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復帰について様々な角度から見つめ、考える企画「復帰50の物語」です。今回の舞台は、戦後「県民の台所」と呼ばれてきた第一牧志公設市場です。時代とともに移り変わる人々の様子を見続けてきました。

長嶺鮮魚店 長嶺次江さん「(那覇)市でもね、何カ所の市場があったんですけど、残ってるのはこの市場だけよ。この市場だけだから大事にしないと」

那覇の第一牧志公設市場。かつて「県民の台所」と呼ばれ、戦後、沖縄の食文化を支えてきた場所は、時代の変遷とともに、その姿を大きく変えてきました。

Q本土復帰後、市場は変わりましたか? みのる漬物店 津波古信子さん「あっさよ、大変、変わりましたよ」「お客さんがあれ、本土からどんどん入っていらっしゃるさーねー。それで、沖縄の人より本土のお客さんが多い」

本土復帰50年の今、ひとつの転換期を迎えた那覇のマチグワァーの光景と人々の声を記録しました。

平田漬物店 玉城文也さん「新しい市場ではあるけど、昔ながらの市場だねって言われることを自分たち守っていかなきゃいけないなと思ってます」

復帰50の物語 第46話 市場が見てきた世替わり

保健所職員説明「来年3月の新牧志公設市場への移転に伴う食品衛生講習会の方を開催させていただきます」

先週、第一牧志公設市場で働く事業者たちが、食品衛生に関する講習を受けていました。来年3月の新市場への引っ越しに向けた準備です。

城間幹子那覇市長(当時)「みなさまこれまでの長いご愛顧ありがとうございました。そして仮設市場、新しい市場にも皆様方が足を運んでくださいますようにお願いを申し上げます」

3年前の2019年6月、建物の老朽化に伴う建て替え工事のため、仮設市場へ移転した旧公設市場。その歴史は、戦後の復興とともにあります。

那覇市は、闇市を取り締まるため、公設市場を開設。1950年に、旧公設市場の場所に、精肉部と鮮魚部が作られました。市営市場といっても、建物は、廃材を寄せ集めたバラック造り。おまけに、台風や大雨のたびにガーブ川が氾濫し、浸水被害に悩まされてきました。

復帰50の物語 第46話 市場が見てきた世替わり

念願の近代的な鉄筋コンクリートの建物になったのは、沖縄が本土に復帰した1972年です。この市場で古株のひとつが、1950年創業の平田漬物店。

平田漬物店 玉城文也さん「自分のおばあちゃん(平田敏子さん)の時代の時に、まだ戦後すぐだったので、結局冷蔵庫が無い時代だったから、塩漬けとかそういう漬物にして食材を保管するためにも漬物屋を始めたって言ってましたね」

3代目文也さんの祖母の代から、島らっきょうの塩漬けなどを販売してきました。

Q復帰で市場は変わりましたか?平田漬物店 2代目玉城鷹雄さん「人間がいろんな所から来るようになったんじゃないかな。復帰してから色んな人がくるな、世界各国から」

開設当初の市民の台所としての「市場」から観光客で賑わう「観光拠点施設」へ。コロナ前の2017年度の報告では、第一牧志公設市場を訪れた人のおよそ7割が観光客という結果に。

復帰50の物語 第46話 市場が見てきた世替わり

Q扱う品物は変わりましたか?平田漬物店 2代目玉城鷹雄さん「やっぱちょっと変わったな」Q何が変わりましたか「昔は大根とか、昔の運動会も黄色い沢庵とかね、白い沢庵とかあんなのがよく売れたけどよ。最近も無いですよ全然。そのタクワン自体がよ。昔はよ、運動会のときはみんなあれだった」

平田漬物店 玉城文也さんQ新しい市場に残したいものは何ですか?「昔のやっぱり相対売りとかの良さをなくさないように、昔のね、おばあちゃんなんかの気持ちとか精神を引き継いだまま、ちゃんとしっかり新しい市場ではあるけど、昔ながらの市場だねって言われることを自分たち守っていかなきゃいけないなと思ってます」

復帰50の物語 第46話 市場が見てきた世替わり

おすすめの調理法をアドバイスしていた、長嶺鮮魚店の次江さん。市場で営業を続けておよそ65年になります。

長嶺鮮魚店 長嶺次江さん「元々海人です。親なんかも海人。昔はもうね、バスで、バスでタライを入れて開南から下りてきて、みんな広げて売ってたんですよ。」Q復帰で市場は変わりましたか?「変わりましたよ、変わらないと大変さ。復帰後、刺身も、これ、わさびと使うのは復帰後ですよ、ほとんど。(復帰前は)ほとんど味噌和えとか」

買い物客「お肉はもう市場に決まってる。こっちでは自分が好きなのを買えるでしょう、赤身ちょっと多めにとか、脂ちょっと少ないのとか」

店主「はい、ありがとうございます。忘れないでよ」客「オーケー、オーケー」客「お姉さん、これ開けてからこれ入れて」店主「はい、オーケー」客「これ融通もきくわけ」

復帰50の物語 第46話 市場が見てきた世替わり

旧第一牧志公設市場の閉場から3年半。隣接するアーケード街の景色も様変わり。来年3月19日の共用開始にむけて新しい市場の工事が進む。

那覇市の担当者「旧市場の賑わいの継承っていうですかね。相対売りっていうものに接しながら買い物を楽しむっていうところがありましたので、それをまた継承してできるように旧市場と同じような作りに」

なはまち振興課 宮里仁課長「観光客の皆様もちろんなんですけど、沖縄県民、あるいは那覇市民の方々にも足を運んでいただいて、新市場の魅力も食文化の発信とともにですねやっていきたいなと思っております」

第一牧志公設市場 粟国智光組合長「新型コロナで本当にイベントも打てない、お客さんも呼べない。本当に手探りの状態であったもんだから、大変な時期にようやく市場がオープンするというのが見えて、本当によかったなというのが本音ですね」「原点を忘れないでですね、その中で50年後、100年後残すような第一牧志公設市場、マチグワァーになってもらいたいなと思って」

復帰50の物語 第46話 市場が見てきた世替わり

本土復帰50年のタイミングで建て替えがすすむ公設市場。時代や人々のニーズにあわせ姿を変えながら、沖縄の食文化を次の50年、100年先につなぎます。