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人命救助を担う消防士がひき逃げで男性を死なせてしまうという今回の事件は、被害者の男性が「路上に寝ていた」ことが新たにわかりました。

加害者と被害者、双方にとって不幸でしかない「路上寝の事故」を起こさないためにも、現場の状況を独自に検証しながら暗い夜道を走行する時の注意点について考えます。

現場は国頭村安田、やんばるの森を通る県道70号です。発生から2週間。現場に痕跡はなく、道路わきに手向けられた花だけが痛ましい事件があったことを伝えていました。

6月24日に起きた消防士長が29歳男性をひき逃げした事件を整理します。午後9時48分ごろに発生しました。30分後に通報を受けた消防が出動します。現場に到着した時は発生から1時間たっていて、必死の心肺蘇生のかいもなく男性の死亡が確認されました。

ひき逃げ死亡事故から考える 夜道を車で走る時に注意すべきこと

捜査関係者などによりますと、消防士長は地元の消防団員とともに現場に向かい、救命活動にあたっていたことが分かっています。

被害者男性は県外から来ていた人で、当日は半袖の黒いシャツと黒い長ズボンを身に着けていました。道路に寝ていてひき逃げにあったということです。車のスピードは時速およそ50kmでした。

取材を続けてきたQABでは、消防士長を知る人や、事件の4時間程前に被害者らしき人物を目撃した人に話を聞くことができました。

消防士長を知る人「(事件を聞いて)ショックでした。ただ(事故は)誰にでも起こりえる事なので私もあすは我が身として気を付けるばかりです」

消防士長を知る人「心肺蘇生法を対応しているということは、(ひいたことに)気づいていなかったという方がシンプルに受け止めやすい、それは良くないことではあります、ただそういう風な印象も受けたりはします」

目撃者「安田から上に上がっていって坂道を下ったところくらいに、道路のど真ん中で寝ている男性がいたんですよ。同じ道路を通るかなと思ったんですよ、(知り合いの)船長さんの方に連絡を入れて、危ない人がいるんで気を付けてくださいということは言いました」

発生時間の現場がどんな状況なのか。夜を待ってみると…

ひき逃げ死亡事故から考える 夜道を車で走る時に注意すべきこと

濱元晋一郎記者「周りには道路を照らす街頭などはなく、照明機材を消すと真っ暗になり、道幅など道路の状況を確認することは難しくなります」

決して広くはない片側1車線の道で月明りだけが頼りとなっていました。野生動物のロードキルが多発するエリアでもあるといいます。

濱元晋一郎記者「現場は上り坂や下り坂、カーブも多く、また奥は見えずらくなっているため、夜の運転は注意が必要なように感じます」

速度を変えて同じ道を走ってみて、ドライバーからの見え方に違いが出るのか検証しました。路面の表示を比べると一目瞭然です。時速40キロで走るとすぐに過ぎたのに対して、時速20キの時は表示を見る時間を長く確保できました。夜道ではわずか20キロでも見え方に大きな違いがあります。

ロードサービスで交通安全をサポートするJAFのスタッフに映像を見てもらいました。

JAF沖縄支店・平良克哉さん「こちらは40キロの速度の映像ということで、かなり速度も上がってきて、横がこう、動いている風景も確認しずらい状況ですね」

JAF沖縄支部・平良克哉さん「スピードが速いと、(運転席から見えているのが)ものか人かという認識自体難しくなってきますので、特にそれが夜間だとしたら見えずらいという状況も重なってきます」

視界が悪い道を安全に走るには時速30キロほどに保ち、カーブに差し掛かった時にはスピードを緩めることが大切です。暗い場所を歩く人は服装にも注意が必要です。黒いジャケットを着た記者道路沿いに立ってみました。

JAF沖縄支部・平良克哉さん「(今ちょうど、)人が、左側にお二人立っていましたが、この映像からも見てわかる通り、特に黒っぽい服の方は全く見えていないですね。夜間、特に歩行者であれば、黒っぽい服とかは、(今の映像で分かる通り、全くわからない、)ほかのこの暗闇に紛れてしまって認識できなくなってしまう」

ひき逃げ死亡事故から考える 夜道を車で走る時に注意すべきこと

JAFが行った服の色を変えて見え方の違いを調べた実験では、黒以外にも青や紫、日中鮮やかに見える黄色や赤も夜だとドライバーの認識が遅れることが分かっています。白い服を着たり、反射材をつけたりすることで身を守ることにつながります。

JAF沖縄支部・平良克哉さん「人が横になっていると思って運転していないのがほとんどなので、横になっていた人が人かなという認識の判断が遅れると思います。ライトの見え方、ハイビームを認識して照らす範囲を広げて見えないものを見えるようにするという行動が重要になっています。あとは予測ですね、(人が)いないだろうということではなくて、いるかもしれないということを認識して予測運転をしてほしいと思います」

ひき逃げの加害者にならないためにも、運転中感じた違和感をそのままにしてはいけません。

JAF沖縄支部・平良克哉さん「山道だったりとかでは何が出てくるかわかりませんので、予測をした運転というのと自信過剰にならない、自分の運転を過信しないで何か当たったなという認識があれば、ただちに車をとめて何にぶつかったのか確認をしていただきたいです。もちろんそれがひとであれば救護措置をして救急車を呼ぶ措置をとってください」

私たちドライバーは、一瞬の判断の誤りで被害者にも加害者にもなってしまうことを肝に命じて、ハンドルを握らないといけません。