戦後80年の節目に戦争について考えるシリーズ「たどる記憶・つなぐ平和」です。
「白梅学徒隊」として沖縄戦に動員され、戦後「語り部」として自らの戦争体験を語り継いできた中山きくさん。一昨年、94歳で亡くなるまで語った反戦への思いを受け継ごうと、来月、舞台で上演する取り組みが進んでいます。
「29年引き継がれる平和へのバトン 2015.10.27」
中山きくさん「沖縄戦を体験して人間にとって、日本だけじゃありません。世界中の人間にとって一番やってはいけないのは戦争だと思っています」
「戦後70年(県民大会)2015.05.19」
中山きくさん「私は沖縄戦で22人の白梅学徒、仲間を失いました。「命どぅ宝」です、平和が一番です。行動しなければ現状を黙認したことになります」

元白梅学徒隊で、戦後、悲惨な戦争体験を語り続けた中山きくさん。おととし、94歳で亡くなりました。
島袋寛之さん「はい、お願いします!」娘「は~?お嬢様が聞いてあきれる、あの時師範学校の生徒に手紙書いたの忘れた~?」きく「何それ?手紙?嘘!?」
きくさんの半生を描く舞台を企画したのは「TEAM SPOT JUMBLE(チーム・スポット・ジャンブル)」。きくさんの甥、津波信一(つは・しんいち)さんが主宰する劇団で慰霊の日直前に上演を予定しています。
タイトルは「星見草(ほしみぐさ)」。菊(きく)の別名で中山きくさんのことを現しています。

津波信一さん「しょっちゅう涙出そうになるんですよ、おばさんの一言だったり演じている人たちのなかに伯母さんを感じたりして、いつもハッとするし、本番大丈夫かなと思いながら」「あちら側から(きくさんが)喜んでくれたらなという思いだけですね。行動するのよという」
「沖縄戦とこころ 2018.01.15」
中山きくさん「思っただけでは物事は変わりません、また口癖です。平和に逆行するようなことが起こったらそれを止めるために行動しなさい」
生前のきくさんが何度も繰り返し語った言葉です。
演出・島袋寛之さん「きくさんが残してくれた『思っているだけでは平和は来ない。行動する』という言葉をきいた時に、そうだなと最近思いだして国際情勢が今難しいところになっていて」

演出の島袋さんはこれまで、戦争の悲惨さが辛く避けていてきちんと向き合ってこなかったと言います。でも戦後80年を迎え、戦時下を生きた人々がいなくなるなか座長の津波さんと話し合って演劇という形で取り組むことにしました。
島袋寛之さん「『平和にするために、みんなどうして行動していくのか』というのを一緒に考えるきっかけになればなと思っています」
舞台・稽古 きく「実はさ、語り部っていうの?白梅学徒看護隊の体験から戦争の話を今の子どもたちにして欲しいって頼まれていてさ」信一「えっ!それ俺も聞きたい」きく「でも断ったよ」信一「何で?」
物語の舞台は終戦から50年経った頃。多くの学友を失い自分は生き残ってしまった罪悪感を抱え、重く口を閉ざしていたきくさんが語り部として活動することを決意するまでを描きます。
舞台・稽古 きく「トロンボーン吹いていた、師範学校の!みんな、佐野しゅうじ!!」(音楽 歌 真白き富士の気高さを)
きくさんを訪ねてきた友人たちと歌い、笑って、戦時下でも青春の日々を懸命に生きた少女たちの姿が描かれます。
舞台・稽古 島袋寛之さん「ナツコさんどうですかナツコさん!あっ、いや、でも、何か・・・」
きくさん役を演じるナツコさん。生前のきくさんと会ったことはありませんでした。

ナツコさん「きくさんを知っている人が多くいるなかで、私がそのきくさんをしっかりと演じることが出来るのかなというプレッシャーがあった」「いろいろな人から話を聞いたきくさんて、きっとこういうことをするだろうな、こういう言い方をするだろうな、というのが徐々に固まってきているところ」「稽古を積み重ねるうえで、よりもっと、きくさんという人物像がカチッとはまる時が来るんじゃないかと信じてやっています」
津波信一さん「語れるとは思っていない、知ったかぶりしている。でもそこから何かを知りたい、読み取っていくしかない。もうこの世にいないので」
島袋寛之さん「台本を丁寧に表現できるように作っていこうと思っています。それでお客さんが気づくことがあったら嬉しい」
ナツコさん「本当に戦争って、勿論その痛みをわかるわけではないけど、役を通してこんなにも苦しいものだったんだなっていうことを、今、感じていて、是非この作品を見てくれるみなさんも、なかなか会えない友人、家族、そういった大切な人のことを思い出して欲しい。ありがとう、愛してる、好きだよ、そういったことをたくさん伝えていきたいので皆さんにもそういうことに気づける作品になっているんじゃないかと思うので。届けばいいなって思っています」
「青春を語る会が活動を終了 2016.03.29」より 中山きくさん「一番大事なことは命どぅ宝 平和が一番」

「戦後70年 2015.05.19」より 中山きくさん「絶対に戦争反対」をこれからも続けていきます
「きくさんが遺した『反戦への思い』このバトンは今、私たちに託されています」
「星見草」は6月21日と22日の2日間、那覇市の「文化芸術劇場 なはーと」で公演を行います。チケットはまだあるそうなので興味のある人はぜひ。小さなお子さんを預ける「託児サービス」もあるそうです詳しくは検索してみて下さい。
TEAM SPOT JUMBLE 戦後80年企画 演劇『星見草(ホシミグサ)』