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戦後80年となり沖縄戦の次世代への継承や平和教育について様々な課題が浮き彫りになっています。戦争を繰り返さないために、私たちはどう沖縄戦と向き合わなければならないのかを考えます。

沖縄戦の語り部 翁長安子さん「(従軍した郷土部隊の)永岡隊長が安子死ぬな、君たちは若い、生きてこんな戦があったことを語ってくれ」「ぜひ投降してくれという諭され、いま私は生かされております」

たどる記憶つなぐ平和#21「次世代への継承と教育の現状」

沖縄戦から80年で体験者が少なくなるなか、様々な場面で行われている実相の継承。しかし、その取り組みについて多くの課題がみえてきています。

沖縄歴史教育研究会 新城俊昭さん「意識は高いけど知識は低いというのが30年間ずっとなんですね、ただ知識もちょっとずつ高くなっている」「(子どもたちが)学ぶ時間が足りない」

今月、教育関係者からなる「沖縄歴史教育研究会」が、沖縄戦などへの認識を把握するために県内の60校の高校2年生1642人に実施したアンケートの結果を発表しました。

たどる記憶つなぐ平和#21「次世代への継承と教育の現状」

そのなかで「家族や親族で沖縄戦について話してくれる人がいるか」という質問に対しては「いない」と答えた生徒は58.9%にのぼり「いる」と答えたのが26.5%と家庭で戦争について話す機会が減っているという結果になりました。

また「沖縄戦を学ぶことについて」の意識調査では「とても大切」「大切」と94.8%が答えるなど高い水準だったものの、ことしが戦後何年かを正確に答えられた生徒は全体の60%、慰霊の日は何があった日なのか答えられたのは48.1%「平和の礎」に刻銘された戦没者の人数がおよそ24万人と回答できたのは19.7%など、戦争の具体的な質問になると正答率は下がる傾向にあります。

たどる記憶つなぐ平和#21「次世代への継承と教育の現状」

今回の結果について沖縄歴史教育研究会は学校教諭の多忙化などにより、沖縄戦について教える教材作りや生徒が戦争について考える時間がとれなくなっているとの課題があるとしています。

さらに沖縄戦に関する認識をめぐって、波紋を広げる事態も。

先月、自民党の西田昌司参議院議員が沖縄戦の教育について「無茶苦茶な教育をしている」という認識を示しました。

また、4月に行われた伊江村主催の平和祈願祭で配布された資料では、住民を強制的に戦場へと駆り出した日本軍を「友軍」と記載。住民を含む犠牲者については「護国の華と散った」などと戦争を美化する表現がされていました。

沖縄国際大学非常勤講師 川満彰さん「市民が戦争を正当化し始めたら戦争への道は一気に進んでいきますよ。やっぱりそれを食い止めるのも市民なんですよ」

たどる記憶つなぐ平和#21「次世代への継承と教育の現状」

沖縄戦を研究し大学で平和について考える講義を行っている川満彰さんは「戦争美化の表現」は沖縄戦の実相を見えづらくしてしまう危うさについて指摘します。

沖縄国際大学非常勤講師 川満彰さん「当時日本軍を『友軍』と言っていた」「友軍イコールいい人たちだったんじゃない、この友軍と言われた人たちが何をやったんだということですよね、だからきちんとそこまで話をもっていかないといわゆる美化された言葉が独り歩きをしていく」

また、戦争について考えるときには軍隊の役割と兵士個人の人柄は分けて考えなくてはいけないと語りました。

沖縄国際大学非常勤講師 川満彰さん「いい日本兵もいたっていうのも確かなんです」「人としてどう見るのかではなく、軍隊という構造のなかで人がどんどん殺されていくし、人を殺していく、そこに対してきちんと戦争責任という部分をもっていかないと」

たどる記憶つなぐ平和#21「次世代への継承と教育の現状」

翁長安子さん「(亡くなった人の)血や肉は地面にしみ込んで、草や植物の栄養になってるわけですね。その草が繁茂しているところを分けると間違いなく死体がある」

次世代への継承が模索されるなか体験者は戦争を繰り返させないために自らの経験を伝え続けています。

翁長安子さんは沖縄戦当時、15歳で看護要員として従軍しました。隊はアメリカ軍の攻撃を受けてバラバラになり、翁長さんは銃弾を背中に受け、逃げ込んだ壕では戦車砲や火炎放射に襲われるなど地獄のような戦場をさまよいました。

先月フィールドワークに集まった人たちに向けて、終戦後に亡くなった住民を弔うために遺骨を集めたときのことを話しました。

翁長安子さん「ミニトマトが茂っているところがあったんですよ、これを引き上げたら小さい頭と大きい頭(の骨)が3つあるんですね、これは親子だな、」「こんな小さい子供2人を前にして、このお母さんはどんな思いで死んだんだろうとおもいました。私も死んでいたらこうなっていたのかな」

たどる記憶つなぐ平和#21「次世代への継承と教育の現状」

参加した高校生「自分たちは会に参加して体験者から話を聞けているので、それをまた今日来られなかった人たちに伝えて、みんなで考えたいです」

参加した高校生「(体験者でなくても沖縄戦の)話を伝えること、それについて考えることはできるので、僕たちはそれを頑張っていかないといけないのかなと思いました」

翁長安子さん「(西田議員の発言は)認識不足、勉強不足、国会議員だったらもっと勉強して事実をはっきりと覚えてから発言してほしい」「沖縄だけの問題じゃないよ、この問題は戦争に繋がっていくからさ、だから二度と戦前の沖縄に戻ってほしくない、いま私たちはものが言えるからこれだけは良かったと思っている」

沖縄国際大学非常勤講師 川満彰さん「(沖縄戦から)時代を経て物事を俯瞰する力が戦争非体験者にはある。その俯瞰したものと(戦争)体験者がしゃべったこと」「それをあわせることで沖縄戦の実相が分かる」「戦争非体験者こそが先頭に立ってそれをきちんとみんなに伝える必要がある」

体験者が語った戦後の記憶を直接聞いた私たちの世代が次世代にどのように繋ぐのか?道半ばです。