ここからは「早わかりビズ」です。きょうは、りゅうぎん総研・研究員の我謝和紀(がじゃ かずき)さんに解説していただきます。
我謝和紀研究員「よろしくお願いします」
テーマはこちらです「県内における公共工事の不調・不落の実態」です。昨年1月、埼玉県にて発生した老朽化した下水道管の破損による道路陥没死亡事故が全国で大きなニュースになりました。
県内でも昨年11月に大宜味村にて発生した導水管の破損により、多くの世帯に断水の影響があったことは記憶に新しいでしょう。こうしたインフラの老朽化が全国的に注目される中、どうしていま、このテーマなのでしょうか?
我謝和紀研究員「はい。私たちの生活を支える重要な公共工事ですが、県内ではいま、その入札において、落札業者が決まらない「不調」や「不落」が増えています。
「不調・不落」という言葉、少し聞き慣れませんが、どういう意味なのでしょうか?
我謝和紀研究員「はい『不調』は、入札に参加する事業者がいない等で入札が成立しない状態を指し『不落』は、入札はあったものの価格などの条件が合わず、落札者が決まらない状態を指します」「つまり、いずれの場合も工事を発注しても、工事を行う事業者が決まらないということです」
それは工事そのものが実施できない可能性もあるということですよね?
我謝和紀研究員「そうですね、道路や橋、水道といったインフラの整備が予定どおり進まない恐れがあります。老朽化が進む中で、生活基盤に影響が出かねない状況です」
私たちの暮らしに直結する話ですね。実際、どれくらい増えているんでしょうか?
我謝和紀研究員「県の土木建築部が発注する工事では、2024年度の不調・不落発生率が27.4%となり、比較可能な2012年度以降で最も高くなりました。およそ4件に1件以上が落札されていない計算になります。なかでも特に離島工事において発生率が高い傾向がみられます」
かなり高い数字ですね。全国的にはどうなんですか?
我謝和紀研究員「2023年度の全国平均はおよそ6%程度ですが、沖縄は唯一20%を超え、全国で最も高い発生率となっています」
突出していますね。
我謝和紀研究員「そうですね、この不調・不落の理由として最も多いのが『応札者なし』つまり、そもそも入札に参加する事業者がいないといったケースです」
なぜ、こうした事態が起きてるのでしょうか?
我謝和紀研究員「大きな要因は『人手不足』です。建設業の有効求人倍率は2024年で2.76倍、現場で施工管理を担う技術者に限ると直近では5倍を超える月もありました」
5倍というのは、かなり深刻ですね。
我謝和紀研究員「はい、賃金を上げても人が集まりにくいという声もあります。さらに沖縄は離島が多く、人流の制約から技術者の配置が難しいという構造的な課題があります」
地理的な条件も影響しているんですね。
我謝和紀研究員「はい、離島では人員派遣の宿泊費や資材輸送費など追加コストがかかります。また、年度末などに工事の発注が集中すると、技術者の確保が追いつかず、入札を断念せざるを得ないケースもあります」
人手不足に加えてコスト面の課題も重なっているわけですね。今後はどうなっていくのでしょうか?
我謝和紀研究員「2020年を基準に将来の状況を推計したところ、県内の建設業就業者数は、2050年には約38%減少する見込みです。一方で、沖縄は本土復帰直後に建てられた旧耐震基準の建物が多く、その建替えなどの建築需要は57.5兆円にも上るとみられ、こうした需要は今後さらに強まるとみています。『需要は増えるのに、人は減る』といった構図です」
このままだとインフラ整備の担い手が足りなくなる可能性もありますね。
我謝和紀研究員「はい、インフラ整備の遅れは『防災・減災』の面でも大きなリスクとなるため、抜本的な対策が必要です」
では、どういった対策が必要でしょうか?
我謝和紀研究員「はい、4つの対策を提言しました」
「まず1つ目は『島しょ県の特性を踏まえた実勢価格の迅速な反映』です。離島工事の追加コストや資材価格の高騰分を工事価格へ迅速に反映させるなど、沖縄の現状に適した仕組みづくりが必要です」
「2つ目は『最低制限価格のさらなる引き上げ』です。工事価格の最低ラインを引き上げ、適切な利益が確保できる工事価格とすることで、事業者の受注促進につなげます」
なるほど、つづいて3つめは?
我謝和紀研究員「はい、3つ目は『発注や管理体制の高度化』です。施工時期の分散や老朽化したインフラの管理・更新など、発注する側の体制強化が欠かせませ」
「そして4つ目は『人材確保やDX推進に向けた官民連携の強化』です。今後も人手不足の深刻化が懸念されます。若手人材の確保に向け建設業の魅力度向上や、DXによる省力化の推進など、官民が連携して計画的に取り組む必要があると考えます」
私たちの暮らしを守るためにも、建設業の体制強化が急務ということですね。
我謝和紀研究員「はい、老朽化が進む中で、公共工事の円滑な実施は喫緊の課題です。インフラは、普段は意識しませんが、私たちの暮らしを支える土台です。その維持のためにも、発注体制の強化と担い手確保が求められています」
この問題、決して他人事ではありませんね。きょうは「県内における公共工事の不調・不落の実態」について、りゅうぎん総研の我謝和紀さんに解説していただきました。ありがとうございました。
以上、ビジネスキャッチーでした。
