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在りし日の姿を取り戻していく首里城の道のりを追いかける「復興のキセキ」ここからは玉城アナウンサーです。

玉城アナウンサー「首里城が火災に見舞われてからきょうで4年です。あの悲劇を繰り返さないための『再建』とはどういったものか、スタジオにゲストをお招きして「防火対策」という視点で、令和の首里城を見ていきます。」

大石さん「沖縄総合事務局の首里城復元整備推進室長を務めています大石智弘です。」

玉城アナウンサー「大石さんは「令和の復元の司令塔」として現場への指揮や、関係機関との総合調整などを担当されていて現在建設中の首里城正殿に新たに備わる最先端の設備などについて教えて頂きます。」

まずは忘れてはならない首里城火災の全容をVTRで振り返ります。2019年10月31日未明沖縄のシンボルともいえる存在である「首里城」が炎の渦に包まれました。午前2時41分、警備会社から那覇市消防局に通報が届き火の手が収まった午後1時半まで、およそ11時間半にわたって燃え続けました。

この火災で、正殿や北殿・南殿といった7つの重要な建物が全焼するなど、焼損した建物は9つにのぼります。火災時に公園内にあった1510点ある美術工芸品のうち400点近くが炎の中に消え、被災した工芸品も修繕には少なくとも20年以上かかるとされています。

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

火元は、電気系統の設備が集中していた正殿1階・北東の部屋だとみられていますが、何が原因だったのか特定には至っていません。

玉城アナウンサー「火災からしばらく沖縄全体が喪に服したような静けさが包んでいたのを思い出します。出火原因は未だ不明ですが、これ以上の追及は難しいのでしょうか?」

大石さん「県警も那覇市消防局も、捜査の手を尽くしましたが燃え残りも少なく「発火源だと判断できる物的な証拠」などは特定できなかったと報告しています。」

VTR中にもあったように、出火場所から判断して電気系のトラブルが原因である可能性は否定できませんが、確証はありません。再発防止の観点から、今回の令和の復元では、出火リスクを広く想定した低減策が必要だと結論付けられています。

火災から得た教訓や反省をどう生かそうとしているのでしょうか。

大石さん「大前提として首里城が二度と同じような火災によって失われないよう、想定される様々な出火原因に対応するために「再発防止策の徹底」など防火対策の強化を行います。

対策については専門家の意見などを聞きながら関係省庁、沖縄県など関係機関とも何度も話し合ってきました。

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

大石さん「結果として今回の復元では、「火災の段階ごとの対策」として5つの段階に分けて考えます。まずは「未然防止」 火災の発生を極力抑えるという意味です。」「それから、仮に出火したとしてもできるだけ被害を軽減するための「早期覚知」や「初期消火」があります。」「隣の建物などに火が燃え移るのを防ぐための「延焼防止」や、かけつけた消防隊が行う「消火活動」も非常に大切なものです。」

再建工事中の正殿も木造の建物ですし火災から守るための設備の導入が求められますよね。

玉城アナウンサー「大石さんまずは、異変や起きないようにすること、また何か発生した際にいかに早く気付けるかが大事だと思いますが、その点はどう改善されたんですか?」

大石さん「5つの段階でいうと、未然防止・早期覚知の部分で、強化されているもののひとつが「監視カメラ」です。」「2019年の火災は、発生時間が夜間で、室内外のモニター映像が「暗く不鮮明」で火災個所の特定につながりませんでした。」「そのため今回の復元では、最先端の低照度型カメラを「死角をつくらない」よう設置します。」「平成の正殿から大幅に個数を増やして、3年後に完成予定の正殿本体の中には35台設置する見込みです。」

玉城アナウンサー「正殿組立工事中の素屋根や木材倉庫にも令和の正殿に備わるカメラと同じものが設置されているということで、ここで、火災前のカメラと新しいカメラの映像を比べてみましょう。火災当日の映像では、画面が暗く火が起きたことは分かっても火の勢いや規模が伝わりにくい感じがします。一方、新しく導入されるカメラの映像、素屋根内部を深夜に撮影した映像です。明かりが無い場所でも、木材が組み立てられている様子など倉庫内どこに何があるのかはっきり確認できますね。」

現在作業が行われている工事エリア含め、監視カメラはどこでどのように管理しているんですか?

