーフチェックを進めるNPOの「コーラルネットワーク」と、各地域の自然保護団体です。まずは集まった30人のダイバーに基地建設問題を抱える地域の背景を理解してもらおうとミニ討論会が行われました。

平良 夏芽さん「辺野古に集まってこの基地建設に反対する人たちは、いろんな思いの人たちがいます。サンゴ礁を守りたい。ジュゴンを守りたい。海全般を守りたい。戦争がイヤだ。いろんな人たちがとにかく基地建設はイヤだって言う一点で協力してやっていった」

会場からは、平和運動と自然保護の関係について質問が出され、人間が人間と共生する「平和」と人間が地球と共生する自然保護は同じ思想だということを確認しました。

その後、リーフチェックの進め方について、班ごとに確認します。魚の種類や数を調べる魚類班・ウニ、ナマコなどを数える無脊椎動物班・その海底がサンゴか岩かなどを確認する底質班と3つに分かれます。調査は、水深3メートルと10メートルの海底に引いた2本の100メートルのラインを中心に行われ、0地点からゆっくりと泳ぎながら、5メートルごとに対象となる生き物を数えていくという単純な方法です。

阿部真理子さん「専門にやっていればいるほどもっと細かいことをみたくなってしまうと思うんですね。それはそれでもちろん意義のあることなんですが、たとえば辺野古のハードコーラルの推移みたいな大雑把なサンゴの健康度って言うのを知ることも大事で、たとえば学者の数が足りない、研究の予算がないって言うのであれば大雑把な範囲でかまわないので世界中で同一の方法で比較可能な手法で調査することは意義があるって思ってます。」

阿部さんは、大学卒業後「WWFジャパン」で自然保護の仕事をし、その後オーストラリアの大学院に入ってサンゴの研究を本格的に始めたという経歴の持ち主。今も琉球大学の博士課程で勉強を続けながら科学者としてリーフチェックをひっぱっています。

辺野古の水深10メートルの海底にラインを設置して待つこと15分。魚たちが戻ってきたのを見計らって、まず、魚類班が出発。二人一組でラインの左右2.5メートルずつを目視して5メートル1ブロックとして、数を票に記入します。

チョウチョウウオなど観賞用や食用として乱獲の危険性がある種類は調査対象になっています。

以前に比べ、ブダイの数は減っています。サンゴが減るとブダイも減るという傾向が指摘されています。

続いて無脊椎班がスタート。ウニやシャコガイ・なまこなど、岩の陰も丁寧に見ていくので、100メートル調べるのに4,50分の時間をかけます。海底の様子は、サンゴ比率が65%を超えていた8年前からすると無残な状態。しかし、小さなサンゴがそこここに見られ、今回は6.5%と去年よりやや改善した数値が得られました。

真理子さん「チョウチョウウオもサンゴの健康度と関係あるんですけど、チョウチョウウオの数がちょっと落ちていて・・・」阿部さんは、思ったより回復の速度が遅いと表情を曇らせます。

同時進行で進む大浦湾の調査。ここはユビエダハマサンゴの群落や歩くサンゴが見つかるなど、豊かな生態系が注目を集めているため、去年から調査地に加えられています。ハマサンゴやキクメイシサンゴの仲間が見られます。ジュゴンも餌を食べにやってくる静かな環境ですが日米両政府が合意したキャンプシュワブ沿岸に基地を作るためには大浦湾には埋め立ての大量の土砂が注ぎ込まれる事になります。

調査には、各ポイントで必ず一人は「チーム科学者」が必要です。しかし、科学者の不足がリーフチェックの足かせになっていることから、今年から短期間の講習を受けて「チーム科学者を育成するコース」を開講し、サンゴ礁の専門家を増やす計画です。

中谷 誠治さん「非常に期待を持っています。サンゴを研究している人の数が非常に少ないってこともありますし」「関心のある方がトレーニングを受けて、勉強されてこういったチームを引っ張る科学者になっていただければ非常に嬉しい」

ダイバーの1/3今回初めての参加でしたが、波が高いなど厳しい条件の中でもそれぞれに手ごたえを感じたようです。

男性「イヤー面白いですね。まず、いつもはファンダイビングで潜っているだけなんで、こういう魚とかも、ゆっくりなにがどれだけいるって言うのもみないで潜ってるもんですから」女性「世界統一基準って聞いてますけど、ホントに一般のダイバーでもやりやすいように、うまく作られているという感じがしました」

コーラルネットワークでは今週末から東京大阪そして沖縄の3つの会場で「チーム科学者の要請講座」を開きます。5つの講義と海洋実習をクリアすれば、リーフチェックの科学者として活動に参加できます。受講は無料ということで、興味のある方は早めにこちらに問い合わせてみてください。

サンゴ礁モニタリングリーダー育成講座(無料)

学科講習4日、海洋実習2日(実費)

7月8日(土)から 東京/大阪でも開催

問合せ 080-5067-0957(安部)

地元の海に意識を持ってかかわろうという人が増えれば、それはデータが増えるだけでなくそれ以上の大事な蓄積になりますよね!