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QABでは「沖縄と自衛隊」と題して政府が「南西シフト」として進める自衛隊配備や有事の住民避難の問題などについて考える特集を始めます。

初回のきょうは「南西シフトって何?」がテーマです。政府が進める”自衛隊配備の現状”と、関連して語られる”台湾有事の懸念”を深掘りします。

濱元記者「反対の声が響く中、機動戦闘車が公道に入ろうとしています」

2か月前、自衛隊とアメリカ軍の合同演習「キーンソード」で与那国町内を戦車同様の105ミリ砲を装備した自衛隊の「機動戦闘車」が走行しました。2010年代に入ってから、先島諸島に自衛隊配備をして「南西シフト」を進めてきた政府の方針を、象徴するような場面でした。

「南西シフト」は日本政府が中国の海洋進出などを念頭に、沖縄を含む日本の南西地域で自衛隊の体制を強化する方針のことです。

「沖縄と自衛隊」(1)台湾有事と共に語られる「南西シフト」って?

政府は2010年ごろ、沖縄本島より西側を「陸上自衛隊部隊配備上の空白地域」と表現していました。以降与那国島、宮古島、石垣島と自衛隊の配備を進めていったのです

中国への対抗を念頭に置く中で、離島へのミサイル部隊の配備も進んでいます。沖縄の基地問題などを追ってきた沖縄国際大学の前泊博盛教授は南西諸島への自衛隊配備が「当初の目的からずれてきている」と指摘します。

前泊博盛教授「日本が輸入に依存している国ですから石油やですね、原材料が外から入ってくるときに、海上輸送が99%ですね。その海上輸送路を確保する安全を確保するためのシーレーンっていうのを防衛するという。そのシーレーンに沿って出来上がってるのがまさに琉球列島でもあるということで、ここに軍を配置して安全を守るという。そういう形で進んできたと思うんですけども、いつの間にかここがですね。攻撃をする拠点化をされるという、そういう変節を経てきていますね」

沖縄周辺への自衛隊配備の方針は、先月、政府が閣議決定した安全保障関連3文書でより強化されました。政府の計画では那覇駐屯地の陸上自衛隊第15旅団を師団に格上げするほか、沖縄市に補給拠点を新設することも盛り込まれています。台湾有事の懸念について日本の中で沖縄だけが「当事者」として向き合わされてしまっている状況に、前泊教授も警鐘を鳴らします。

「沖縄と自衛隊」(1)台湾有事と共に語られる「南西シフト」って?

前泊博盛教授「沖縄が戦場になって、東京ではごく普通の生活が続く。あなた、お弁当持ったの?子どもたちも学校の時間よ、っていうような日常生活の中で、ところできょう南西地域には、沖縄にはミサイル何発飛んだの?何人死んだの?っていうね、そんな話をされかねない。国民の9割、99%が傍観者です。そして人口1%の沖縄だけは当事者にされようとしていますね。だから傍観者的意識を抜けて、当事者としてこの問題を考えられるかどうかが大きな鍵だと思います」

南西諸島での自衛隊配備の必要性は、台湾有事の懸念と連動して語られることがあります。中国が台湾に侵攻し、その戦火が沖縄にも飛び火する、などの懸念もさまざまな立場の人々から語られています。実際、去年8月には中国が台湾周辺でミサイル演習を行い、一部が沖縄周辺の日本の排他的経済水域に落下する事態も起きました。

一方で、中国の軍事演習は台湾にアメリカ下院議長が訪問した件に対応する形で行われました。国際関係を研究する琉球大学の星野英一名誉教授は中国側の意図を踏まえて、冷静な対応の必要性を指摘します。

星野英一名誉教授「中国側から言わせれば、どうして一つの中国ということを合意しているはずの国がそんなふうにして議会のリーダーを台湾に送ってくるのか。うん、あの約束が違うではないか。というそういう話にもなりますよね。それを私達が見たときに中国は台湾に対してこんなふうに軍事演習をしてミサイルを撃ち込んでこれだから私達は抑止力を強めなくてはいけない。というふうに言うならば、安全保障のジレンマにどんどん落ち込んでいくというか引きずり込まれるというか。泥沼に入ってしまうわけですね」

台湾有事については、沖縄の米軍基地などが中国側の攻撃対象となるなど県民に重大な影響を及ぼしかねない事態の想定も出る中、冷静な見方をする意見もあります。地政学の分析をしてきた「ユーラシアグループ」の2023年の危機に関する報告書では、台湾危機を「リスクもどき」と分類していて、アメリカと中国が経済的に相互依存していることや、両国とも国内問題に追われていることなどを挙げて「2023年に訪れないだろう」と分析しています。

星野教授ら県内研究者のグループも各国政府に台湾有事の回避や信頼関係の構築などを訴える提言文を発表しました。

星野英一名誉教授「ユーラシアグループの報告書のリスクリストで、台湾有事はリスクもどきってなってるでしょ。そのようなことが『冷静な見方だよね』という(認識が)あって(中国は)これまで難しい問題は例えば棚上げにしたり、先送りにしたりしてやってきたはずなんだけれども、そこからするならば台湾が独立でもしない限り、武力によって解放するってことはしないだろうと、その可能性は低いと思うんですね」

「沖縄と自衛隊」(1)台湾有事と共に語られる「南西シフト」って?

星野英一名誉教授「お互いの意思を疎通していくそういう中で、軍縮が可能になるような条件を作りお互いのその信頼を高め、不安を取り除く。ということでもって民主主義国でない中国もその火種を取り除くことを実行に移すことが可能になるっていう、そういう考え方ですね」

台湾有事の懸念を背景に、必要性が議論されている「南西シフト」に伴う自衛隊の県内配備。私たちはその是非を冷静に見極めていく必要があると思います。

取材を担当した塚崎記者です。よろしくお願いします。

塚崎記者「よろしくお願いします」

塚崎さん。今回は自衛隊の「南西シフト」について解説していただきました。今後の政府の方針について説明していただけますか。

塚崎記者「政府は石垣島に陸上自衛隊の駐屯地を建設中で、今年3月には完成します。2023年度中にうるま市にある勝連駐屯地にミサイル部隊を配備する計画になっています。2027年までをめどに、沖縄市にある自衛隊沖縄訓練場に弾薬などを保管する補給処支処の建設を検討しています」

弾薬の保管する拠点については、今月6日に国から沖縄市に説明がありましたね。

塚崎記者「沖縄市以外にも沖縄防衛局は那覇市や宮古島市など自衛隊駐屯地のある自治体に、安保関連3文書に伴う自衛隊の強化方針を説明しています。自治体からは住民説明会などを求める声が上がっています」

自衛隊の南西シフトがさらに強まっている中、私たちはどのように向き合うべきなのでしょうか。

塚崎記者「はい。まずは一つ一つの動きに関心を持つことが大事だと思います。自衛隊配備は、先島で先行して進んできた部分があるので、本島の人と先島の人たちで認識が異なってきた部分もあります。だからこそ、国の配備計画や説明にまずは注目をして、それが私たち一人ひとりの生活に影響を及ぼすことがないか、慎重に見極めていく必要があると思います。今後も自衛隊配備が進む本島や各離島の状況のほか、有事の国民保護などについて焦点を当てながらこれまでも安全保障の国策に振り回されてきた沖縄は新たな自衛隊配備にどう向き合うべきか考えていきたいと思います」