※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

きのうの世界移植者スポーツ大会取材の続編です。45カ国から1000人近くが集まった大会の取材で、それぞれの国の移植医療事情がわかってきました。きょうは世界各国の移植医療格差と日本の現状を考えます。

「今は26歳です。11年前に腎臓を移植しました。」

「肝臓の移植を14年半前にしました。」

「腎臓移植を4年半前にしました。」

世界中の臓器移植者が集まり、オーストラリアで開かれた世界移植者スポーツ大会。県内から参加した仲里則男さんと対戦したイギリス人男性は、「臓器移植は、理解は得られているが、実際にはドナー登録が進んでいない」と話します。

イギリス人移植者「イギリス人のほとんど、オーストラリアと同じくらいの90%の割合の人は、臓器移植に賛成していると思うが、誰も登録しないんだ」他の国ではどうでしょうか。

グスタフ・ワレンさん(SWE)腎臓移植 11年前「深く根付いているよ。2011年のこの大会はスウェーデンがホスト国なんだよ。」ターニャ・サヴォライネンさん(FIN)肝臓移植 14年前「私達ももちろん多くの人が移植を待つ必要があるけど、そんなに何年も待つわけではないわ。」ジュリアナ・マリノーさん(ROU)2005年に生体腎移植「ルーマニアでは臓器移植は多くない。稀にしかない手術です。ドナーが不足していますから。」参加者のほとんどを占める欧米諸国の中でも各国間で差があるようです。

09-09-02repo002.jpg

移植が一般医療として定着しているアメリカでは、年間7000人から8000人のドナーがいると言われ、2007年には、こうしたドナーからの臓器提供が2万2千件を超えています。一方、同じ年に日本は、死後に臓器提供したのは、105人。臓器提供率が世界トップのスペインと比べると、人口比で42分の1以下、EU諸国で最下位のブルガリアよりも下回ります。こうした世界との格差は、法整備の遅れ、移植医療に関する情報量の違いから生まれていると考えられています。一方ヨーロッパでは、こうした臓器不足の現状を、違法な臓器売買の温床とも捉え、移植医療の啓発に力を入れています。

09-09-02repo003.jpg

なぜ、日本では臓器移植が進まないのでしょうか。日本移植者協議会の代表、大久保通方理事長は、臓器提供に対する意識はあっても、ドナー登録が進んでこなかったと指摘します。「海外と日本で、ドナーに対する、自分がドナーになることに対する意識として、そんなに大きくは違わないと。もちろんジェネレーション(の差)はありますけども」」

実際に、内閣府が行った世論調査でも、国民の43%は、死後に臓器提供してもよいと回答。しかし、ドナーカードなどで臓器提供の意思を示している人は、国民の4%しかいないといわれ、こうした世論とは矛盾します。

大久保通方理事長「法律も含めたシステムがきちっとできていない、提供していただく環境にないというのが、大きな問題じゃないかなと思う」

日本は、臓器移植法で、15歳未満の臓器提供禁止など極めて厳格なドナー基準を定めてきました。これに大きな変化を与えたのが、ことし7月の、臓器移植法改正です。

「自発呼吸、血液循環を含めた脳のすべての機能が失われる」・「脳死」は人の死。臓器提供の年齢制限をなくす。死者の生前の意思表示がなくても、家族が臓器提供を決断できる。移植者たちは、この法改正を契機に、臓器移植について考える人が増え、ドナー登録者の増加につながれば、と期待しています。

大会終盤、最後のボール投げ競技に挑んだ、仲里さんは、銅メダルに輝きました。日本チームもメダル22個の大活躍。世界移植者スポーツ大会は、大盛況のうちに幕を閉じました。この大会で移植者たちが確かめ合った、移植医療発展への想いは、また世界各地に広がりました。

仲里さんは、前回金メダルのボール投げ競技で惜しくも3位でしたが、メダル2つを家族の元へ届けることができました。

仲里さん「日本チーム、世界チームと再会できることを楽しみにですね」「次のスウェーデン大会も是非参加したいなと思っています」奥さん「(笑い声)光ってますね(笑い声)」

09-09-02repo004.jpg

法律は変わりました。いつドナーに、ドナーの家族になるかもしれない私たちが、移植を、自分のこととして考える時が来ました。臓器提供は、拒否の意思を示すこともできます。まず1人でも多くの人が、自分の意思を決めることが、移植医療発展のカギを握っています。

日本では現在、臓器提供を待つ人がおよそ12000人います。その多くの方が移植がかなわず亡くなっています。移植を待つ患者を少しでも多く救われるには、私たちが臓器提供について関心を持って話し合い、移植を理解する事です。日本臓器移植ネットワークなどの団体では、移植について、考えてもらう、キャンペーンを行っていてこれがその目印のグリーンリボンです。関心を持たれた方は、今画面に出ているサイトにアクセスして見てください。詳しい情報がごらんになれます。

グリーンリボンキャンペーン http://www.green-ribbon.jp/