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夏休み中の教室に集まった、鏡が丘特別支援学校の高校生たち。この日、ある人を招いて、交流会が開かれました。

清剛さん「押田清剛です。宜しくお願いします」

押田清剛さんは、染色体の突然変異による障害、「ダウン症」です。この日、押田さんが交流会に招かれたのには、実はこんな理由があったのです。

そう、映画俳優なのです!いま県内で公開中のコメディー映画『39窃盗団』。登場するのはダウン症の兄・キヨタカと、発達障害を持つ弟のヒロシ。キヨタカは、踊って歌って、なんともマイペースな生活。

一方、ヒロシは、振り込め詐欺のグループに騙されて、刑務所の出入りを繰り返すばかり。そんなある日、唯一の支えだった祖母が突然の他界・・・家もない、お金もない、大ピンチの二人に忍び寄る、詐欺グループのリーダー・ケンジ。

ケンジせりふ「この国には、兄貴が犯罪を犯してもいいっていう法律があるんだ。刑法39条」

まんまと信じて、一世一代の大泥棒の旅に出る、このふたり・・・実は、本当の兄弟なのです。

これまでも多くの映画作品を手掛けてきた押田興将(こうすけ)監督実は、主演のふたりの実のお兄さん。なんと8人兄弟、押田家の長男です。

押田監督「いつか清剛の映画を撮らないと自分が映画をやっているということにならないんじゃないかと」

そんな押田兄弟で初めて臨んだ今回の映画。キヨタカが盗んでくるのは、全くお金にならないガラクタばかり。空き巣に入っても、2時間以上も戻ってきません。

実は、この映画、キヨタカさんは一切、台本を読んでいません。撮影の時間制限も、役作りも、ゼロだというのです。

押田監督「実はまだお前は映画に出るんだぞって僕はちゃんと言っていないくらい、何も言っていないんですね。そこはある意味、ドキュメンタリーで取りたいっていう風に思っていたので」

映画に出ると知らされないまま、撮影に突入した清剛さん。日常生活がそのまま映し出されています。

押田監督「ドラゴンボールが好きとか、コーラが好きとか07、映画の中で、10シャワーを滝に見立てて修行をするとか。普段のキヨタカなので、面白いのかなほんとにっていう不安もありながら、ただやるしかない」

しかし、窃盗団が直面するのは、社会の現実。お金もない、家もない、詐欺師には騙され、障害者手帳は取り上げられるなど、散々な目に・・・。

そんな現実も、あえてコメディータッチ描く押田監督。そこにこの映画で伝えたいことがあるといいます。

監督「みなさんお気遣い頂いている、害の字をどの害にするかとか、ハンディーキャップって呼ぶとか。すごい当事者に近いところからすると、ちょっと滑稽な感じがするんですよね。何も考えないで生きるのがものすごく難しくなっちゃった僕らにとっては、ある意味、清剛は強いかなって思っていまして」

障害者である清剛さんが、映画の中で見せる強さ。現実を悲観せず、人生を存分に生きる姿。それこそ、いまの世の中に必要だと感じるという押田監督は、支援学校に通う高校生たちにメッセージを送りました。

押田監督「みんな、劇的な瞬間を持っていて、それを映画になったり、演じることが可能性があると思うんだよね。どうしても作りたかったら、自分で映画を作っちゃえばいいんだ。いまはそういう時代だから」

初めての映画監督と俳優との出会いに、生徒たちからは・・・

男子生徒「コメディーまぜて、世間はいいところだよって伝えられる映画を作ってみたいな」

女子生徒「障害を持っていて、映画の出演もやっている。ちょっと憧れだなって思います。もし機会があったら、人生で一度でもいいからやってみたいなんて思います。」

交流会の最後には、サイン攻めにあった清剛さん、いま障害者として生きることをどう感じているのでしょうか。

押田監督「どうなんだろ?お前、障害者なの?3万822×6,835は?」

清剛さん「・・・5」

監督「・・・5?!だからお前障害者って言われちゃうんだよ。お姉さん分かるよ、絶対」

大矢「私も分からないです」

監督:「じゃあ清剛も大丈夫だ」

映画ももちろんですが、兄弟のキャラクターが面白いですね。

障害者というとドキュメンタリーのような、固い映画を想像しがちでどこか「笑ってはいけないテーマ」いう感じがしていましたが、障害があるからこそ清剛さんの魅力が発揮されるかんじがします。

映画は県内では、那覇市の桜坂劇場で公開中ということです。