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

大石さん「奉神門の先、いわゆる有料エリアですね。公園利用者の監視と、工事エリアの監視の2か所があってそれぞれが連携して、防火はもちろん不審者など防犯のため24時間体制で警備員が監視しています。」

しかし振り返ってみると、火災当日は警備員が異常に気づいても、すぐに消火に取り掛かれなかったこともありましたよね。早くするに越したことはない初期消火については、どう対応することになっているのでしょうか?

大石さん「2019年の火災からの学びは、「早期発見と初期消火を徹底することの重要性」です。そこで、早期発見のためには、異変を感知した際に自動で消防に通報される「自動火災通報設備」などのシステム整備、初期消火のためには、スプリンクラーなどといった設備を導入・強化します。」

「一方でこれらはとても大切な設備ですが、正殿をはじめ、復元する建物が持つイメージ・景観などを損ねないよう、できるだけ色を赤くするなど、来場者にとって違和感がないような形で置かれる予定です。」

玉城アナウンサー「更に、消防が到着するまでに他に行えることとして強化されるのが「ドレンチャー」という装置です。ご覧いただいている映像は奈良県の法隆寺で行われた訓練の映像です。ドレンチャーとは火災が起きた時に作動して、水を放出し水の幕を張ることで建物を覆って、飛んでくる火の粉や熱による延焼を防ぐためのものです。この映像だと高い位置から水を垂らしていますが、令和の正殿では軒裏や壁に向けて上向きに放水する計画をしています。」

大石さん「補足すると、平成の首里城正殿にもドレンチャーはありましたが、建物の周りを囲むように1系統で設置されていたため作動するとすべての場所から水が放出されるようになっていました。」

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

一方で、今回の復元は4つの系統に分けることにしたんです。そうすることで、火災が発生した場所に応じた放水できるよう工夫されています。首里城は高台にありますし、限られた水をいかに有効活用するかが重要なんですね。一方で現場の力だけでなく、もしもの場合消防の力も借りることもあると思います。首里城火災における消防との連携についてはどうだったんですか。

大石さん「消防という部分で見ると「通報、そして到着」は決して遅くなかったんです。しかし、消防隊の放水開始は到着してから17分後と、大幅に遅れました。」「要因は首里城の特殊な「要塞構造」にあります。」「火災当日、坂や階段が多い城特有の構造のために消防車両は城郭内に入ることができませんでした。」「そのため、消防隊がホースを長い距離延長する必要が生じ放水活動までに時間がかかってしまったんです。」

「そこで今回の復元では、城郭内にあらかじめ「連結送水管」と呼ばれるものを設置しています。その仕組みは…城郭の外側、消防車両が停められる場所に設置された送水口にポンプ車から水を送ることで地下にある連結送水管を通って城壁内に放水できるというものです。」「この設備があれば、万一火災が発生した場合も、現場にある複数の放水口からいち早い消火活動が可能になります。」

玉城アナウンサー「連結送水管の設置は復元工事が本格的にスタートする前、2021年から行われています。このように、首里城の立地を考慮した防火体制が「令和の復元」ではより強化されます。ここまで一部分ですが、令和の首里城の防火対策を見てきましたがお二人いかがですか?」

キャスター「火災が二度と起きないのが一番ですが、もしもの時「現場がどう行動できるか」もポイントになりそうですよね。」

玉城アナウンサー「火災が発生した10月31日に合わせ、きょうも訓練が行われましたが、それ以外にも首里城公園では、火災を想定した訓練を定期的に行って防火意識を高めています。」

まだ薄暗さが残る午前6時すぎ、工事エリアに続々と関係者が集まってきました。今回は、首里城公園の職員や正殿の再建に携わる宮大工など131人がそろいました。二度とあの悲劇を繰り返さないため、毎月、火災訓練が続けられています。

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

「照明点灯、発報箇所を報告せよ!訓練訓練 工事総括より 素屋根2階で自火報(自動火災報知設備)発報モニターにて煙確認 。巡視A、巡視Bは消火器を持ち素屋根南側ドアより侵入し至急現場へ急行せよ」

首里城の防火訓練は、火災から1年後の2020年11月から行われています。人が少ない深夜の時間帯、日中の開園時間帯など火災発生のシチュエーションを毎月変え訓練していて、今月は、正殿の組み立て工事中の「素屋根内部」で夜間と昼間に火が上がった想定で行われます。

