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与那国島に復帰後初めて、アメリカ軍の掃海艦が2隻入港し、きのうまで3日間滞在しました。アメリカ軍によると安全保障上、日本国内の民間の港にも順次寄港しているということで、その回数はこの25年間で600回と、決して珍しいことではないと説明しています。

しかし、いざというときは軍港として使われるのではないかという不安の大きさは、他の地域の比ではありません。県の自粛要請と与那国町長の反対も無視して強行された今回の入港、休養と友好親善という表向きの理由とは裏腹に、真の狙いは別のところにありました。岸本記者の報告です。

在沖米国領事館・メア総領事「海軍の掃海艦が与那国に寄港した際には、何とぞ、特段のご高配を賜りますよう、お願いいたします」

今月7日、掃海艦の寄港に地元の協力を要請し、兵士のホームステイやバーベキューパーティーも提案した在沖アメリカ領事館のメア総領事。しかし・・・。

仲井真知事「米軍用の寄港の港というのはちゃんと決まっていますから、本来そこを使用すべきであって、民間の港は使用すべきでない。本来、自粛すべきだと考えております」

本土復帰以降、初めてとなる与那国への軍艦の寄港に強まる反発。

県議「今まで(米軍に)使われていなかった港も含めて、全島基地化ではないのかと」

また、石垣でも・・・。

八重山地区労「観光面でこういったこと(米軍艦の寄港)があると、非常にマイナスになるんではないか」

しかし掃海艦は与那国島にやってきた。

岸本記者「市民団体や労働組合が反対する中、今、アメリカ海軍の掃海艦が祖納港に入ってきました」

沖縄本島や石垣から来た平和団体や教職員組合のメンバーの猛烈な抗議。しかし、与那国島では、島民が港のそばに設置した入港反対と賛成の2つの横断幕が象徴するように、初めての軍艦の入港に対して意見が割れていました。

反対町民「自分の仕事のことが一番心配。今まで行ってた(漁場の)ポイントにいけなくなるっていうのも出てくるか分からないし、一番きついよ。それは」

賛成町民「来ても僕は賛成だね。戦争が起きる訳でもないし。今の世の中、過去のあれまで引きずっていたら生きられないよ」

デモス艦長「乗組員は島の人達との交流を非常に楽しみにしている」

表向きには島の人たちとの友好親善と乗組員の休養が目的とするアメリカ海軍。しかし、メア総領事は、台湾有事などを睨んだ情報収集も兼ねていることを認めます。

メア総領事「もちろん、しばらく入っていない港に入る時、間接的に情報が入る。それは常識だと思いますよ」

3日前に与那国に入った兵士が港の水深や飲食店などを調査したのを含め、今回の寄港で港湾施設の状況、また道路や医療機関の位置まで調べた海軍。

一方、与那国町の外間町長は先月、町が全国の自治体としては初めて台湾に事務所を設置したこともあり、今回の寄港が台湾を刺激することを危惧しています。

与那国町・外間町長「そこに(与那国の)事務所を開設したという経緯もございます。隣(台湾)をできるだけ刺激をして欲しくない。今の友好関係に水を差すようなことはやめてもらいたいというのが大方、町民の意見だと思います」

台湾との独自の交流を続けてきた与那国町は、これまでチャーター船の自由な往来を政府に求め続けてきましたが、港の整備が不十分なことなどを理由に拒否され実現していません。

しかし、今回、僅か3週間前の通知で、アメリカ軍の軍艦が日米地位協定に基づいて入港したことに「二重基準」ではないかと反発しています。

軍艦が停泊する港の前にあるナンタ浜でゴミ拾いのボランティアをした兵士達。また、船内に島の人達を招いて見学ツアーも行われましたが、参加者は1700人の島民がいる中で数十人に留まりました。

台湾や中国の出方をテストすると同時に、島民の反応を調査する目的もあったと見られる今回の寄港。アメリカ海軍は、与那国島に関わる多くのデータを収集して、きのう朝、与那国を後にしました。

アメリカ軍はいま、アジアでの抑止力の強化に重点を置いていて、とりわけ台湾の動きを注視し、先月は石垣港に入港しようとして大浜市長に拒否されたという経緯があります。

今回の入港で与那国の住民や県民の反発はどのくらいあるのか、また台湾の反応もアメリカ軍は見ていると思いますが、結局、先島での展開を強化していくのは間違いなさそうです。今回の事例が風穴を開ける形になり、ずるずると軍事に利用されることのないよう、注目していく必要があります。