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政府が南西シフトとして進める自衛隊配備や有事の時の問題などについて考えるシリーズ「沖縄と自衛隊」では与那国島への自衛隊ミサイル配備を取り上げながら、既成事実を積み上げて計画を進めようとする国の姿勢や自衛隊の在り方について考えます。

おととい島への対空ミサイル配備に向けた説明会が開かれました。予算要求後の開催となったため、住民からは批判も相次ぎました。人口およそ1700人の島で、数百人規模で駐留する自衛隊は、島の行方を左右しかねないほど存在感を増している様子も見えました。

山田和幸さん「防衛省の見解はいかがなものかと」「いろいろ書いているのを読んでいただいて誠実に答えてほしい」

1週間前。与那国町から駆け付けた山田和幸さんの姿は、嘉手納町にある防衛局にありました。

政府が15日に島で開く説明会を前に、住民11人の質問を取りまとめて、事前に提出していたのです。

山田さんが防衛局に提出した質問は全部で10項目に上ります。ミサイル攻撃を受けた場合の住民の安全確保や県議会が決議した外交による平和構築を求めた意見書などの政府の見解を問うものでした。

山田和幸「中々みなさんね。思いがいろいろあるんです。自衛隊に囲まれていると例えてもいいくらいの島が7年続いているわけです」

山田さんは普段声に出せない自衛隊への思いをぶつけた人の声も代弁していました。

沖縄と自衛隊(9)/与那国のミサイル配備/島の行方左右する自衛隊

15日は「03式地対空中距離誘導弾」と呼ばれ、飛んできたミサイルや航空機を地上から迎撃する役割を持った地対空ミサイルを島に配備する計画の説明会でした。

玉城知事「この件に関する県への説明は現在のところありません。このような対応はやはり政府との信頼関係を損なうものでしかなく、県としては厳しい姿勢で臨まなければいけなくなると認識をしています」

県民の間では、宮古島や石垣島も含めてミサイル部隊の配備が進む中、安全保障関連3文書で決定された敵基地攻撃能力が島々に置かれたミサイルにも付与されるのではないかと懸念が高まっています。

防衛省担当者「地上から発射して、航空機や弾道ミサイル、巡航ミサイルを撃ち落とす装備。他国を攻撃するような機能を持ったものではない。いわゆる反撃能力にはならない」

政府側は15日の説明会でミサイルを「反撃用ではない」と強調していました。防衛力強化の名のもとに、「南西シフト」として先島地域への陸自配備が進められてきました。与那国島はその先頭を切って、7年前に駐屯地が置かれました。

これまで警備部隊を中心に200人前後だった島の自衛隊の規模は、対空ミサイル部隊や電子戦部隊の追加で百数十人が増える見込みです。

住民「自衛隊(員)が選挙に参画してきているっていうのが、実質的に住民自治にものすごい影響を与えてキャスティング・ボードを握っている状態にある」

防衛省担当者「当然に国家公務員法に基づいて、政治的中立なので(特定の候補に投票する)動員ということは全くない」

4月末の与那国町の人口はおよそ1700人で、200人規模の自衛隊関係者はおよそ6分の1を占めるといわれています。人口に対する自衛隊の存在感の大きさに、島では選挙への影響も含めて、懸念が渦巻いていました。

一方で、説明会の時に、山田さんが事前に出していた質問に政府から回答はなく、後日、答えることになりました。

沖縄と自衛隊(9)/与那国のミサイル配備/島の行方左右する自衛隊

山田さん「本来であればこういう説明会は、もっと前に。防衛省が概算要求を積み上げる前に大事なことですから、町長含め議員さん含め、我々住民・公民館の人々にちゃんと降ろして、意見を聞いて総合判断をして、町長なりが、こういう条件があるけれどもこれは進めたらどうか、これは待ってくれという話があるわけでしょう」

今回の説明会は、ミサイル部隊を配備するために必要な土地を取得する費用を予算に盛り込んだ後の開催となりました。住民に「事後承認」を求める形となったことに配備ありきで計画を強行する、政府の姿勢をただしています。

防衛省担当者「住民の皆様に丁寧にご説明させていただく機会を設けるべしという強いご意向をいただいてまして、町長から防衛大臣にもそのようなご要請をいただきまして本日このように、ご説明をさせていただく場を設けた」

浜田防衛大臣「住民説明会の開催も含め、引き続き丁寧な対応を進めてまいりたいと考えるところであります」

政府は自衛隊の配備を巡って、ことあるごとに「丁寧」な対応や説明、という言葉を繰り返し強調してきました。

「丁寧な対応」として開かれたはずのおとといの説明会ではミサイル配備の是非に関わらず、国の強引な進め方に反発の声も上がりました。

住民「今みたいなやり方。これ聞いたって容認しているのと一緒ですよ。今の状況を見ると私は思いますねやむを得ないだろうと。これはさっき言ったパフォーマンスの一つ。決定したことをただ、資料で説明して、意見のある人はまあまあみたいな、一応聞いたから、これだけのことですよね。これをやったから何が変わるというものでもなくて。順序が逆。話ありきで後から住民説明会。完全な逆転これが本当におかしいし。これが当たり前になるのが怖い」

どれほど言葉や手法を丁寧にしても、思い描いた結論ありきで住民の意見を聞かずにミサイルの配備を強行しては、地元の理解など到底得られるはずもありません。