13日開票の知事選挙に向けて、様々な政策課題を取り上げる企画「争点を歩く」をきょうから放送していきます。初回のきょうは自衛隊「南西シフト」と有事の住民避難、国民保護について取り上げます。
自衛隊配備と有事の際の住民避難計画は先島地域で先行して進んできました。地元でも様々な意見がある中、県知事はどのように向き合うべきなのでしょうか。考えていきます。
防衛省担当者「やはり抑止力の重要性。抑止力が欠落すると力の空白を突かれる」
7月中旬、沖縄防衛局が宮古島市で開催した、防衛セミナー。「市民への情報提供」として、市の要請に応じる形で開催された会です。
2010年代初頭。「防衛の空白」とされた先島地域。政府はいわゆる「南西シフト」として、2016年の与那国島を手始めに、2019年に宮古島、2023年に石垣島と陸上自衛隊を配備しました。
宮古島は、2019年以降、警備部隊のほか、対艦ミサイル部隊も配備。ことしに入って、アメリカ軍も本格的に訓練で島に入るようになっています。
防衛省担当者「空母部隊の活動というものも相当程度広がっている」
この日、防衛省が説明したのは、中国海軍の空母部隊の動き。2010年代は南西諸島や台湾周辺だった活動場所が、2020年代に入って、小笠原諸島周辺まで広がっていると説明します。
中国の動きも念頭に、自衛隊とアメリカ軍が一体となった、抑止力の重要性を強調してきた政府。住民からは、今、配備されている対艦ミサイルが長射程型のものに置き換わるのでは、という指摘もありました。
宮古島市民「中国本土の敵基地反撃能力に対処すると計画、軍事力強化が進んでいると思う。艦船に向かって一発でも、どちらが先かに関わらず、撃ち合ったときに恐ろしいと思っている。戦争が始まってしまう。あくまでも軍事力によらない平和外交を通して関係を結びながら、安定した環境、安全保障環境。本当の意味でね、作っていく必要があるのでは」
防衛省担当者「『ミサイルが撃たれたら恐ろしいと思わないか』ということですが私も恐ろしいと思う。外交が基本であることは私も意見は同じ。ただし、外交は、何もないところで外交をするだけでは外交も相手がある話なので実力のない相手の話は聞かない。外交力の背後にはしっかりとした防衛力がある」
一方、この日のもう一つのテーマが、国民保護法に基づく、住民避難計画についてです。先島地域の5市町村は、いわゆる「台湾有事」も念頭に、九州各県に避難する計画を立てています。
宮古島市担当者「ここで強調しておきたいのは、この法律があるから戦争があるという話をしているわけではない。事前の万全の準備が目的。最悪の事態を防ぐ被害を最小限に抑えることを目的として現在検討がされている」
この日、国と宮古島市の担当者が、取り組み状況を説明しています。あくまで戦闘が始まる前に、安全が確保された状態での避難を前提とする枠組み。一方で、住民からはその実効性に疑問の声も出ます。
宮古島市民「有事は起きないのが一番いいが、防衛省自衛隊としては国民・島民を守るためにいったん反撃しないで、避難を優先するのか。そこは自治体にお任せをして、自分たちの任務を優先させて、ここが戦場になる前提で反撃を開始するのか」
防衛省担当者「実際に有事というものが起きるのか。起きたとして何が起きるのか。起きた場合にどういう推移を経るのか、なかなか一概には言えない状況ということ」
住民の不安の声があがる中、県や市町村も国民保護に向けた取り組みを進めてきました。県では先月、協議会も開催。計画改定を議論しています。
そこに委員として参加した、日本大学の中林准教授。研究者として県庁に勤務した経験もあり、県の国民保護体制に精通する人物です。国民保護では、国が避難措置を指示し、県が避難経路や交通手段などを指示、市町村が実際の避難誘導を担うことになります。
中林准教授「今、沖縄で検討されているような広域避難を伴う大規模なものになると」「県が前に出て他県との調整、市町村から出た外の移動は県がしっかりかかわっていかないと調整できない」「国と市町村をつなぐ中で避難や受け入れ、被害の軽減をやっていくのが県の役割」
一方、安全保障政策に関する県民の受け止めも多様である中、県知事は国民保護にどう向き合うべきなのか。中林准教授は2つの点を挙げます。
中林准教授「国としっかり連携協力できること。連携協力するのが一つ絶対重要。ここでいう連携協力は国がAですといったらBでもAという、国の言うことを追認することは連携協力と言わない。特に沖縄のように地上戦、あるいは地上戦がなかった地域でも非常に困難な思いをしてきた人たちからすればいろいろな意見がある。加えて、今、生活している人には生活の課題がある。よく出てくる(財産の)補償の問題。障害を抱えている当事者、あるいはご家族が障害を抱えている方にとって避難計画それ自体がその人の健康や命にかかわる大きな問題」
中林准教授「二つ目は、やはりちゃんと国にその県の考え、県民の持っているいろいろな思いや意見をしっかり吸い上げて国に届けられる。くどいようだが国がこういっているから、こうなんだという単純な世界ではない」
ここからは取材した塚崎記者です。
中林准教授は国民保護について、知事には国と連携することと、県民の思いをしっかり伝えることの2つが必要だと話していました。
あらためてどのようなことが知事には求められますか。
塚崎記者「中林准教授の2つの指摘は、国民保護だけでなく、アメリカ軍の基地問題全般にも当てはまる指摘だと思います。近年の知事は、沖縄へのアメリカ軍の駐留は容認しつつも、普天間基地など個別の基地の移設問題で国と交渉するという姿勢をとってきました」
塚崎記者「基地の整理縮小には国との連携は不可欠ですが、国が進める安全保障政策に従うだけでは、沖縄県のリーダーたる知事とは言えません。「国防は国の専権事項」とよく言いますが、それを建前に口を閉ざすのではなく、住民の懸念や不安をしっかりと国に伝え、県内での基地問題や安全保障問題の解決につなげる手腕が求められます」
今回の特集は、QABのウェブサイトで公開する際に、南西シフトと国民保護について、各候補のアンケートの回答も同時に掲載しますので、ぜひご覧ください。基地や安全保障政策と私たちがどのように向き合うべきなのか、選挙を機会に、改めて考えていきたいと思います。ここまで塚崎記者でした。
【南西シフトに関する候補者質問と回答】
