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八重山地区の教科書選定で、石垣市と与那国町の両教育委員会が26日に開かれ、石垣市、与那国町とも育鵬社の公民の教科書を採択しました。竹富町は27日に教育委員会を開き、不採択する方針で、混乱の度合いはさらに深まっています。

与那国町と同時刻に始まった石垣市の教育委員会。会場には育鵬社の教科書を採択することに反対する住民や教師などが大勢つめかけ、廊下にまで傍聴を希望する人が溢れていました。

教育委員会には、玉津教育委員長と教育委員の5人が出席。現場の先生たちが専門的な視点でまとめた報告書が協議会の決定に反映されなかった理由について、教育委員たちから質問が相次ぎました。

これに対して玉津教育長は「報告書は参考でしかない」と述べ「協議会の答申を尊重してほしい」と繰り返して、答えを濁しました。

なかなか結論がでないため、無記名投票に持ち込まれ、その結果、3対2で育鵬社の公民の教科書が採択されました。

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与那国町では午後3時から教育委員会が開かれました。委員会では教育委員会の寄合洋且教育課長が調査員が推薦しなかった育鵬社の教科書が採択された理由について、崎原用能教育長に説明を求めました。

これに対して崎原教育長は、調査員の報告書には「育鵬社の教科書の細かい表現にまで偏った報告がされている。自身が調べた結果は問題がなかった」と説明。八重山地区の現状がしっかり伝えられていると述べました。

一方、具志堅学子委員は「しっかり教科書を比較できたか」との質問に対して「全部は見ていない。もう少し時間がほしかった」と述べました。

教育委員会では全会一致で育鵬社の教科書が採択されました。

取材した島袋記者に聞きます。今回の八重山地区の教科書を選定作業には、育鵬社の教科書を採択しようという見えない力が働いていたように感じます。これは一体どういったことなんでしょうか。

島袋記者「育鵬社の教科書の特徴は、軍隊や周辺諸国の脅威について踏み込んだ表現をしていること、また『愛国心』を重視する記述が目立つことです。国境の島と言われる石垣、与那国では、尖閣諸島の状況を危惧し、自衛隊の配備に積極的な声も高まっていて、教科書を選ぶ過程においても、そういった政治的意図が汲みいれられたのではないかと見られています」

保護者や教師たちからは教育の現場に政治問題を持ち込むべきではないとして、この教科書を使うことに反発も出ているようですが、きょうの石垣と与那国の決定をもって、育鵬社の教科書が使われることが決まったといって良いのでしょうか?

島袋記者「いいえ、あすには竹富町の教育委員会が控えています。竹富町の住民たちはきょう育鵬社の教科書を採択しないように要請をしています。また、竹富町の慶田盛教育長は今月23日、八重山採択地区協議会で、育鵬社の教科書が選ばれても竹富町では採択しないと明言しています。ですから、竹富町の動向も注目されます」

もしも竹富が石垣、与那国と別の教科書を使うという結果を出したらどうなるのでしょうか。

島袋記者「3地区では同じ教科書を使うのが基本とされています。教科書を選ぶ八重山の地区協議会の規約では、協議会で決めた教科書と教育委員会の結果が異なった場合、沖縄県教育委員会が指導、助言をし、再協議できるとなています。しかし前例のない事態で、県教委がどのような指導をするのか、どこまで介入できるかも未知数です」

しかし、八重山の地区協議会の会長で、石垣市の玉津教育長は再協議をしないとかたくなな姿勢を示していると聞きますが。

島袋記者「はい、玉津委員長のインタビューと、それを受けて、竹富町の慶田盛教育長のコメントです」

玉津教育長「8名で決めた意見を3名の再協議でくつがえすこともできませんので、今の規約では、再協議をしても何ら変わることがないと思われます」

慶田盛教育長「(玉津会長の方針については?)会長としては許されません。やらなければならない。あすは公開して、開かれた採択の状況が通じればいいと思う」

今回の八重山地区の教科書選定。色々な問題点が見えたと思いますが。

島袋記者「はい、今回の問題点を整理しました。まず(1)教科書を選ぶ八重山地区の協議会の規約が突然変えられ、教科書を選ぶ過程から現場経験のある職員が外されたこと、(2)通常の協議会では、専門的な見地を持っている社会科の先生たちが出した報告書を参考にするのですが、今回はその報告書が教科書選びに反映されなかった。つまり、推薦されなかった教科書が選ばれたことがわかっています。こういったことにはPTAや教職員から多くの批判があがっていますが、それが反映されていない状況も深刻だと思います」

教育は教師、保護者、子どもの3者でつくると言いますが、今回の教科書選定作業を見ていると、その3者が蚊帳の外に置かれている何とも奇妙な状況。実際に教科書を使うのは、教師たちや子どもたちです。この混乱がおさまらないまま、教科書だけが決まってしまったら学校現場はどうなってしまうのか、とても心配です。以上教科書問題でした。