ここからは早わかりビズ。りゅうぎん総合研究所の研究員にお越しいただいて県経済の動きをわかりやすく解説いたします。きょうの担当は安仁屋 宗哲(あにや そうてつ)さんです。よろしくお願いします。
安仁屋 宗哲さん「よろしくお願いします」
テーマはこちら「トランプ関税が与える県内事業者への影響」についてです。
トランプ政権が相互関税を発表したのが4月2日で、その際、沖縄への影響は?ということで、りゅうぎん総研の宮国常務から「沖縄の経済構造はトランプ関税の影響を受けにくい。但し、間接的な影響はある」というコメントをもらっていました。
安仁屋 宗哲さん「はい。その見方は現在も変わりありません。そのような環境の中、今回の調査は、トランプ大統領の関税政策を沖縄の事業者が実際にどう受け止め、どのように備えているのかを探るため県内578社を対象にアンケート調査を実施しました。その結果を踏まえ、今後県内事業者が講じるべき対応策について考察しました」
トランプ大統領は「アメリカの製造業を復活させる」という事で、アメリカ国内に安い製品が入って来ないよう水際で高い関税をかけて、輸入品の値段を上げる事で、アメリカ国内で自国製品を優先的に使ってもらい、製造業の復活を目指しているんですよね?
安仁屋 宗哲さん「その通りです。そのために全世界からの輸入品に10%の関税をかけ、さらに対米黒字の大きい国にはもっと高い関税をかけると公表しています。そうなると世界中の輸出企業にダメージをもたらすため、現在、日本だけではなくアジア各国、ヨーロッパや中国が個別にアメリカとの交渉を続けています」
なるほど。しかし、沖縄から輸出しているものはそれほどなさそうですが。

安仁屋 宗哲さん「はい。まず沖縄県の産業構造を見ますと、製造業が含まれる第二次産業の占める割合が全国と比較して小さいことがわかります」「また沖縄の対米輸出は県の輸出額全体の4.6%程度で、全国平均の19.9%と比べてもかなり低いので、沖縄経済に与える直接的な影響は限定的だと考えられます」
では、沖縄の主要産業である「観光業」への影響はどうでしょうか?
安仁屋 宗哲さん「はい。先ほどのグラフをもう一度ご覧いただくと、観光関連産業が含まれる第三次産業が9割近くを占めています。このことから、景気や為替の動向により観光客数が変動すると、県経済に影響を及ぼすことが予想されます」
間接的な影響を受ける企業は出てきそうだということですね。
安仁屋 宗哲さん「はい、こちらをご覧ください。(グラフを指しながら)「今は影響がない」と答えた企業は83.7%。しかし「今後は影響があると思う」は51.7%に上るんです」

半数以上が「これからは何らかの影響あるかも」と、不安を抱えているわけですね。県経済に影響出そうですね。
安仁屋 宗哲さん「今後影響が出そうと答えた事業者のうち「プラス」の影響を予想したのは3.8%に留まり『マイナス』の影響を予想したのが48%に上り、多くの事業者が経営への悪影響を懸念していることが見えてきました」
具体的に「生の声」は、どのようなものがあったんですか?
安仁屋 宗哲さん「はい。『米国との取引縮小』を心配する声や『景気冷え込みによる観光客の減少を懸念する』といった不安の声が聞かれました。一方で『行き場を失った他国の製品が日本へ流入し、仕入れコストが下がるのでは』と、プラスの影響を期待する声も聞かれました」

物価高騰によるコストの上昇や販売量の減少などが実際に起こっている中で、県内企業が取らなければいけない対策はどのようなものがありますか?
安仁屋 宗哲さん「今回のアンケートではすでに影響がある、または今後影響が懸念されるものの、全体の7割近くが『特に対策はしていない』と回答していました。しかし、たとえ、目の前に明確な影響が見えていなくても、将来に備えたリスク管理が重要ではないかと考え、県内企業が取るべき対策をまとめました」
こちらの5つですね。

安仁屋 宗哲さん「はい。まず1つ目は『1情報収集の継続と体制整備』最新の動向を常に把握し、状況に応じてすぐに判断できる体制を作ることです。2つ目に『2支援制度の活用』こちらの表をご覧ください。ご覧の通り、沖縄県や銀行など各種団体に相談窓口が設置されています。国や県、金融機関の相談窓口を積極的に利用することも有効な手段です」
企業側の工夫や体力作りも求められますよね?
安仁屋 宗哲さん「そうですね。そこで3つ目は『3価格転嫁戦略の検討』です。関税によるコスト増を販売価格に反映する方法や商品の付加価値を高めることで、価格競争力の維持を図る事が求められます」「続いて4つ目は『4コスト構造の見直し』原材料や部品の調達先を多様化し、サプライチェーンの再構築を検討することも必要になります」
「最後は『5販路の多角化』アメリカなど特定地域への依存から、アジア・ヨーロッパ市場などへ販路を広げる事が対策として挙げられます」
今回は企業アンケートをもとにリポートをまとめていただきましたが、まだまだ見通せないトランプ関税の行方、県内企業にとっても目が離せないですね。
安仁屋 宗哲さん「そうですね。『トランプ関税』が沖縄県にもたらす直接的な影響は限定的と言えます。ただ今回の関税問題をきっかけに、行政や金融機関も交え、生産性向上や販路拡大といった企業の体質強化を後押しする支援をスムーズにできる仕組みづくりの重要性を感じました」
まさに「備えあれば憂いなし」ですね。きょうはりゅうぎん総合研究所の安仁屋 宗哲さんにわかりやすく解説していただきました。ありがとうございました。ここまでビジネスキャッチーでした。
