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山城アナ「琉球の貴重な動植物を紹介する『リュウキュウの自然』です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。今年も宜しくお願いします」

湊和雄さん「よろしくお願いします」

山城アナ「今年最初に紹介するのはやんばるのネズミのおはなしです」

湊和雄さん「はい。今年は辰年ですが『ケナガネズミの不思議』を紹介します。4年前だったらぴったりの話題なんですが、貴重な映像を撮ってきました」

山城アナ「わたし干支が『子』なので、大好きです!」

湊和雄さん「そうなんですね。やんばるの天然記念物16種のうち2種類はネズミなんです。そのひとつが今回紹介するケナガネズミ。日本最大の野生のネズミで、大きさは子猫か子犬ほどもあります。ネズミって言うと気持ち悪いと思われるかもしれませんが、なかなか可愛いですよ。その可愛くて貴重な『ケナガネズミ』ご覧いただきましょう」

リュウキュウの自然「ケナガネズミの不思議」

湊和雄さん「年末のある晩2時間ほど林道を走っていたら、4匹のケナガネズミに遭遇しました」

山城アナ「4匹もですか。何か食べてますね?」

湊和雄さん「はい。そのうち3匹は、この赤い実のなっているイイギリの木でした。ケナガネズミは昆虫やミミズなども食べることもある雑食性ですが、主食は季節季節の木の実なんですね。このように、細い枝でも後ろ足(後肢)だけで立ち上がり、前足(前肢)を手の様に使って実を食べます。このようなとき、長い尾でバランスをとっているんですよ。まるでリスのようですね」

湊和雄さん「これはまた別のイイギリの木なのですが、揺れている枝のところにいるんですが、残念ながら姿は幹の陰で撮影できませんでした。しかし、鳴き声だけは盛んに発していました」

ケナガネズミの鳴き声「ギャーギャーキーキー」

山城アナ「チューチューって鳴かないんですね。4匹同時に出会うのも珍しいのですか?」

湊和雄さん「2時間あまりで4匹というのは、とんでもない数なのです。去年1年間の合計でも17匹でしたから」

リュウキュウの自然「ケナガネズミの不思議」

山城アナ「この赤い実はとてもおいしそうに見えますし、好きなんですかね?」

湊和雄さん「実は4匹のうち3匹がいたイイギリの木。秋から冬に、このようにたくさんの実を着けます。ところが、鳥をはじめ動物には全く人気がなく、好まれないのです。ケナガネズミがイイギリの実を食べているのも、今回初めて見たのです」

山城アナ「ケナガネズミは普段どのような木の実を食べているのですか?」

湊和雄さん「これは夏になるハゼノキの実です。

山城アナ「食欲旺盛ですね」

湊和雄さん「そしてこちらは春の終わりから初夏に実を着けるアカメガシワの実です。そしてこちらは、やんばるの森で一番多い木イタジイ(オキナワジイ)の実」

山城アナ「全部どんぐりっぽいですね」

湊和雄さん「ここ3年ほど豊作だったのですが、今年は去年8月の台風6号の影響でしょう。ほとんど実がありません。それが、普段は食べないイイギリの実を食べている理由のひとつでしょう」

山城アナ「台風の影響がやんばるの動植物にも影響が出たんですね」

湊和雄さん「そしてリュウキュウマツの松ぼっくりもよく食べます。芯だけを残し、これをエビフライと呼んだりします。他のネズミもする行動です」

湊和雄さん「リュウキュウマツの松ぼっくりは、樹の上で食べることもありますが、地上に落ちているのを食べることもあります。これはスダジイも同じです。実は、このときに車に轢かれてしまうロードキルが発生し易いのです」

リュウキュウの自然「ケナガネズミの不思議」

山城アナ「近年は増えてきているのでしょうか?」

湊和雄さん「昨年、ロードキルで死亡したケナガネズミは43件(12月21日時点)。さらにこの後少なくとも2件増えています。これはヤンバルクイナよりも多い数なのです」

山城アナ「ケナガネズミに限らずヤンバルクイナのロードキルなども、一人一人の心がけで防げることですので、やんばる路をゆっくり余裕を持って走りたいですね」

湊和雄さん「ケナガネズミは1981年から2005年の25年間には5匹にしか遭遇しませんでした。ところが2007年から2010年には急増し、一晩に6匹に遭遇したこともありました。その後また減少し、年間3〜4頭というレベルが続きましたが、2021年からまた増え始めています。しかし、スダジイの不作でイイギリを食べている状況。これから再び減少に転じるのか興味があります」

山城アナ「今回も貴重な映像ありがとうございました。リュウキュウの自然でした」