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漂着から半年、厄介者を生まれ変わらせようと試行錯誤が続いています。軽石を活用するいろんなアイデアが出てきているなか、焼物に必要な「釉薬」に使うことで新たな可能性を見出した人がいました。

軽石の漂着から、およそ半年、今もなお巨大な作業船を使った回収が続けられています。海岸線のあちらこちらに漂着したため、人の手が届かず、軽石が残ったままの海岸も少なくありません。

花城記者「止まっている船は軽石に囲まれ、まるで砂の上に止まっているようにも見えます」

利活用に試行錯誤 厄介者「軽石」で独特の風合い

8カ月前に福徳岡ノ場の海底火山が噴火したことで発生した大量の軽石が、2カ月かけて沖縄に流れ着きました。

久高診療所・有路春香医師「長期的に、来れなかった場合はリハビリの方やヘルパーの方が来られないと、島民の方の運動能力ですとか、あと食事や入浴の介助の方にも支障が出てくるかなと考えておりました。あとはガソリンですとかごみの回収ですとか、そういった生活に関わるものはやはりフェリーで運搬しておりますので、そういったことはかなり支障が出てくるかなと考えています」

ホテルモントレ沖縄マリン部門・土門直司さん「白い砂浜が見えない。水面を見ても見ての通り灰色。それはちょっとかわいそうというか申し訳ない」

漁業関係者「一網打尽。手でやっても間に合わないから」

利活用に試行錯誤 厄介者「軽石」で独特の風合い

漁業関係者「海にも出れずに、毎日漁港きて軽石除去してお金にもならずに、僕子どももいるので生活の不安とかやっぱ怖くなりますね」

船が欠航したり、漁に出られなくなったりしただけでなく、回収しても保管場所が足りないなど、影響な影響が出ました。

花城記者「今でも県内の沿岸に漂着し、多くの人の頭を悩ませてる軽石ですが、新しく生まれ変わろうとしています」

宇江城昌順さん「いっぱいあるね」

やっかいもの扱いされていた軽石を利用しようと考えた人がいます。陶芸家の宇江城昌順さんです。

利活用に試行錯誤 厄介者「軽石」で独特の風合い

宇江城昌順さん「(軽石は)鉱物ですから、石だから。釉薬というのは、ほとんど鉱物。何種類か配合しながら1つの釉薬を作って成り立つんだけど、その一部に使えんかな」

焼物のツヤや風合いを出すための「釉薬」を軽石で作っているんです。各地で猛威を振るう軽石に心を痛めていた宇江城さんは、陶芸の材料として生かせるのではないかと行動を起こしました。ビーチで拾ってきた軽石を試しに窯で焼いてみると、釉薬に必要な成分が溶け出してきたことから、活用の可能性を見出せたといます。

宇江城昌順さん「窯出してみると、この原石は、上手い具合に溶けてるもんですから。ここで確信持ちましたね。『これ釉薬に絶対使える』という確信。僕自身がとにかくびっくりした」

最初はとにかく試行錯誤。ほぼ軽石100%の釉薬を作るには、まず塩抜きをして、砕くところから始まります。

宇江城昌順さん「簡単そうだけど、割れないよ。簡単には粉末にならないよ」

軽石は「もろい」というイメージがありますが、人の手で小さく砕いて粉末にするには4日から5日かかるそうです。

利活用に試行錯誤 厄介者「軽石」で独特の風合い

宇江城昌順さん「あと、釉薬(に使う素材)はみんなよそから買ってるもんですから。こればっかりは、どうしようもないなと、いつも思ってたんですよね」

軽石の粉末を、水と混ぜれば、釉薬として使えるようになります。久米島で採れる土だけを使った生地に、軽石ベースの釉薬を塗って出来上がったのが「銘(めい)ガローシ御抹茶椀」です。久米島の方言で「軽石」を意味する【ガローシ】という言葉を盛り込むことで軽石のマイナスイメージの払しょくを狙います。

宇江城昌順さん「軽石の色んなよくない印象が、これでちょっと明るく、軽石がこういう風に変わったよ、ということにちょっとでも手助けできればな」

軽石でできた釉薬はどんな仕上がりになるかやってみないとわからないというおもしろさがあるといいます。

利活用に試行錯誤 厄介者「軽石」で独特の風合い

宇江城昌順さん「黒でも色んな黒があるんですけれども、この黒の中に、黄金色もあるし、紫系はあるし。一般的な釉薬の色と深みがまず違いますね。光沢の具合がちょうどいいんですよ」

蛍光灯の下、太陽の下、ライトをあててみた時、その時々で様々な色合いを見せてくれるガローシ作品は、なにひとつ同じものは出来上がらない世界に1つだけの作品で、その個性を楽しむのも醍醐味です。

利活用に試行錯誤 厄介者「軽石」で独特の風合い

総合地球環境学研究所・新城竜一教授「今回のこの軽石を使った焼き物として、何かすごい斬新なアイディアだと思いますね。僕自身はその金色が何で、どういうものがその金色の色を出してるかとかなり気になる」

軽石が秘めた可能性に地質学の研究者も注目しています。

総合地球環境学研究所・新城竜一教授「灰色とこの真っ黒で色が違うのに、成分分析して先ほど火山岩の主要な成分のケイ酸って言いましたけど、ケイ酸の濃度は同じですね。65%これも65%。だから、えっていう感じなんですよ。専門家から見ても。業者とその行政と一緒になって、どうやってこれを有効利用していくか仕組みを作らないと、なかなか難しいなっていうことを(感じた)」

軽石の利活用に向けた動きも出ています。レンガといった建築資材や、除草材など41のアイデアが県のHPに掲載されています。頭を抱える悩みの種となっていた軽石が、これからは自然を知る教材として、生活に役立つ資源として生まれ変わろうとしています。