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ここからは特集です。沖縄戦で多くの文化財が失われる中、「戦利品」としてアメリカに持ち出された琉球国王の肖像画「御後絵(おごえ)」おととし返還されたこの貴重な文化財をめぐり、返還に深く関わった一人の女性の情熱と軌跡を追いました。

2024年4月30日ニュース「沖縄に返還された琉球国王の肖像画『御後絵』をはじめとする貴重な文化財が30日、関係者向けにお披露目されました。」

沖縄の宝を取り戻せ!~『御後絵』返還に情熱を注いだ女性の記録~

おととし3月、沖縄戦によって国外に持ち出された、琉球王国時代の貴重な文化財が、78年ぶりにアメリカから返還されました。これらの「国宝級」の文化財をいつ、誰が、なぜ沖縄から持ち出したのか?そして、どのように返還が実現したのか?その経緯を書いた一冊の本が今月、出版されました。

『御後絵の色を追って』。78年の時を経て沖縄に戻ってきた貴重な文化財の返還に情熱を注いだ人たちの記録と思いが綴られています。

「はじめまして。よろしくお願いします」

この本の著者・高安藤(たかやす・ふじ)さん、82歳。現在、「ぬちまーす」の副社長を務める高安さんが、「御後絵の里帰り」に関わるきっかけとなったのは、アメリカ総領事館での勤務でした。

高安さん「1998年に流出文化財に関するシンポジウムがありまして、そこで、戦時中に中城御殿から沖縄の宝物がごっそり盗まれたと。御後絵とか『おもろさうし』とか、王冠とか、皮弁服とか、いろんなものが持ち出されているわけです。そういう証言をなさっていた」

このシンポジウムへの参加から、高安さんの御後絵探しの長い旅が始まります。2000年、沖縄で開催されたサミットで広報を担当していた高安さんは、当時のクリントン大統領にある提案をもちかけます。

沖縄の宝を取り戻せ!~『御後絵』返還に情熱を注いだ女性の記録~

高安さん「大統領から沖縄に返してほしい」「沖縄の貴重な宝物の1点でもいいから見つけ出して、クリントン大統領の手で沖縄に返してほしいと」

この提案は実現しませんでしたが、アメリカ国務省の助言で御後絵を含む13点の文化財を写真や証言などの資料をもとにFBIの盗難美術品ファイルに登録することになりました。

担当者からは「登録されれば世界中の美術館や収集家に情報が共有され、返還につながる可能性が高まる」と説明を受けますが、高安さんのもとに吉報が届くのは、登録から実に20年を過ぎたときでした。

御後絵を含む13点の文化財をFBIの盗難美術品ファイルに登録して20年あまりが経った2023年。FBIに入ったある連絡が、事態を動かすことになります。

当時、担当したFBIのジェフリー・ケリー特別捜査官は次のように振り返ります。

ケリー捜査官「ボストン支局に一本の通報が入りました。亡くなった父親の遺品を整理していた家族が、価値がありそうなアジアの美術品を見つけたのです。巻物や陶器、古い地図などがあり、調べてみると、その巻物が約20年前にFBIの『盗難美術品ファイル』に登録されていることが分かりました。家族はそれらが盗難品である可能性に気づき、FBIに連絡したのです」

この出来事は、アメリカでも大々的に報道され、FBIは文化財と一緒に見つかった匿名の文書を分析。

沖縄の宝を取り戻せ!~『御後絵』返還に情熱を注いだ女性の記録~

文書には、「がれきを取り除くと多くの興味深い美術品が見つかった」という内容が書かれており、第二次世界大戦末、沖縄で略奪された可能性が高いと判断。

その後、FBIが専門機関に鑑定を依頼した結果、正真正銘、沖縄から持ち出されたものであると判明したのです。

高安さん「本当に驚いて涙が出るくらい嬉しかったですよ。涙が出ましたよ。とにかく御後絵を見つけたいっていうのが私の一番の望みでしたからね」「本物の御後絵が戻ってくる。いつも見たかった色彩が戻ってくる。」「涙が出て。本当にうれしかったんですね。うれしかったですね」

長年行方が分からなくなっていた御後絵。発見のきっかけは、考古学者だった一人の女性でした。この作品はもともとゴミ箱の近くに捨てられていたものを、元軍人だった女性の父親が拾い、自宅で保管していたといいます。

その後、父親の遺品整理をしていた女性が作品に目を留め、FBIの盗難美術品ファイルを確認。すると、自宅に保管されていた作品が、長年行方不明となっていた御後絵であることが判明したのです。

「御後絵」とは、どれほど貴重なものなのか?専門家はこう語ります。

平川さん「(御後絵は)王様が琉球の国民にとってどういう存在であるべきかというのをですね、具体的に物とかですね、家臣によって表現した肖像画になっておりまして、これがですね、東アジアで見ていても大変特徴的」「琉球を代表する絵師たちが関わっているので、美術史的に言えば琉球絵画という最高峰の作品が返ってきていて、あと絵の具がどういうものが使われていたりとか、技術的な面であったりとか、紙の部分であったりとか、具体的に絵画作品として御後絵を研究することができます」

沖縄の宝を取り戻せ!~『御後絵』返還に情熱を注いだ女性の記録~

高安さん「2009年前には何度か来たけど、そのあとは来てない。すごいですね」「御後絵の朱色と似てますね、首里城」

高安さんは、長い旅の果てに取り戻すことのできた御後絵への思いを、本の中でこう綴っています。

「御後絵を前にしたとき、私たちの胸に湧き上がるのは、単なる美術的な価値への賛美や、歴史的な重要性への敬意だけではないはずだ。この宝物がたどった苦難の道のりへの深い共感と、それを未来へつないでいく使命感である」

高安さん「これからまだ見つかっていない御後絵もたくさんありますし」「南殿が完成しましたら御後絵が戻ってきてほしいですよね。カラーのついた白黒ではない何点かが戻ってくると本当にうれしいと思います」

長年にわたる強い情熱が、78年の時を超えて「沖縄の宝」を取り戻す大きな力になったんですね。モノクロ写真でしか見られなかった御後絵ですが、実物の発見で色彩が明らかになり、当時の歴史研究が進むことも期待されています。

高安さんの歩みを綴った本も出版されていますので、気になった方はぜひチェックしてみてください。