13日開票の知事選挙に向けて、様々な政策課題を取り上げる「争点を歩く」です。きょうは沖縄振興の問題について取り上げます。
毎年、その額が注目される沖縄振興予算。他県にない特殊事情を踏まえ、国から支払われているものです。県の基地問題への対応と予算額がリンクしているとも長年指摘されてきました。本土復帰から50年以上が経過した今、改めてその是非を考えます。
仲井眞知事(当時)「これはいい正月になるなあというのが私の実感です」
2013年の12月25日。総理官邸でこう発言した当時の仲井眞知事。政府が県に出した、辺野古新基地建設の埋め立て申請を県が承認するかどうかの局面。この日知事は、当時の安倍総理や菅官房長官と面談しました。
安倍総理(当時)「平成33年(2021年)度まで沖縄振興予算について、毎年3000億円台を確保することを昨日の閣議における私の発言の通り、お約束をいたします」
仲井眞知事(当時)「140万県民・県を代表して、心から御礼を申し上げます。元々、概算要求を上回る(沖縄振興)予算をつけていただき、本当にありがとうございます」
県が要求した普天間基地の5年以内の運用停止に当時の安倍総理は「本土における、努力を十二分に行うべき」と述べました。県は沖縄振興予算について、10年間の3千億円台を確保したとして、感謝を述べます。
沖縄振興予算は、一括計上という方式で額が決定しています。他県では国からの事業や予算額は各省庁と自治体がやり取りする中で決まる一方、沖縄県は内閣府の沖縄関係部局を通して、各省庁の予算を獲得する方式です。
内閣府を介した一括計上も含む沖縄振興策は、戦後27年にわたってアメリカの施政下に置かれた「歴史的事情」や、アメリカ軍専用施設・区域が集中している「社会的事情」など特殊事情を考慮して行われているとされています。
一方で、基地問題での県政の対応によって、国の振興予算が連動していると見なすいわゆる「リンク論」はタブー視されてきました。
安倍総理「沖縄振興と基地負担軽減の両面にわたって、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、政府一丸となって、各種施策に取り組む」
その中で、安倍総理は、振興と基地負担軽減の両方の回答を、仲井眞知事に示したのです。
仲井眞知事(当時)「基準に適合していると判断し、承認することといたしました」「これが結論でございます」
「いい正月」発言の2日後、仲井眞知事は辺野古新基地の埋め立てを承認します。
仲井眞知事(当時)「政府から示された(10年の)計画期間内の(沖縄振興予算)3千億円台の確保」「今後の沖縄の発展のために不可欠なものであるといえます」
政府の振興策を評価する発言も。
記者「これまで基地と振興のリンクは否定していたはず」「承認する場面で振興策を評価すると」「知事自らリンク論に立って判断したということを認めたということか」
仲井眞知事(当時)「リンク論を支持するかしないかとの論に、私は答えを持っていない」「基本的に沖縄振興と基地問題の解決・負担軽減はリンクをしていないというのが、我々の考え」
実際には「リンク論」の否定はあくまで建前で、沖縄振興予算はしばしば、基地問題を巡って政府と県の交渉材料とされてきました。
島袋教授「琉球政府は国政事務もやっていた。都道府県事務もやっている。両方の制度を併せ持った政府だった。準主権国家的な政府だった」「革新自治体じゃないですか。屋良朝苗(知事)だったじゃないですか」「可能な限り国政事務を全部国のほうに持っていくと」「行政的な合理性のみならず、政治的な思惑が、強く反映されていた」
沖縄振興体制の成り立ちを説明する、琉球大学の島袋教授。強調するのは、復帰時に沖縄開発庁長官だった山中貞則氏の存在です。ここで、建前としての「リンク論」の否定、基地問題と振興問題を分けて考える流れができたといいます。
島袋教授「山中氏が当時の最高の補助率を全部かき集めてもってこいと」「沖縄振興に資する公共事業。土木建設業ですね。それを中心に集めて一括計上」「山中貞則氏が最初に屋良朝苗氏とやり取りするときに」「まずは経済振興でしょうと。基地問題ではなくて。沖縄開発庁は基地問題は一切取り扱わないと」「問題をすり替えた。メディアも県民もそれに乗っかった」「経済発展については国が責任を持ちますよと。沖縄の苦労に報いるために責任を持ちますよと。言い方は責任だが、結局責任を持つというのは権限も持つということ」
補助率が高い公共事業に偏重してきた沖縄振興予算。必要性が疑問視される公共事業も行われた中で、必要な部分に予算が回らない行政運営が続いていると指摘します。
島袋教授「沖縄振興体制があると、9割補助でできるかできないか」「ニーズ、地域社会に必要なものは何なのか、充足しようとしない体質が永遠に続いている」「9割補助の補助裏を作らないといけない。(自治体の)自己負担分」「どこから集めるかと言えば、教育福祉関係。ナショナルミニマム。無意識かもしれないけれど削るしかない」
政治家もインフラ整備を成果として強調し、有権者が支持してきた構図もあるといいます。
島袋教授「(選挙でも)教育福祉関係の予算は広く薄くなので全然成果をアピールできない」「住民も『あの知事になったから道路が作られていい』と。『そうだよね』となる」「道路が作られなかったら、教育や福祉に予算が回っている、本当は」「でもそれはわからない」
ここからは塚崎記者です。今回とりあげた沖縄振興体制。沖縄の「特殊事情」に基づくということですが、どのような点があるのでしょうか。
塚崎記者「県や内閣府などの説明によると、4点の特殊事情を挙げています。戦後アメリカに統治されたことなど『歴史的事情』、離島が散らばって、本土から遠隔にあるなど『地理的事情』、亜熱帯・海洋性気候にあるなど『自然的事情』、アメリカ軍専用施設・区域が集中しているなど『社会的事情』を特殊事情として特別措置を講じているとしています」「こうした理由が振興策を沖縄で進める根拠になっています」
今回取り上げた、沖縄振興予算も、その一部をなしています。改めて、どのような予算ですか。
塚崎記者「一括計上とは、県から各省庁への予算要求を、内閣府の沖縄担当部局に一括して行うものです。こうして、国から県に予算として出るのが、沖縄振興予算になります。県はメリットとして、他県のように各省庁と交渉するやり方よりも、国に一括して要請できることや、県の予算に迅速に反映させられることなどを挙げています」
「一方、他府県がそれぞれの省庁から獲得している予算が『沖縄振興予算』とひとくくりの予算額が示されることになります。県は沖縄県が優遇されていると誤解を生じさせる面もあると説明しています」
島袋教授は、現行の体制についてさまざまな問題点を指摘していましたね。
塚崎記者「いわゆる『リンク論』もさることながら実際に政府の進める沖縄振興策は、基地政策と表裏一体に行われてきました。復帰後の沖縄振興で、一定の社会資本の整備が行われた側面はありますが、島袋教授が指摘するように、教育や福祉などへの投資は遅れてきたわけです」
「沖縄振興を基地問題を含めた政治的取引の材料にされないようにするためには、これまでの体制からの見直しも視野に入れて、知事選の機会に改めて、沖縄振興策のあり方を考えてほしいと思います」
今回の特集をQABのウェブサイトで公開する際に、沖縄振興体制の今後について、各候補のアンケートの回答も同時に掲載しますので、ぜひご覧ください。
ここまで塚崎記者でした。
