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提訴から8年、原告が求めた早朝と夜間の飛行差し止めは高裁でも認められませんでした。

普天間基地の爆音訴訟で福岡高裁那覇支部はヘリコプターの低周波音の被害を認め、原告が求めた1億4600万円を上回る総額3億6900万円あまりの損害賠償を命じましたが、飛行差し止めなどは認めませんでした。

裁判は2002年6月、普天間基地の周辺住民などおよそ400人が早朝夜間の飛行差し止めや損害賠償などを国に求めていました。

一審では、原告全員に対して総額1億4000万円あまりの賠償を命じたものの、飛行差し止めなどは認められず、原告と国の双方が控訴していました。

判決で、河辺義典裁判長は「航空機騒音による被害がある」とした上で「低周波音が発生しやすいヘリコプターなどが基地には常駐していて精神的苦痛がさらに増大させられている」とし、低周波騒音の被害を認定。国に総額3億6900万円あまりの損害賠償を命じました。しかし飛行差し止めと国による騒音測定については控訴を棄却、また国側の控訴をすべて棄却しました。

島田善次原告団長は「きょうの判決に対して、我々はこの爆音(訴訟)の根源である飛行差し止めをさらに求めて最高裁に上告するつもりです」と話しました。

今回の判決を受けて国は「裁判所に十分な理解が得られなかったものであり、今後の取り扱いについては判決内容を慎重に検討し、適切に対応したい」とコメントしました。

控訴審判決 その中身はー

ここからは裁判を担当した中村記者に聞きます。中村さんまず1,2審の判決でどこがどう変わったのかをまとめてください。

中村記者「普天間爆音訴訟の控訴審で原告が求めていたのは、早朝夜間の飛行差し止め、騒音測定の義務化、低周波音による被害の認定、損害賠償請求の4点になります」

中村記者「このうち早朝・夜間の飛行差し止めと騒音測定については、請求できる法的根拠がないして一審同様、訴えを棄却しました。一方、損害賠償については、一審が命じた1億4600万円を2倍以上の3億6900万円を控訴審では命じました」

なぜ、今回裁判所は高額の支払いを命じたのでしょうか?

中村記者「まず、うるささ指数80も75も日額が倍になった点です。住民に支払われる金額が『80で200円から400円』『75で100円から200円』になり、今回の認定で、全国で争われている基地爆音訴訟の賠償金の認定にもに影響をあると思います。そして、これまで認められなかったヘリコプターなどが発する『低周波音』による被害が認められたこと。今回の判決で最も注目すべき点だと思います」

中村記者「原告側が一番評価しているのは賠償額が増えたことよりも、ヘリコプターの低周波音が与えるダメージや騒音という尺度だけでは測れない我慢の限度を超えていることを認められた、つまり裁判所が普天間基地の「違法性」を示したものだと原告側は話しています」

心臓に響くどきどきする音の特殊な被害が認められたのは画期的ですか?

中村記者「画期的といえます。他の裁判にも影響はあると思います」

原告側はやはり、一番の願いである飛行差し止めを求めて上告する方針を固めているようですね。

中村記者「はい、国側、原告側の双方が上告すると見られます。普天間基地の移設問題が全国的に注目された中でのきょうの判決ですが、静かな夜を取り戻したいという住民のささやかな権利を求める戦いは最高裁の場で争われることになりそうです」