昨年10月にオープンした那覇文化芸術劇場「なはーと」。そのこけら落とし公演として行われたのがバレエ「御佩劍(みはかし)」です。バレエ・アーティスト緑間玲貴さんによる華麗で深遠な美の世界を、人々は待ち望み、堪能しました。

美しく幻想的なバレエの世界。県を代表するバレエ・アーティスト、緑間玲貴さんによる「トコイリヤ」。「トコイリヤ」は緑間さんが考案・プロデュースするバレエの公演企画で「やりたいこと」から「ためらい」の「た」を抜いて逆さに読んだもの。

特筆すべきは、その哲学。

緑間玲貴さん「自分たちが携わっている芸術とか舞台芸術とか、そういうものがお客様にとってどういう意味合いで、なぜ切符を買っていただけるのかっていうことを我々が非常に哲学してないと伝わらないっていう現実がある」

2015年の初回公演から回を重ねて人気を博しています。今回は、その第8弾です。

御佩劍(みはかし)~バレエを哲学する「トコイリヤ」の世界~

緑間さんが今回、新作として取り組んだのは「ヤマトタケル」の世界を表現した「御佩劍(みはかし)」。「御佩劍(みはかし)」は(古事記の登場人物である)ヤマトタケルが持っていた剣のことです。物語のテーマは「分断と調和」。

ヤマトタケルの冒険は愛と戦い、創造と破壊に彩られながらドラマチックに展開してゆきます。ひとりの人間であるヤマトタケルが自然と対峙し、火や水と戦いって征服してゆきますが、最後に山の化身と戦って滅ぼされるのです。

緑間さん「人間が自然のものたちとどうやって共存していこうとしたか、驕って進んでいく愚かさとか、自然の大きさであるとか力強さ、征服しているように見えるけども実はそうではないかもしれないというようなことも作品の中に織り込んでいます」

御佩劍(みはかし)~バレエを哲学する「トコイリヤ」の世界~

今回の舞台での新たな挑戦のひとつは、作品の中に日本の古典芸能である「能」を取り入れたことです。

緑間さん「能楽というのは660年位前に日本にあって、それがずっと変わらずにあるもの。バレエは大きな跳躍、ジャンプであったりとか回ってみたりする。能楽は、その必要であると思われるすべての表現をそぎ落とした先の表現。トコイリヤの世界観と能楽がもっているそぎ落とした世界がマッチすると思った」

ヤマトタケルの叔母である「倭比売命(ヤマトヒメ)」役として参加したのが能楽師の関 直美さんです。ふだん能の舞台で「シテ方」という、主役を務める関さんは「伝統の橋がかり」という活動をしていて、様々な伝統文化の継承・発展に取り組んでいます。

御佩劍(みはかし)~バレエを哲学する「トコイリヤ」の世界~

関 直美さん「一昨年の夏、初めて実際にお目にかかって(緑間さんが)素晴らしい方だった。今回、表現者としてこの機会をいただいたのは自分の成長にもつながった。能は『舞う』という表現で『まわる』。農耕民族として土地により近い生活をしているということで、(バレエの)跳躍とまわると全く逆なので、その調和が面白かったんじゃないか」

緑間さん「何か気持ちがあって体によって伝えられる、言葉で伝える、同じことだと思う。表現の根底は同じであるわけなので、そこを目指して作品を作っている」

御佩劍(みはかし)~バレエを哲学する「トコイリヤ」の世界~

更に、音楽に琉球王朝時代に編纂された歌謡集の「おもろさうし」を取り入れました。

緑間さん「これがどういう音階でうたわれているのかを調べて、それをピアノの譜面に一生懸命変換していった。この音楽に合わせて舞台が進行していく」

このようにバレエを軸に、様々な文化を和合させて御佩劍の世界を作り上げていったのです。

緑間さん「キャラクターが沢山立ち上がっています。倭建命、その伴侶の弟橘比売、大自然、倭比売、剣とか。このキャラクターを客席でみると追体験することができる。自分もそのなかに入っていけるように作品を作っている」

観客「すごかったです。つま先で立ったりバランス取ったりしていたところ」「世界観とかすごく伝わって感動しました」「毎回見に。ずっと泣きながら見てました」「新しいのが見れたなって。面白かった」「今までのバレエとはちょっと違う独特の世界、世界観というのかちょっと衝撃でした。非日常っていうか、本当に感動しました。また次が楽しみです」

緑間さん「衣裳にも水引とか染、織という日本の文化的なものが随所に取り込まれています。踊りもバレエを軸に、能楽のスタイルや民族的な踊り、巫女舞など、日本の原始的な踊りを我々が取り込んで作品を作っているのでジャンルはない。このスタイルというスタイルはない。御佩劍だけのものが立ち上がってきた」

バレエを深く哲学し、そして華麗に演出する緑間さんの集大成ともいえる世界が大きく花開きました。

御佩劍(みはかし)~バレエを哲学する「トコイリヤ」の世界~