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原則的に、選挙は投票用紙をまえに、個人の自由意志で候補者の名前をかくものですが、現実問題として選挙の行方を左右するのが「組織の力」です。しかしいま、「組織選挙」は転換期とも言われています。シリーズ「真夏の決戦」、今日は沖縄の選挙と企業や組合といった組織の関わり、そして今回の選挙での変化を分析します。

参院選公示日、両陣営の出発式に集まった支援者はそれぞれおよそ300。それぞれ企業や経済団体、そして労働組合など、支援団体の姿が目に付きます。これまで選挙に関わってきた「組織」。今回、両候補はこの組織力を選挙にどう組み込もうとしているのでしょうか。

西銘候補「前回の補選、去年の知事選と同じ体制で組んでいます」

糸数候補「(前回の参院選の)その組織票に上乗せしていくだけの戦いができたかどうか、なんですよね」

『組織票』

選挙にはなくてはならない組織の集票力。一般に与党は企業や経済団体との連携、そして野党は労働組合との連携をつよめ、それぞれの選挙を戦ってきました。今回も組織に対する両候補のスタンスは変わりません。

沖縄国際大学の照屋教授は、組織選挙はここ数年の県内の選挙では保守側に優位に働いてきたと分析します。

沖縄国際大学・照屋教授「稲嶺県政の1・2期誕生も、企業ぐるみ選挙で非常に有利に展開した。この間の仲井真知事の誕生も、やはり企業ぐるみ選挙を抜きにしては語れない。そういう面で、最近の与党側にとっては企業ぐるみ選挙が功を奏している」

前県政も、またこれを引き継いだ仲井真知事も経済界の出身で、企業をうまくまとめて集票に繋げてきました。

西銘候補も今回の選挙戦は企業との連携を強くするとともに、自公の協力関係をもって選挙にのぞむとしています。

西銘候補「この体制はね、本当にがっちりとしていますよ、そういう意味では。とくに公明さんとの協力関係ですね、それから企業・経済団体との協力関係は、この稲嶺県政8年間のなかで培われてきて、円熟期というんでしょうか」

これに対する野党側が頼りとするのは労働組合。県内ではとくに労組がこれまでの選挙を支えてきました。しかし、この労組じたいの組織力が変化しているのが現状です。

照屋教授「革新勢力の強かった要因の一つには労組の頑張りがあると思います。よく3日攻防に入って、労組のローラー作戦で巻き返しを図ったという選挙の事例はいくらでもあった。ところが最近は労組の組織率は沖縄も落ちてきました。そういう意味では、従来のように野党にとって、労組に依存した選挙は難しいのではないか」

糸数候補はこの状況を冷静に分析し、前回知事選で戦えなかった部分を強化することで、この参院選を勝ち抜きたいとしています。

糸数候補「(前回参院選と)同じくらいの票は確かに獲得できたわけです。しかし、相手が危機感をもってかなり最後まで力を抜かず頑張ってきた。(今回の選挙では)じっくり政策を、真摯に若い人と向き合って伝えていく。それは前回、あまり徹底してやってなかったと思いますので、そこを一生懸命やっているところです」

さて、ここからは比嘉記者とお伝えします。組織選挙もかわってきているんですね。

比嘉記者「まずはこちらを見て頂きたいんですが、県のまとめによりますと、県内の組合員数は最も多かった復帰直後で7万8000人、雇用者に占める組合員の割合・推定組織率は35%でした。しかし、年々その数は減少、現在はおよそ6万2000人、推定組織率は12.1%と過去最低となりました。そうしますと、やはり野党側が頼ってきた組織とは別に、あらたな戦いを模索する必要があります」

組織選挙に関しては与党が有利な状況であると?

比嘉記者「確かにそうは見えるんですが、前回の参院選、前々回と見てみると、自民は郵政をはじめ、遺族政治連盟など支持団体からの票数が非常に落ちてきていて、公明党との連立で勢力を維持している。やはり与野党どちらも組織選挙を見直す時期を迎えているといえます。また、組織選挙では組織に属さない有権者が選挙から遠ざかると照屋教授は指摘します」

照屋教授「それが私は結果的に、有権者の政治離れ・選挙離れを引き起こしているんじゃないかと思います。ですから投票率がなかなか上がらないということも一つには政治離れ、それはいまの組織選挙が悪影響をおよぼしている」

比嘉記者「政党が打ち出した政策を、候補者が有権者に向き合って理解と支持を得るのが選挙の原点ですが、ここ数年の課題、組織に頼る選挙の現状はいまだ解決できていません」

政治に関心を持たず、投票にも行かないという有権者・数十万票の掘り起しを含め、無党派層にどう食い込めるか。今回の選挙戦はその辺がポイントになりそうです。