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普天間基地周辺の河川や湧き水、そして北谷浄水場の水で発覚した有機フッ素化合物PFOSによる汚染。市民の健康調査や水の汚染によって懸念される田イモへの被害を調べた京都大学の専門家らが報告会を開きました。

今月16日、宜野湾市で開かれたPFOSの調査報告会。航空機の洗浄剤や泡消化剤などに使われていた有機フッ素化合物・PFOSによる水源汚染が波紋を広げる中、京都大学の専門家の話を聞こうと多くの人が訪れました。

PFOS 田イモ農家脅かす風評被害

そんな中で、調査に協力した市民の一人として、紹介された男性がいました。宜野湾市で田イモ農家を営んでいる伊佐實雄(さねお)さんです。伊佐さんは、今回の調査に、自身の田んぼで作っている田イモを提供しました。それにはこんな思いがあったからです。

伊佐實雄さん「不作だった、生産がダメだった、PFOSが影響じゃないかと言ったら、「そうだ、そうだ」と一人歩きするさ。それが怖い。証拠を持って、安心なのか、危険なのか。これは生産農家としての義務ですよ」

伊佐さんは、親から譲り受けた大山地区の水田で、30年以上前から田イモを育てています。この日は週末の出荷を前に、収穫に追われていました。

ひと月前から水を切って乾燥させます。

この辺りに、降り注いだ雨は地下水として蓄えられ、大山湿地のあちこちから湧き水として噴き出しています。豊かな水に恵まれているからこそ、田イモを育てることができるのだと言います。

PFOS 田イモ農家脅かす風評被害

伊佐實雄さん「水は、こちらから、いらっしゃるときに川がありますでしょ。あれからホースを引いて、それぞれ必要な量、水を配分しています」

ところがそんな農家に降ってわいた水の汚染。県の調査では、普天間基地より西側にある湧き水や河川で、PFOSが高濃度で検出されていることがわかったのです。

死活問題であると同時に、ずっと先祖代々から守られてきた親を始め、一つの財産です。私たちの時代でそういったことが流れてきたら心配で、どうしようかなと。

農家の不安が広がる中、実施された調査。京都大学大学院医学研究科の原田浩二准教授は、今年4月、伊佐さんの土地と、そこで作られている田イモ5個を採取し分析した結果、田イモの安全性については、「PFOSの濃度は低く、作物への蓄積はなかった」ことを明らかにしました。

ただ、全ての不安が払拭されたわけではありません。水源の汚染が農作物にどのような影響を及ぼすのか。次のような指摘もあがっています。

PFOS 田イモ農家脅かす風評被害

原田浩二准教授「他の農作物はどうなのかと言われても、正直何も情報は無いと。しかも、どういう栽培の時には変わるのかというのがあるので、これについては食品とか、他の作物に関わるような情報を集めていく必要があるんじゃないかと」

また、今回の調査の先頭に立った京都大学の小泉昭夫名誉教授は、PFOSがアメリカ軍基地内で使われていた可能性を指摘した上で、汚染源をしっかり特定する必要があると指摘しました。

小泉昭夫名誉教授「汚染源がわからないとできないので、汚染源対策を知ることが必要なんですよ。もう一点は、将来の問題。米軍基地が返還された場合、国際的には、汚染者負担の原則というのがあります。汚染者が必ず払うんだという原則。アメリカは対等の法律を国内では持っている。しかし日本国内では、適用が困難。その時の(汚染源の)認定は、アメリカ軍がやっている。アメリカ軍が緊急かつ必要、生命にかかわると認められなければやらないと。汚染源を明らかにして、汚染源をはっきりさせるのは、将来必要だと思います」