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きょうのテーマは基地です。新型コロナの影響で浮き彫りとなった、新たな基地負担のかたち。見えてきたのは、声をあげることで変わったアメリカ軍側の姿でした。

ことし、3月。アメリカ軍基地内で初めて新型コロナの感染が確認されました。それから4ヵ月後の7月、事態は急変します。

全駐労沖縄地区本部・與那覇栄蔵委員長「今年の6月までは、米軍基地の中での発生事例は数件しかなかったんです」

きのうまでに、アメリカ軍関係者は662人、基地従業員については38人の感染が確認されています(2020年12月21日時点)。

2020年を振り返る コロナ×基地

與那覇委員長「突然緊急アラートということで、そこの職場に向けて発令されまして、普天間飛行場の中で働いている皆さんは職場で待機をしておきなさい。ゲートを封鎖しますから。そのときは理由は示されませんでした」

突然発令された緊急アラート。そしてゲートの封鎖。なんの説明もなく、基地の中に閉じ込められてしまったのです。

騒ぎの後に判明したのは、アメリカ軍基地内でクラスターが発生したという事実でした。

與那覇委員長「瞬く間に数百名、あるいは400名と増えていったわけですが」

クラスター発生の要因は…

與那覇委員長「米軍の部隊展開プログラムというのがあり、米軍は半年ごとに異動しているわけで、それに伴って感染拡大が出てきたということが実情だと思います」

そして、さらなる事実が判明します。

與那覇委員長「異動者について(新型コロナの)症状がない人たちについてPCR検査を実施していないということがわかりました。直接、嘉手納の飛行場に入域したわけです。(日本に)感染国から来る場合にはPCR検査が義務づけられています。それが米軍はなかった」

PCR検査が事前に実施されておらず、さらに日本の検疫をすり抜けていることがわかったのです。

しかし、アメリカ軍側は「新型コロナ感染者に関する情報を報道機関に発表しない」としていました。このアメリカ軍側の姿勢に対し、玉城知事が声をあげます。

2020年を振り返る コロナ×基地

玉城知事「フェンス一枚隔てて生活している県民にとっては基地の中で何が起こっているかわからず、大変不安であることを理解してもらいたい」

玉城知事はアメリカ軍側に対し、新型コロナに関する情報開示をするよう国に要請したのです。

玉城知事「日本国の防衛大臣として国民を守る立場から、そして基地を受け入れている都道府県、市町村の立場もしっかりくみ取っていただいて、米側に言うべきことはしっかり言っていただきたい」

その結果、アメリカ軍側は「情報を開示する」という姿勢に変わったのです。

與那覇委員長「今は海軍病院であったり、空軍の中にそういう病院的な施設があるんです。そこと沖縄県、沖縄防衛局という形で情報を共有して、連携をしてやっている」

また、アメリカ軍側の感染防止策も強化されました。

2020年を振り返る コロナ×基地

與那覇委員長「7月24日からはすべての異動者、米軍関係者の隔離をしていて、解放前にPCR検査を実施するということで決めて、それを今、実施をされているわけです」

アメリカ軍基地では、現在アメリカ本国からの入国者に対して2週間の隔離とPCR検査が義務付けられています。一方で、基地従業員には、別の被害が。

2020年を振り返る コロナ×基地

與那覇委員長「『あんた基地従業員でしょう?しばらく病院に来ないでくれ』それから、学校の方ではその生徒に対して『お父さんお母さんが米軍基地で勤めているでしょう?しばらく登校を自粛してくれないか』というようなことも言われたりしまして、風評被害に悩まされました」

基地の外で、風評被害にあったというのです。

與那覇委員長によれば、きのうまでに、全駐労に所属する組合員への感染は38人確認されており、そのいずれも基地内での感染ではないことがわかっています。

そして、現在もアメリカ軍基地の中では感染防止策がなされおり、しばらくは続く見込みだということです。

與那覇委員長「公衆衛生指令は本年の12月31日まで、先ほど申し上げました措置を継続するということで指令が出されています。国内の感染状況を見ていると、今しばらくこの公衆衛生指令は続くのかなとこんなふうに思っています」

基地問題に詳しい沖縄国際大学の前泊教授は、次のように分析しています。

2020年を振り返る コロナ×基地

沖縄国際大学・前泊博盛教授「コロナについても実際今年の7月に7千人規模の移動があるということで警戒をされたんですけども、実際に指摘されたとおり感染者が出てくるという。PCR検査も事前にされていなかったということで、それから待機する移動した兵士たちが基地内で収まり切れなくて外で待機を余儀なくされる。その際に民間のホテルを使うというですね、そういう無謀なことに対して、沖縄県民が県をはじめて抗議をしたために、アメリカ側もそれに対応せざるを得なかったというのがあります」

県民が県が抗議をしたことで、アメリカ軍側が変わったのでした。

前泊教授「沖縄側の対応を見て、日本政府もPCR検査を受けさせる方向に動いてきたというのもあります。沖縄の動きが全国のPCR検査含めて、コロナ対応、米軍に対するコロナ対応を強化させたというところでは、非常に大きな役割を果たしたと思います」

ここからは取材した町記者です。

町記者「基地内の現在の状況としては、なんの説明もなく基地に閉じ込められる事態となった7月に比べると、大きく改善されたという印象を受けました。当初、アメリカ軍側は、新型コロナに関する情報を開示しないとしていましたが、その後、県民、そして県側の強い要請に応じ、情報開示を行うことになりました」

どうして、アメリカ軍側は対応を変えたのでしょうか?

町記者「これは、ほかの基地問題についても同じことが言えるのではないかと考えていますが、今回のようにしっかりと声をあげ、そして、きちんと求めるということが重要だということです」