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1146件。これは、去年1年間に県内で行方不明の届け出が出された件数です。びっくりする数字ですね。

はい。この中で最近問題になっているのが認知症患者の行方不明で、全体のおよそ1割を占めています。きょうは、このような状況を改善しようと取り組む民間の活動をお伝えします。

Qプラスリポート 認知症 支える"地域の力"

安慶名さん「地域とつながってないし、真っ暗で見えない部分ですよね。ここに入り込んでも多分、見つけきれないでしょうね」

おととい行われた沖縄市美里地区の認知症行方不明を未然に防ぐためのパトロール。安慶名達也さん。8年前、認知症を患っていた母・静枝(しずえ)さんが突然、自宅から姿を消し、現在も見つかっていません。

安慶名さん「若年性認知症と診断を受けた時には、64歳でした」「物忘れ、自分の家に戻ってこられないというのが1番の大きな症状の始まりだったと思っております」

目撃情報があればどこにでも駆け付けましたが、発見には至りませんでした。途方に暮れる日々。しかし同じ境遇の人たちとの出会いもあったといいます。

安慶名さん「5年半前、私がおふくろ探しをしているうちに、実は私の知り合いも、弟も、あるいは私の家族も行方不明だよ。そういう方々にお会いできた」「私たちみたいな家族を地域で増やしたくない」

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多くの後押しを受け、安慶名さんは4年前に「沖縄県認知症行方不明者家族の会」を立ち上げ、定期的にパトロールや家族をサポートなするどの活動をしています。

警察から依頼を受け、行方不明者の捜索することもしばしばあります。実際に、去年10月には、沖縄市で行方不明になった80代の女性をわずか30分で発見しました。

安慶名さん「お年寄りの尊厳、人間としての生きる尊厳というのを守れたというのが一番大きい」

家族の会のパトロールや捜索は「犯罪機会論」という防犯に理論に基づいて行われています。

犯罪機会論は犯罪が起こる要因として「場所」に着目するものです。

日本ではあまり浸透していないる理論のため家族の会では定期的に各地域の自治会で勉強会を開いています。

勉強会「泡瀬の黒潮公園のトイレです。日本は1番トイレが危険と言われています。特に子どもたち。お年寄りが倒れている形跡もよくあります」

パトロールを行うのは、「ホットスポット」と呼ばれる場所です。

いわゆる地域の中で「入りやすく見えにくい場所」。行方不明者が迷い込みやすい場所だとされています。

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昔ながらの家が並ぶ住宅街。

「みなさんこの道ですね、いわゆる入りやすくて、奥が見えにくいですね」

少し中に進むと井戸がありました。

自治会長「(昔は)みんな遊んでて使われてたんだけど、今はやっぱりさびれていると言ったらおかしいけど、我々としては管理しているつもりだけど、人が出入りしないので、どうしても(人が)来ないところになっている」

さらには、去年、独居老人が亡くなり、受け取り手もいないため放置されている空き家がありました。中には、ペットボトルや弁当箱など捨てられていて、人が入り込んだ形跡があります。

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家族の会では、このようなパトロールを実施していますが、行方不明者を未然に防ぐために何よりも効果的なのは「地域の力」だと話します。

安慶名さん「自分たちの地域は、自分たちで守ろうと」「行方不明者が発生しても、すぐに地域の方たちで、ちゃんと発見できるという持続可能なプログラムを将来作っていただきたいなと思っております」

実際に、県内では行方不明者のおよそ9割は地域の人の通報によって発見・保護されているということです。

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認知症患者を生み出さないためには地域の力が必要だとして、家族の会が開く勉強会の節々には、地域の人たちとの触れ合いを目的にしているものが多くありました。

また、老人ホームを訪れ、おじーおばーが使っているしまくとぅばで歌を歌う取り組みも。認知症の方も昔を思い出し、自然と歌っていました。

無縁社会と呼ばれ、隣に住んでいる人の顔さえわかないという人も多い今日。改めて地域のつながりについて考える必要があるかもしれません。