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首里城で今、何が行われているのか追い続ける「復興のキセキ」です。正殿の再建では素屋根の建設など実際に私たちが復興の様子を間近で見られる「見せる復興」がありますねしかし、「見せる復興」といっても火災で傷ついた収蔵品の修復は中々目にすることはできません。

そこで今回の「復興のキセキ」は火災から免れた収蔵品をを修復する人たちの想いを伝えていきます。修復のキーワードは「現状保存」

目白漆芸文化財研究所 室瀬智弥 代表取締役「途切れないようにバトンを渡していく継続をしていくことは大事だと思いますし、(それは作品のその変化について定期観測というか)ちゃんと観察を続けていくことも必要でちょっとずつその条件によって色んな変化が発生してくるものなのでそれを見逃さないことも非常に重要だと思います」

布を使って細かく擦ることで美術工芸品に付いた汚れを取り除いています。繊細で地道な作業が歴史や文化を後世に伝える大きな役割を果たしています。火災で傷ついた首里城の収蔵品を修理する時のキーワードは『現状保存』です。

首里城2026 復興のキセキ 被災した芸術工芸品の修理にかける思い

漆器修理技術ワーキンググループ会議 室瀬和美さん(漆芸家)「(美術工芸品は)徐々に劣化して年を取っていく訳です。ほっといたらもしかすると100年後に壊れてしまうかも知れないけど、今少し手を加えてあげることによって、200年・300年延ばしてあげると100年単位で命を延ばしてあげるというのが、いわゆる『現状の文化財の保存』という考え方ですね」

400年の歴史を残しながら500年・600年と受け継いでいく保存をどうやっていくか。発災直後から科学的・技術的な検証とノウハウの蓄積が試行錯誤を経てようやく去年動き出しました。1つの収蔵を修理する確かな技術ができるまで5・6年がかかるといいます。

目白漆芸文化財研究所 室瀬智弥 代表取締役「その損傷がいわゆる長い歴史長い時間をかけて傷んできたものとは全く違う症状が幾つか表れてましたので、それに対してどういう対応が望ましいのかというところを一から考えなければいけないところがありましたので、(そこが難しい所であったのかなと)」

東京、目白漆芸文化財研究所。閑静な住宅街の中、沖縄の歴史文化を守る人たちがいました。被災した美術工芸品をどうやって修理していくべきかを考える打ち合わせが行われていました。

首里城2026 復興のキセキ 被災した芸術工芸品の修理にかける思い

目白漆芸文化財研究所 文化財修理主任鷺野谷一平さん「全体的に艶が退けているのは火災前と今とでは変化は」

沖縄美ら島財団 琉球文化財研究室幸喜淳室長「火災前はそんなに艶がいっぱいあったわけではない、やはりまだら模様に艶が退けているように見えますよね、だから紙が強く張り付いてなくてもくすんだ感じになっていますね」

目白漆芸文化財研究所 文化財修理主任鷺野谷一平さん「艶は本当なかは状態がいいので、この差が表で熱を受けたのとその差が出ているんだと思います」

正殿をはじめ複数の建物が全焼した4年前の火災では1519点あった収蔵品や展示物おうち400点が火の中に消えてしまいました。1100点あまりは焼失を免れましたが、絵画や染織・漆器などで火災の熱や消化活動の水で劣化したものがあったことが確認されています。

漆器の表面を削って金を流し込み牡丹お花をあしらった朱漆牡丹紋沈金卓(しゅうるしぼたんもんちんきんたく)は火災によって台の真ん中に亀裂ができたほか漆の膜が所々で浮き出ていました。

目白漆芸文化財研究所 文化財修理主任鷺野谷一平さん「可能性としては亀裂が生じて、内側から出てくる油分もそうですけど外から与えられる水分ですねそういったものが浸透して剥離の原因になっている可能性はありますけども」

沖縄美ら島財団 幸喜淳さん「そうですよね湿度100%でしたからね」

火災の熱気で蒸し風呂状態だったともいわれる収蔵庫の中は100度近く温度が上がっていたとするデータもあります。

漆器修理技術ワーキンググループ会議室瀬和美さん(漆芸家)「こんな素材世界でもないのではと思うくらい、それだけ危ない橋を渡って耐えて燃えずに残った、しかもそれが修理という技術を加えることのよって蘇えることが出来るという改めて漆って強いんだなって思っています」

漆の劣化は100年単位で起きると言われてますが、被災した漆器はたった一晩の火災で一瞬にして劣化してしまいました。さらに箱に入れて保管する時に使われる薄い紙が張り付くなどしていました。

首里城2026 復興のキセキ 被災した芸術工芸品の修理にかける思い

今まで見たことない様なひどい状態から元に戻すべく作業員が時間をかけて慎重に傷や汚れを取り除きます。

修理作業員「いま塗膜の表面に梱包されていたうす葉紙が張り付いた跡が残っている所をクリーニングしています」

修理する美術工芸品の影響を最小限にするため温度や湿度を最適な状態に保った環境の中でクリーニング作業は行われます。大きさや形の異なる綿棒を使い分けながら弱くもなく強くもなく適度な力加減で表面を丁寧に擦ります。

修理作業員「そこ(修理作業)を見極めるというか、やり過ぎないように慎重に進めていくのが本当に難しい」

損傷した部分だけではなく傷つかなかった所まで削ってしまわないように作業を見極める感覚も重要です。

目白漆芸文化財研究所 文化財修理主任鷺野谷一平さん「時代性を残しながらというクリーニングになってきますので、どこが落としどころというかゴールなのかをしっかりやる自信、本人が見極めてないと難しい作業になります」

首里城の美術工芸品の修理に携わる人たちも試行錯誤を重ねながら歴史を繋ぐ使命感を日々強めています。そんな思いが込められているからこそ私たちは多くの美術工芸品に魅了されてるのかもしれません。

目白漆芸文化財研究所 文化財修理主任鷺野谷一平さん「我々技術者というのは長い歴史の作品が残っていく長い歴史の一点の一部分でしかいないわけで、次の世代にどう残すかっていうのをやはり念頭において、修理全体に関してもやり過ぎないことですね」

沖縄美ら島財団 琉球文化財研究室幸喜淳室長「技術が伝わっていなくても物が残っている物から学ぶことによって琉球王国時代に人はどういう風に作っていたのかを知ることができるやはり物を後世に伝えることっていう途上に関われることは凄く名誉なことだなと思います、むしろきちんと繋げていく責任というのをひしひしと感じている形ですね」