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沖縄県名護市の辺野古新基地建設で軟弱地盤の改良工事を沖縄県が認めなかったことをめぐる2つの裁判で県側の敗訴が確定する見通しとなりました。

防衛局が提出した設計変更を沖縄県が不承認にしたことを受け、国土交通大臣が不承認を取り消したうえで承認を求める是正指示を出していました。県側は対抗措置として国交大臣の裁決を無効にして不承認を回復させることと是正指示の取り消しを求めて2つの裁判を起こしていました。

最高裁は8月25日に「裁決」の上告について受理しないことを決めるとともに「指示」について県の訴えを退けた高裁判決を変更するために必要な弁論を開かず9月4日に判決を言い渡すことを決めました。いずれの裁判も県側の敗訴が確定する見通しです。

『辺野古』不承認めぐる2つの裁判で県が敗訴へ 最高裁が上告受理せず&弁論なく判決へ

玉城知事「判決内容を精査した上で対応してまいりたい。県の主張を直接述べる機会が設けられなかったということについては、大変残念」

辺野古の新基地建設では防衛局が8月23日に環境分野の専門家から助言を受ける環境監視委員会を開き移植したサンゴのモニタリングについて7月の調査を最後に終了したことを明かにしました。

2018年7月から2018年8月にかけて移植した埋め立て予定海域に生息する「オキナワハマサンゴ」9群体のモニタリングが続けられていて7月で当初計画していた5年間の観察が完了したことから知事と協議して7月の調査を最後に終了したということです。

移植された9群体のサンゴはこれまでに7群体が死亡し残っている2群体のうち1群体で白化が確認されています。

『辺野古』不承認めぐる2つの裁判で県が敗訴へ 最高裁が上告受理せず&弁論なく判決へ

環境監視委員会は「移植したサンゴも、もともと生息していたサンゴも全体的な寿命を迎えている段階」だとして妥当という認識を示しています。

玉城知事「県知事選や県民投票で示された県の多くの民意を顧みることなく、新基地建設が強行されていること、民主主義国家の根幹に関わる重大な問題を顕在化させているということも伝えられるのではないかと思います」

玉城知事はスイスの国連人権理事会で辺野古新基地建設の問題などを訴えていく考えを示しました。国連人権理事会では2015年に当時の翁長知事も辺野古新基地建設などアメリカ軍の基地問題について提起していました。

『辺野古』不承認めぐる2つの裁判で県が敗訴へ 最高裁が上告受理せず&弁論なく判決へ

浜田防衛大臣「普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため辺野古への移設工事を着実に進めてまいりたい」

浜田防衛大臣は最高裁の決定を受けて改めて新基地建設を推進する方針を強調しました。



記者解説・辺野古不承認訴訟・今後の展開は?



『辺野古』不承認めぐる2つの裁判で県が敗訴へ 最高裁が上告受理せず&弁論なく判決へ

ここからは塚崎記者です。これまで、辺野古新基地建設に関して、県と国の裁判が続いてきたわけですが、今回の県の敗訴は大きな節目となりそうです。あらためて、今回の敗訴はどのような意味があるのでしょうか。

塚崎記者「辺野古新基地建設の軟弱地盤改良工事について、県は防衛局の設計変更を承認しませんでしたが、国交大臣は県の判断を取り消す裁決と、県に承認するよう是正指示を出していました。県は是正指示と裁決を不服として裁判に訴えていましたが、県が負けることで、国交大臣の指示が適法ということになります。」

今回、最高裁は国交大臣の是正指示を適法と認める公算が大きいわけですが、一方で、国交大臣が不承認を取り消した裁決の取り消しを求める別の裁判・抗告訴訟も続いていて、今回の最高裁の判断が、最終的な司法判断になるわけではないことに注意が必要です。また、今回の最高裁の判決を受けて、今後、どのような展開が想定されるのでしょうか。

『辺野古』不承認めぐる2つの裁判で県が敗訴へ 最高裁が上告受理せず&弁論なく判決へ

塚崎記者「来月4日の最高裁判決で、国の指示が適法という判断になっても、県は抗告訴訟が続いていることなどを根拠に、設計変更を承認しない可能性もあります。そうなると、国は県に代わって設計変更承認の手続きを行う代執行の手続きに移行するとみられます。」「代執行は2015年、当時の翁長知事が埋め立て承認を取り消した際に、国側が提起したことがあります。国側は県に代わって埋め立て承認をしようと裁判を起こしましたが、2016年に、県と和解に至っています。」

辺野古新基地建設を巡っては、これまで10件以上の裁判が国と県の間で行われていて、解決の糸口が見えない状況が続いているわけですが、どういった点に今後、注目してくべきなのでしょうか。

『辺野古』不承認めぐる2つの裁判で県が敗訴へ 最高裁が上告受理せず&弁論なく判決へ

塚崎記者「はい。県側はおととしの不承認で、地盤の調査不足などを挙げて、基地建設に不確実性があり、普天間の危険性除去につながらないと指摘しました。ただ、国側はその指摘に正面から応じず、あらゆる手段を使って、県の対抗措置を無効化しようとしています。裁判でも県側の主張が通らない中、根本に立ち返って国が主張するように辺野古新基地建設が本当に普天間の危険を取り除くための「唯一の解決策」といえるのか、改めて考えることが必要だと思います。」

ここまでは塚崎記者でした。