首里城の今を追いかける「復興のキセキ」きょうは現在、大阪で開催されている万博にまつわる話題です。実はある国のパビリオンに首里城に関する展示があるんです。その理由とは。
再建が進む首里城正殿。先月から建物を覆っていた素屋根の解体作業も始まり来年秋の完成へいよいよ佳境です。火災で失われた首里城の「在りし日の姿」の復活を願う人たちがいます。

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにことし4月に開幕した「関西万博」158の国や地域と7つの国際機関が参加し、世界中の最新技術やアイディアを集め、音楽や伝統芸能などエンターテイメントと学びにあふれた国際イベントです。
そのなかで、カーテンのようなベールに覆われ、風に揺れる劇場のような雰囲気を醸し出しているのがフランスのパビリオン。
フランスパビリオン ジャック・メール総監督「フランスパビリオンとしては全く違う視点から世界に発信したい、若い人たちにしっかりメッセージを届けたい気持ちから『愛』をテーマと考えました」

こう話すのは、パビリオンの最高責任者、ジャック・メールさんです。
「愛」をテーマにしたパビリオンには、ジブリのタペストリーやギリシャ神話のキメラ像、85個のトランクにルイ・ヴィトンの職人が作業している様子や、ディオールの3Dプリント衣装など、五感で楽しめる空間になっています。
そんな空間のなかに、異様に光を放つエリアがありました。
ジャック・メール総監督「首里城を展示している箇所は再生の島という名前なんですね」

「再生の島」と名づけられたエリアです。125万個LEDを使い、フランスのノートルダム大聖堂と首里城正殿のオブジェ。2つのシンボルは様々な演出のもと「復興の過程」を描いています。
ジャック・メール総監督「火災という出来事があったからこそ住民たちが、もっとそこに心を寄せた面でも同じ共通点があります」
2019年4月、パリにある世界遺産・ノートルダム大聖堂で大規模な火災が発生。尖塔や屋根の一部が崩落するなど甚大な被害を受けます。その半年後、今度は首里城が大火に見舞われました。
ジャック・メール総監督「ノートルダム大聖堂と首里所が一緒のストーリーを持っている、同じ時期に火災が起きてしまったが、節目を超えて2つの世界遺産がもっと有名になったという面でも一緒ですよね」「衝撃なドラマをフランスパビリオンでちゃんと前に出そう、2つの世界遺産をちゃんと前に出そうという思いで考えました」

首里城火災では、いち早く激励の手紙が那覇市に届きます。手紙の送り主はフランス消防局で、同じ境遇の隊員を労う手紙でした。
手紙には「首里城正殿が崩れ落ちたことを受け、私たちは深く悲しんでおります」と見舞いの言葉が贈られました。「消防隊員は多大な勇気と献身的な姿勢を見せてくれました」と激励しています。
火災で甚大な被害を受けた2つのシンボル。
再生の島では、共に焼失し辛うじて残った鬼瓦と彫刻物が展示されています。
ジャック・メール総監督「LEDのショーの中で2つの世界遺産が燃えるという演出をしていて」「その光がどんどん出てくる演出に、人々がこの世界遺産をもっと守りたいという気持ちを表しています」「そして小さな光が手に変わり、その手で復興していこうというメッセージが込められ、その手を使って世界遺産が出来上がる時に初めてスピリッツが生まれ、龍が2つの絆を演出している」
そして、もう一つ。今回の再建に欠かせない「あるもの」が、フランスとの深い関りを示しています。

技術検討委員会 高良倉吉委員長「首里城を捉えた一番古い写真、最古の写真がこれです、情報が詰まっている。それをこの復元にいかしたい」
「令和の復元作業」で、技術検討委員会が活用すると発表したこの写真。これは、1877年にフランス海軍のルヴェルテガ少尉が撮影したもので、首里城正殿の全景が映し出された最も古いものとされています。
その写真を基に正殿正面に取り付けられる「向拝奥の彫刻物の獅子」が平成の復元より1.3倍大きくなり、獅子の顔も上向きになりました。そして「牡丹に獅子・唐草」では、牡丹が1つから3つに変更し、獅子は1つ追加されました。
先人が残した写真をメールさんは日本との繋がりが始まっていたことを誇りに思うと話しています。
ジャック・メール総監督「写真がコレクションされていたのは私も知っていて、首里城の火災はノート ルダム大聖堂の火災よりも酷かった。フランス人の先人たちがプロフェッショナルなクオリティの良い写真を撮ってくれたことは凄く誇りに思っていますし、そこから日本とフランスの繋がりが始まっていたことに対しても誇りに思っています」

鬼瓦の展示でつながった縁をメールさんは、2つのシンボルの完成の時は一緒に祝いたいと提案しています。
ジャック・メール総監督「万博は10月に終わってしまうが、ノートルダム大聖堂のイベントを企画している、大聖堂のトップの方たちが来るんですけども、完全に復元してオープン出来ることを一緒にお祝いしないかと提案してみます」
火災を乗り越え、再び輝きを取り戻す2つの世界遺産。その再生の歩みは希望の光です。
取材したフランス館では、どこにいてもスマホ一つでパビリオンが楽しめる映像を公開しています。それがこちらです。
リアルで、その場にいるかのようですね!
360度自分の目線で細部まで展示を楽しめます。担当者は沖縄の人たちにも見てほしいと話していたそうです。首里城正殿の完成は来年秋、ノートルダム大聖堂の完成は来年の末ということです。