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今を生きる私たちが、50年、100年先の未来について考えるシリーズ「IMAGINEおきなわ」です。

きょうは、安全に食べられることが出来るのに賞味期限が近いなど様々な理由から廃棄処分されてしまう食品を引き取って必要とする人たちに届ける「フードバンク」がテーマです。

県内では2007年に一人の主婦から始まったこの活動ですが、ここ数年でとりまく環境が大きく変わったことで、立ち上げから20年を前に今、岐路に立たされていました。

フードバンクセカンドハーベスト沖縄・奥平智子(おくひら・さとこ)さん「これまで何度もそういうタイミングはありましたし、食品が足りないけどでも何とかしのいで…」

私たちの生活にかかせない「食」。食べることに困っている人を支援している活動にある決断が迫られていました。

奥平智子さん「今が本当に一番というか…食の支援、フードバンクの存在が一番大事な時期になってきていると思います」

豊見城市にある「フードバンクセカンドハーベスト沖縄」。食品の製造や販売を行う企業などから食品などを「集めて」福祉施設や生活困窮者を支援する団体などに配っています。

この日、事務所には東京の団体から送られてきたカレーや米などの食品が運び込まれました。コンテナに積まれての大型の寄付はおよそ5カ月ぶりです。

IMAGINEおきなわvol.44「フードバンクの危機 続けるための決断」

県就職・生活支援PS南部永吉哲三(ながよし・てつぞう)さん「私共の窓口にも『きょう食べるものがありません』と突然飛び込む方もいらっしゃいますので、そういう面では常にストックを確保しておかないと(厳しい)」

永吉哲三さん「フードバンクさんのおかげで本当に助かっていますので、これがないと私たちの支援としてもなかなかつながらないというのがあります」

支援団体の頼みの綱となっているこの活動の原点、それは、食品廃棄の問題に衝撃を受けたある主婦の「もったいない精神」でした。

奥平さん「お家家族何人いる?」女の子「4人」奥平さん「これが4つ分捨てられてるわけ毎日。もったいないから、お家のご飯とか給食は全部食べてよ」

代表の奥平智子さん。はじめはたった一人自宅で始めた活動も、次第に協力したいと集まる仲間や賛同する企業も増えました。

IMAGINEおきなわvol.44「フードバンクの危機 続けるための決断」

しかし、立ち上げから17年目を迎えた先月、ある決断を下すことになりました。

奥平智子さん「希望者に対しての集められる食品の量っていうのが、どんどん減ってきてる状況もあって、10月からは一旦、個人に対しての配布をちょっと今、止めざるを得ない」

支援窓口を通して行っていた個人世帯への提供を止めることになりました。その理由は、止まらない依頼者の増加です。

コロナ禍や物価高の影響で生活が困窮し、支援を求める世帯が急増。2019年には1週間の平均で30人ほどだった依頼が、先月末にはおよそ750人にまで膨れ上がりました。

IMAGINEおきなわvol.44「フードバンクの危機 続けるための決断」

奥平智子さん「ある食品がみるみるなくなっていって、入る予定はない、でも依頼はどんどん増えていく。もっと応えるためにも今一旦止めて、(フードバンクを)辞めるわけではなくて、私たちの基盤強化というか、食品を集めることに専念しながら」

個人の依頼に「応える」のではなく、今ある分の食品を困窮世帯などを支援する団体に「託す」という形で続けることにしたのです。

宮城ヶ原児童センター・池原千佳子(いけはら・ちかこ)館長「ほとんど財源もなく、食材もなくという状況だったので、月の8割ぐらいはセカンドハーベストさんからの食材で本当に助けていただきました」

IMAGINEおきなわvol.44「フードバンクの危機 続けるための決断」

浦添市にある子ども食堂は8年間フードバンクから寄付を受けています。この日も揚げ茄子や鶏のから揚げ、ブロッコリーなどのフードバンクから無償で贈られた食材を使って調理が進められていました。

厨房で腕を振るうのは、調理の専門学校で講師を務める小菅さん。子ども食堂での料理提供を週2回ボランティアで行っています。

琉球調理製菓専門学校講師・小菅一裕(こすが・いちゆう)さん「沖縄に来て3年近くになるんですけれども、こちら(沖縄)の方に非常に親切にして頂いて、色々な仕事や学校も行かせていただきましたし、その恩返しというか…そんな意味合いもあります」

IMAGINEおきなわvol.44「フードバンクの危機 続けるための決断」

この日もセンターには食事をうれしそうに受け取り、口いっぱいにほおばる子どもたちの姿がありました。

利用者の女の子「めっちゃおいしいです」Q.何が美味しい?「一番から揚げが美味しかったです!」

利用者の男の子「美味しい!」Q.好きな食べ物はなに?「肉!!」

利用者の女の子「こんな豪華なご飯食べたことないかも。子ども食堂ではいっぱい出てくるから、いっぱいうれしい!」

様々な人たちの思いに支えられているのは子どもたちだけではありません。

保護者の男性「毎月利用させていただいています。自宅ではこの品数は出せないので本当に助かりますね」

保護者の女性「もっと広まったらいいと思います。届いていないところとか。子どもたちの食事を減らすことは出来ないし、こういった支援があることは助かるというのはありますね」

利用者の男の子「ごちそうさまでした。おいしかったです」

利用者の女の子「美味しかったです。ありがとうございました。ごちそうさまでした!」

食の支援を必要としている人が増えるなかで「フードバンク」としてどのように届けていくのか。模索を続けています。

沖縄奥平智子さん「やっぱり食品を求めている方がいるっていうことは間違いなく社会の仕組みとして残すべきだという風に思っています。どういう風に(行動)したらいいのかとか、そこまで手が回らないとか、様々な課題があると思うんですが、せっかく作った食品ですので、それを私たちの方で必要な方に届けるという役割をきちんと担っていきますので、そのような協力もぜひお願いしたい」

IMAGINEおきなわvol.44「フードバンクの危機 続けるための決断」

コロナ禍や物価高で困窮世帯が増えたことで、「食の支援」を求めている人たちへ従来のようなサポートが行き届かない現状があります。

企業の中にはフードドライブに取り組み活動を支援する動きがありますが、私たちも寄付を行うことで「フードバンク」を支えることができます。

今回紹介したセカンドハーベスト沖縄では「未開封で1カ月ほど、賞味期限が残っていること」「常温で保存が可能なこと」など、必要事項を満たした食品の寄付を受け付けています。

寄付したい場合には、電話などで事前に連絡をしてほしいということです。

来週23日(木)は「フードバンクの日」です。この機会に「食の支援」について、ぜひ考えてみてはいかがでしょうか。

IMAGINEおきなわvol.44「フードバンクの危機 続けるための決断」