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辺野古新基地建設をめぐる県と国の法廷闘争について、これまでの経緯を振り返ります。

河野防衛大臣「本日、公有水面埋立変更承認申請書を沖縄県に提出したとの報告を受けました」

3年前の4月、沖縄防衛局は大浦湾に広がる軟弱地盤の改良工事を行うため、海底におよそ7万本もの砂杭を打ち込む計画を盛り込んだ”設計変更”を県に申請しました。

【年録】基地問題2023「代執行」めぐる経緯

玉城知事「本日不承認とする処分を行いました」

しかしその翌年、玉城知事は「必要な地点の調査が不十分」などといった理由から、不承認とする判断を下します。

国は対抗措置としてこの不承認処分を取り消す”裁決”を行い、さらに設計変更を承認するよう”是正指示”を出しました。

斉藤国交大臣「沖縄県の判断は違法かつ不当であると判断し、不承認処分を取り消すとの裁決を行いました」

県は国が行った「裁決」と「是正指示」に対して違法な関与だとして訴えを起こします。そして始まった二つの訴訟。「裁決」をめぐる裁判では、国の違法な関与にあたらず「裁決」は有効だとして、県の訴えは却下となり、「是正指示」をめぐる裁判では、是正時は適法であるとして訴えは棄却されてしまいました。 

県側の弁護団 加藤裕弁護士「今回の判断については、極めて残念としか言いようがない」

県は二つの裁判の結果を不服として最高裁へ上告を申し立てます。

しかし、”裁決”をめぐる訴訟においては最高裁が上告を受理せず、県の敗訴が確定。

残る”是正指示”をめぐる裁判でも県は敗訴し、設計変更を承認する義務を負うこととなりました

名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前では、変わることなく基地建設に抗議する人の姿が。

抗議する人「県民の民意は25年以上も新基地はいらないと示されている。民意を体現するために、憲法に基づいて表現の自由としてゲート前での座り込みは継続していきたい」

県民集会シュプレヒコール「最高裁は県民の声を聞け」

【年録】基地問題2023「代執行」めぐる経緯

県民「絶対に(判決は)認められない。(知事の)バックには沖縄県民がいるんだという県民投票で勝ったんだということで頑張ってもらいたい」

一方、国は最高裁の判決を受け、設計変更を承認するよう県に指示を出し、基地建設の強行を図ります。承認を迫られる知事。その判断に注目が集まりましたが・・・。

玉城知事 「現段階では、承認とも不承認とも確定できないということで、判断できませんでしたという回答を(国に)した」

玉城知事は、事実上不承認とする決断を下します。

斉藤鉄夫国交大臣 「沖縄県知事が期限までに承認を行わなかったことは遺憾であります」

国はすぐさま県に代わって設計変更を承認する代執行を進めるための裁判を提起。

普天間基地を抱える宜野湾市と工事が進む名護市の市長らも県と国の争いを注視しています。

渡具知名護市長「まずは裁判の推移を注視していくということでございます」

松川宜野湾市長「実際に工事が進んでいけば、現在埋め立てをしている辺野古側の活用も何らかの形でできるのではないかと」

そうした中、始まった注目の代執行訴訟。第一回口頭弁論では玉城知事が法廷に立ち、その思いを訴えましたが、、、即日結審となりました。

沼尻和樹「今トラックから土砂が落とされました。多くの県民の反対の声をよそになんのためらいもないかのように土砂が落とされていきます。辺野古新基地建設に向けた埋め立て工事が始まりました」

辺野古の海に初めて土砂が投入されたあの日から5年が経ち、国は辺野古側の埋め立てに必要な土量約319万m3のうち、99%を投入済みとしています。

きょうの判決を受けて今後、辺野古新基地建設は新たな局面を迎えることになります。

【年録】基地問題2023「代執行」めぐる経緯

ここからは裁判を傍聴した塚崎記者です。今回、代執行訴訟では知事に、軟弱地盤を固める工事について、裁判所が国の申請を承認するよう、県に命令を出しました。裁判所の雰囲気は、どんな様子だったのでしょうか。

塚崎記者:
はい。裁判自体は5分程度で終わりました。裁判長が判決を読み上げた際には、法廷内に傍聴人から「不当判決だ」などの声も響きました。

裁判長は国の代執行を認めつつも、最後に「歴史的経緯を踏まえれば県民の心情も十分理解できる」と、語っていました。

基地問題解決の上での行政・司法の欠陥を司法自ら告白したかのような印象を受けましたが、そうであるならば、これまで国があらゆる手段を使って県の手法を無効化し、基地建設を強行してきた是非も、踏み込んで判断してほしかったと思います。

中村アナ:
県の敗訴となるわけですが、今後、辺野古問題はどのように動くのでしょうか。

塚崎記者:
裁判所が出した命令では、3日以内に工事を承認するよう求めています。知事が期日までに承認しない場合、国が代わりに承認する代執行ができるので、国は知事の判断に関わらず工事に着手できることになります。

また、国側は早ければ年内にも工事に着手する構えで、沖縄防衛局はすでに、工事の業者を入札で選定しています。国が裁判所の命令の期限終了後に、即座に代執行に移った場合、今月末にも、着手することが想定されます。

ただ、工事は、7万本の杭を海底に打ち込むという大規模なもので、基地の完成は2030年代後半以降になるとみられます。その間、普天間基地はずっと存在し続けることになります。

中村アナ:
今回の判決、辺野古問題での大きな分岐点となりましたが、改めて、どのような意味があるのでしょうか。

塚崎記者:
はい。今回の判決で事実上、国は軟弱地盤を固める工事を行えるようになったわけですが、新基地建設の問題点が今回の判決で消えてなくなったわけでは決してありません。

今お伝えした工期が長期間にわたるという問題以外にも、膨らみ続ける工費や環境破壊など、問題は山積みです。

加えて、先月には、アメリカ軍の幹部自身が滑走路の長さや地形などに言及して「軍事だけで考えると、普天間基地の方がよい」などの認識を示し、日本政府が火消しに追われるという展開もありました。

そうした問題点は何度も県や県民、メディアなどが指摘し続けてきたわけですが、国は普天間基地の危険除去の方策として「辺野古が唯一」と言い続け、立ち止まることなく工事を強行しています。

それに対する、県民の側は政府の進めることに何度も立ち止まって、県民の視点で検証し、間違っていることは間違っているといい続けるしかないと思います。

中村アナ:
私たちQABも、辺野古新基地建設問題については、引き続き取材し続けます。ここまでは塚崎記者でした。