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高齢化社会が進む中他人ごとではない問題です。高齢者が高齢者を介護する「老老介護」。献身的な介護の末に痛ましい事件も起きるなど、社会問題にもなっています。

きょうは妻の介護をする男性の姿を通し問題で直面する、ある分かれ道を考えます

『二人暮らしで、自分が先に死んだら妻はどうなるのかと考えたこともあった』

Qプラスリポート 他人事ではない 「老老介護」の現場で考える

今年3月、今帰仁村の民家で77歳の妻を介護する79歳の夫が、妻の首を絞め殺害する事件がありました。夫は嘱託殺人の容疑で逮捕・起訴されました。

裁判長・判決「被告人を懲役2年6月に処する。5年間その刑の執行を猶予する」

先月の裁判。裁判長は、献身的に妻の介護を行っていたことや反省していることを考慮し、夫に執行猶予付きの判決を言い渡しました。

裁判長は、被告の夫に「周りの人の話を聞いて、しっかり生きて、亡くなった妻の供養をしてください」と諭す言葉をかけました。

地域から孤立。家族とも疎遠。誰にも助けを求めることができず、1人で抱え込んでしまう状況に追い込まれる夫の環境がありました。

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介護が必要な65歳以上の高齢者を65歳以上の人が介護する「老老介護」。その割合は、2001年には40.6%。割合は年々高くなっていき、2016年には54.7%にも上っています。

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宮城政三郎さん「おいしい?(笑)」

那覇市に住む90歳の宮城政三郎さん。70年近く連れ添う86歳の妻・幸子さんの介護を5年間続けています。幸子さんは5年前に突然歩くことができなくなり、介護が必要になりました。寝たきりの生活を余儀なくされた末、認知症を患い、現在は最も重度で手厚い介護が必要とされる「要介護5」の認定を受けています。

ホームヘルパーさん「幸子さん、血圧上等。上等ですよ(幸子さん頷く)」

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今でこそ、家族やホームヘルパー、訪問看護の力を借りていますが、最初の1年、夫の政三郎さんはホームヘルパーの存在を知らず、近くで暮らす娘たちの力を借りながらも、ほとんど一人で幸子さんの介護をしていました。

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政三郎さん「私が元気な間はずっと私が家で看る。そのために私は元気でないといけない」

政三郎さんを突き動かすのは、幸子さんへのこんな気持ちでした。

政三郎さん「本当に頑張って子どもを育てたりして、色々仕事して、難儀してきているからね。これはもう、絶対これはやらんといかんと思っている」

しかし、1人で行う介護に政三郎さんの身体は悲鳴を上げました。

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政三郎さん「引き上げて寝台に寝かしたり、起こしたり、便所に行って座らせたり。風呂も浴びせるというのは、もう腰痛めてね。これはダメだなと思ってヘルパーを頼んだ」

介護を始めたばかりの時、認知症を患う幸子さんは政三郎さんに対し、反抗する感情表現として、叩いたり文句を言ったりすることもあったと言います。

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政三郎さん「自分が風呂浴びたくないのに連れて行こうとするでしょ。文句言ったりするから『人は一生懸命、風呂浴びせようとするのに、文句言うか』と本当に癪に障る場合もあるけど、そこはちゃんと抑えないと。それは一番気をつけんといかん」

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幸子さんの在宅診療を行う医師は「老老介護」の現状をこう話します。

きなクリニック・喜納院長「特に高齢者については、やはり他人様に迷惑をかけたくない。そういった道徳的な観念だったりとか。どうしても抱え込んでしまって、できるだけ自分でやろうとするんですね。そういう中で頑張りすぎて、だんだんと介護や病状の重症度が高くなると、介護している側も鬱状態になったりとか、あるいは場合によっては殺人事件を起こしてしまうというような悲しい事件も聞かれますよね」

ホームヘルパーの存在を知り、他人の力を借りて楽になったと話す政三郎さん。

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政三郎さん「(Q:あのまま1人で介護する状態が続いていたらどうなっていたと思いますか?)私自身がダメになって、介護できないですよ。それでヘルパー頼んだんです。私がずっとやりたいけども」

今でもできる限り、自分の力で幸子さんの介護を続けたいと決意を示します。

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政三郎さん「最期まで一緒に。不自由でも長生きして暮らしたいですよ。(Q:奥さんと一緒に過ごして楽しかった思い出はありますか?)それはもう、みんな楽しいさ(笑)ひ孫の下のなんというの?玄孫まで生きるかもしれないよ、僕は。それまで頑張ろうと思う(笑)」

1人じゃない、周りに助けてくれる人がいる。そのことに気付けるか、気付かせてあげられるかで「老老介護」のあり方は大きく変わるかもしれません。

私たちも決して他人事ではないですね。一人で抱え込まない環境を作れるかどうかが、老老介護の分かれ道のような気がします。

「介護サービスを受けてみたいがどうすればよいかわからない」等、日常生活や身の上などで困っているお年寄りの相談は、お住まいの市町村、市町村地域包括支援センター、または各地域の民生委員、福祉保健所でも相談ができます。高齢者本人はもちろん、家族や地域の人でも気軽に無料で相談ができます。決して一人で抱え込まないことが大切です。

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