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国が統計を初めてから不登校となった児童生徒の数が過去最多となっています。こちらをご覧ください。文部科学省がまとめたもので(2021年度)県内の小中学校では4435人、高校では851人と、過去最多となっていてクラスに1人は、学校に行けない子どもがいる状況です。

そんな悩みを抱える子どもたちを元気づけようと毎年行われている「音楽発表会」があります。5年目となった今回、参加者のなかには「社会に出る」ことを意識し始めた若者もいました。

社会への扉を開く勇気に 不登校音楽発表会

賑やかな音楽を奏でているのは様々な理由で学校に行けなくなった子どもたちです。子どもたちの居場所となって自立を支援する「kukulu」で5年前に始まった「音楽ワークショップ」。県内の音楽家団体「楽友協会おきなわ」のメンバーが、子どもたちとコミュニケーションをとりながら年に1回、集大成となる発表会を作り上げています。

楽友協会おきなわ 大城伸悟さん「いっぱい心の中に秘めて叫びたいことがあるんですよね。」「僕たちのクラシック音楽が持っているスキルとか技術とか、心と言うかそういうのを持って彼らと何か通じるところとか見えたりする瞬間があるんですね。そこはもう何にも代えがたい宝物みたいになります」

客席から仲間を見守っているのは、国吉英樹さん。この発表会に1年目から参加してきたメンバーのひとりです。

国吉英樹さん「(音楽家たちは)引っ張るとか、押してくれるとかじゃなくて、一緒に横にいてくれる存在です。」

英樹さんはクラスメイトからのいじめがきっかけで、小学6年生のとき、不登校になりました。

社会への扉を開く勇気に 不登校音楽発表会

国吉英樹さん「身体的特徴いじられたりとか。日記を人前で読まれたり。」「朝学校行くときにはお腹痛くて、這うようにして学校に行っていたので」

それからおよそ7年間、ひきこもり生活を送っていましたが、通っていた心療内科の医師の紹介で「kukulu」を知り、心を開いて話し合える友達とも出会えました。

国吉英樹さん「それまで外に出なかったんですけど、友達と一緒にゲームセンターに行ってみようとか、カラオケに行ってみようみたいなこと、私にとって初めての経験でしたので、それがきっかけで外に出るようになりました」

毎年の舞台では仲間と協力しながら様々なことに挑戦してきました。

国吉英樹さん「寸劇みたいな。ああいう舞台に立つのって小学生以来なので。よくもまあ前に出られたなあっていうのもありますし自分だと全くやらないような役になりきってそういうのも無い経験でした」

社会への扉を開く勇気に 不登校音楽発表会

この日は、発表会にむけての練習が行われていましたがそこに英樹さんの姿はありません。社会に出ることを目標に就労訓練をするため別の部屋で、経理の手伝いをしていました。

国吉英樹さん「レシートとExcelの数字が間違えてないかとか、気をつけてチェックしています」

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他にも、外部から講師を招いたキャリア塾や商品のアイデアを考える活動に参加するなど本格的に”働く”ことを意識し始めました。(提供写真:アシタネ)

しかし、今後のことを真剣に考えるほど漠然とした不安が襲います。

国吉英樹さん「自分が何がしたいのか、何ができるのかというのが正直さっぱり分からない」「やっぱり怖いのが一番なのかな」「分かんないことだらけだから怖いんじゃないかなって思っています」

「働く」とはどういうものなのか。分からなければ、いっぱい経験してみればいい。そういう風に思うこともありますが、一歩踏み出す勇気が持てません。

国吉英樹さん「上手くやれないとか、周りに比べて劣っていると感じちゃったりとか」「劣っているから多分失敗するからやらないみたいになっちゃう」

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複雑な思いを抱きながらもkukuluでは、先輩として仲間が居心地よく過ごせるようみんなに寄り添い、支える存在になっています。

ランチの時間Kukuluメンバー「自分がkukuluに初めて来たときに、初めて声かけてくれたのが英樹さん。名前何て言うの?って感じ。安心感があります」

学校に行けなくてモヤモヤしている仲間に、英樹さんはありのままでいてほしいと感じています。

国吉英樹さん「ずっと胸がモヤモヤしたまま家にいるって絶対つらいじゃないですか、家って落ち着く場所なのに」「頑張ってなんて言えないです。だって本人すごく頑張っているから。そう考えると、今のままでいいよって」

社会への扉を開く勇気に 不登校音楽発表会

迎えた発表会、本番。今回は客席から仲間を応援します。

国吉英樹さん「みんなが輝いていますよね。輝ける場なんですかね」

参加する子どもの数は、合わせて37人。(他事業所も含む)これまでで一番多い数です。

国吉英樹さん「最初カラオケ一緒に行ったとき歌わなかったんですけど誰かと一緒だとすごく歌ってくれて。マイク離さないんですよ。(Q歌うの好きなんですね)本当は好きみたい」

「楽しかった!」「楽しかったよね!」

音楽家たちの目にも英樹さんの姿は頼もしく映っていました。

社会への扉を開く勇気に 不登校音楽発表会

作曲家 鶴見幸代さん「自分から作るっていうことができる貴重な方なんですね.

演奏だけじゃなくどんどんアイデアが出てくるし、それで作っていけるから。それをこれからもっとやってほしいなと思っています」「いろんなことにチャレンジしてみたいな、って言っても自分のやりたいことって結局分かんないので、こういうのやってみない?とか誘われたことを全部やってみますって言えたらいいなって思います」「みんなが頑張るから私も頑張れます」

自分に嫌気がさしたり、落ち込んだり。そんな気持ちも全部ひっくるめて表現してきた発表会。友達や音楽からもらった元気を力に英樹さんはこれからの人生と向き合っていきます。

もともとは引っ込み思案だった英樹さんですが人前に立った経験がちょっとした自信にもつながってお店の人などにも緊張するけど勇気を出して話しかけることができるようになった。

ひきこもりや不登校などを経験しながらも働きたいという若者など支援する行政の相談窓口も設置されています。まずは相談してみてください。子ども若者みらい相談センター sorae(ソラエ)|ホームページ