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沖縄戦から76年がたとうとしている今もなお沖縄の地に残り続けるアメリカ軍基地。「極東最大の空軍基地」とも言われる嘉手納基地は、住民に騒音という被害をもたらしています。戦闘機が出す騒音のなか、生活する人の様子と体への影響を取材しました。

嘉手納町、北谷町、沖縄市の3市町にまたがる嘉手納基地。1985ヘクタール、嘉手納町のおよそ8割の面積を占めています。在日アメリカ空軍最大の基地では日夜、戦闘機や様々な航空機を使った訓練が行われています。

嘉手納基地の騒音被害

そんな嘉手納基地によって地域の住民が苦しめられているのが、戦闘機の騒音問題です。基地から飛び立つとき、住宅地の上空を飛行するとき、そして基地に降りて来る時まで常に騒音をまき散らしています。時には電車が通過するガード下に例えられる100デシベル近い数値を観測されたこともありました。

知念正一さん「爆音がうるさいのと住みにくくなっている、だんだん。関係なく、上空飛んでいる。いくら申し入れしても、ある程度離れて飛べばいいのになと思うけど、ヘリコプターは下の住んでいる人間のことは考えないで飛んでくる。」

19年前にこの家を建てた知念さん。騒音に耐えかねて7年前に家にあるすべての扉や窓を二重にする対策を施しました。それでも、騒音が激しい時にはテレビや電話の音が聞こえないだけでなく、睡眠が妨げられるなど日常生活に支障をきたしているというのです。

知念正一さん「夜中の2時3時になって、(騒音が)あるから、トイレで目が覚めた時に今度は寝付けないとか、神経痛とか色々痛いときに目が覚めて(騒音が)なれば、眠れない時は爆音のせいに。自分の体は悪くても眠れなくなる。」

生まれた時から基地のそばで生活し、仕事をしている仲本さんも常に鳴り響く騒音の被害者です。

嘉手納基地の騒音被害

仲本兼作さん「毎日がストレス。飛行機の音ってのは。自分の場合は仕事もここでやっているので、仕事中もストレス溜まっているし、夜中も普通に飛んでいくから、目が覚めてしまうときもあるので、起きてしまうっていうことでは、ストレスは非常に感じています。」

また、仲本さんは騒音の問題は音を聞く人の健康状態によって大きく左右するといいます。

仲本兼作さん「熱発しているのにこういう戦闘機が飛び交って訓練されている時の、この人の感情とかそういう部分は見てないんじゃないかなと思うくらいで、健常者がどうのこうのじゃないですよ。一番もっともっと被害を受けている人はいるんですよ。飛行機が飛んで行ったときは同じ音かもしれないですよ。しかし受ける側というのは物凄い差があるんですよ。その辺知っているかっていう話。みんなが同じ状態じゃないんですよ。」

静かな夜、そして穏やかな日常を取り戻すため、夜間飛行の差し止めや住宅上空の飛行中止など、反対の声を上げ続ける必要性を訴えます。

仲本兼作さん「老朽化もあって、F15もそうだけどいつかは落ちるんだけども、その中で落ちて繰り返すのかって反対をね。反対行動、これはいけないよっていうのは、常に言っていかないといけないじゃないですか。」

さらに騒音によって命の危険にさらされているという、驚きのデータが発表されました。騒音被害を試算したのは環境衛生学を専門とする北海道大学の松井利仁教授。嘉手納基地の騒音によって、睡眠障害などになり心筋梗塞を引き起こし、年間10人が死亡しているというのです。

嘉手納基地の騒音被害

嘉手納町によりますと基地近くの屋良地域では、70デシベル以上を観測した騒音が2019年度だけで9000回以上発生。1日平均25回以上。単純計算で1時間に1回騒音が生じたことになります。

北海道大学・松井利仁教授「週に2、3回以上、例えば航空機で目が覚めたとなると、屋良地域、測定地付近では睡眠障害の方が、かなりまだ残っているということになります。睡眠障害自体では亡くなりませんけども、睡眠障害で心疾患、心筋梗塞になる率がどれだけ高いか。睡眠障害というのが、人間にとって非常に悪い影響及ぼします。そういう点で嘉手納というのは、被害を受ける方の人数はそれほど大きくないかもしれません。10人とかいうと少ないように聞こえるかもしれませんけれども、住まわれている方の人数考えると、リスクは非常に高いですよ。」

松井教授は命を危険にさらす騒音のリスクを減らすには、国の率先した行動と国民が関心を持つことの必要性を指摘します。

北海道大学・松井利仁教授「毎年10人だったら、30年で300人です。あの狭い地域に300人、騒音で亡くなられた方がいる。これだけの被害が出ているのに、何も手を打たない。むしろ手を抜いているというのが、日本の現状じゃないでしょうか。」

嘉手納基地の騒音被害

知念正一さん「飛行場が大きくならんような。いろんなの作っているけど、いくらでも大きくなっているような、強化されているような感じになる。爆音もうるさくなれば。縮小していけばいいんだけど。」

仲本兼作さん日本政府が許しているからじゃないですか。どれだけ沖縄県民の命とかそういうのを守りたいかとか、守っていっているのかどうかとか本当に疑問でならないですよね。」

嘉手納の空の下に住む人たちが騒音で苦しみ続けないためにも、彼らの声に耳を傾けた対応が急務です。