沖縄美ら島財団 防災危機管理室 屋嘉比勝室長「二度と起こさないと 火災を起こさないということが大前提だが、万が一起きてしまった場合やはり初動体制をしっかり職員で初期消火・通報・避難誘導そういったことは行っていくという気持ちで、毎日・毎月訓練で(内容を)伝えている」

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

訓練を主導する屋嘉比勝さんは、33年間消防士として勤めてきました。現在は、火災を機に設置された「防災危機管理室」で、実務から得た経験や知識を伝えています。

参加者「火事だ~素屋根2階で火事だ~」

万が一火事が起きた時、被害を最小限に食い止めるためにも適切かつ迅速な対応が求められます。もし、日中の発生なら、再建作業にあたっている「宮大工」など職人の力も不可欠です。また、到着した消防に火の高さや燃え広がり方など「的確に状況を伝えること」も大切なポイントだと言います。

これより火災の状況報告を行う屋嘉比さん「お願いします、どういう状況でしょうか?」「こちら火元素屋根2階が延焼中です。建物においてはけが人・逃げ遅れなし」「建物の作り3階建ての木造造り現在2階が延焼中、天井まで炎は達している」「お客さんはすべて避難していますか?避難しています。」

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

参加者一人ひとりが声を出し真剣な表情で訓練に向き合っていました。

終了後広場で講評 那覇市消防局「正殿が復元されて 今後の防火管理体制を強化していくための訓練だと認識しているので 同じ気持ちでぜひ今後の訓練に励んでほしいと思う」

屋嘉比勝さん「もちろん消防から技術や知識を持ってきた人間だと自分で認識しているので」「火災は二度と起こさない 起こしても初動対応でしっかり被害は最小限にとどめるという意識を持ってもらって、県民の皆さんに安心してほしいと思っている」

「二度と火災を起こさない」という思いを忘れることなく、災害に強い首里城を築き上げるため、試行錯誤が続けられています。

関係機関が連携して防火体制を作り上げていく日頃の積み重ねが大切だと感じた。

大石さん「建物や設備といったハードの部分と、人やその運用といったソフトの部分の両方で対策をとり、実際に起きたことも想定して訓練等で備えることが重要だと考えています。」「今後も、あの悲劇を二度と繰り返さないためにできる限りの備えを取っていきます。」

玉城アナウンサー「ここまで令和の首里城の防火対策について見てきました。」「さて、再建ののろしを上げた起工式から間もなく1年です。ここからは、2026年秋の完成を目指す正殿の進捗を改めて見ていきます。」

玉城アナウンサー「まず8月の後半、正殿を雨風から守るための素屋根が出来上がり翌月からいよいよ本格的な建て方工事が始まりました。」「併設された見学エリアも想像以上に現場の様子良く見えますよね。」

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

大石さん「大変好評で、1階・2階・3階とガラス越しから見え方が異なる正殿と各階出で展示解説と合わせて楽しんでほしいです」「柱に関しては一気に組み上がっているように感じますが、実際には1本ずつ、縦で柱を立てる作業と横で梁と桁を組む作業を慎重に進めています。大工さんは大変だと思います。」

玉城アナウンサー「これまでのところ作業は順調ですか?」

大石さん「概ね工事は順調です。先週金曜日には沖縄県産の「オキナワウラジロガシ」の据え付け作業が行われました。」「年内にはおよそ500本の木材が組み上がる予定になっていて、初めて訪れる方は工事の進み具合にびっくりすると思います。ぜひ今しか見られない首里城の姿を見に足を運んでいただきたいです。」

玉城アナウンサー「私も取材で毎週訪れていますが、毎回工事の進み具合に驚かされます。令和の復元のテーマは「見せる復興」ですから今後も見守っていきたいですね!」「大石さん、今しか見られない首里城を訪れるのにぴったりなイベントがあると伺いました。」

大石さん「いよいよ今週末になりましたが、来月(11月)3日から3・4・5の日程で、首里城復興祭が行われます。」「5日(日)の最終日には、まるで王国時代にタイムスリップしたかのような「琉球王朝絵巻行列」が国際通りで4年ぶりに再現されますので、是非お楽しみください。」

復興のキセキ「二度と火災を起こさない 令和の正殿 防火対策」

玉城アナウンサー「首里城祭期間中は県民割もあるということで、この機会にぜひ首里城を訪れてみてください。」

きょうは沖縄総合事務局・首里城復元整備推進室長大石智弘さんにスタジオにお越しいただきました。大石さんありがとうございました。ここまで、復興のキセキでした。