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全国学力テスト最下位という結果になっている沖縄県。そのなかでも沖縄の特徴は「無回答が多い」ということだそうです。間違ってもいいから書いてみる。言葉にしてみるという作業がうまくできない子供が多いということなんですが「言語力」「言葉にしていく力」をいったいどう育てればいいのかヒントは「図画工作」の時間にありました。

先生たちがよりよい授業を目指して研修する場である沖縄県立総合教育センター。今年から重点的に行われている、ある図工・美術の模擬授業があります。

沖縄県立総合教育センター 前田比呂也指導主事「創造力がある子のない子がいると先生が言ってはいけないです。先生方がこの授業を通して学力として育てるべきものです。この力をつけて社会に送り出していかないといけないと思っています。」

去年から今年にかけて改定された「新学習指導要領」の主眼は「生きる力 思考力・判断力・表現力の育成」知識や技術ではなく「生きる力」をどう教室で教えるのか。先生にとっても抽象的で難しい問題です。

前田主事「この絵を見て思い浮かんでくる言葉。どうしても浮かぶという言葉をつないで題名を作ってください」

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先生たちの前に出されたのは、一枚の抽象画。作者もタイトルも示されず、先生たちは困惑の表情です。

先生「アイディアの壁なんじゃないかな、奥の壁は。そこを突破していくと、未来明るい色のにつながっていくと    いうイメージが出されているんじゃないかと」先生「真実を見抜く目と名付けました」

芸術はどう感じても間違いではない。そういわれて後半になるとわれさきにと発言が続きます。

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先生「下の黒い器のようなものはどなたかサングラスとおっしゃっていたんですが、見方によれば女性の乳房であり子宮でありという見方もできるかなと」

これは「対話式鑑賞法」といって、ニューヨーク近代美術館などで導入されているアートの鑑賞法。案内人は情報ではなく見る人に質問をしながら言葉を引き出します。その手法が今、学校現場から注目されているのです。

美術の先生「絵を見ることで自分を見つめるというところがすごく合って、この授業、うちの学校でもすごくやりたいなとー」

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体育の先生「(沖縄の子は)はじかさーっていうんですか、少しひいて、いいよって 友達に譲ってしまったりで」「どんどん積極的に発言してもいいんだと。自分を出していってもいいんだという環境作りになると思うんですよ」

こうして模擬授業を受けた先生方による「対話式鑑賞法」の実践が始まっています。

北中城小学校の4年4組。担任の知念先生は人前で話すのが苦手という子供たちと一緒に対話式鑑賞法をやってみることにしました。

知念先生「この4つの絵をグループ分けしてほしいと思います」子供たちはまず、4枚を1分間見て、分類を考えます。沖縄の風物を描いたとわかる絵もありますが、何が書かれているかすぐにはわからないものも。もちろん、作者もタイトルも伝えません。

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子供「これが沖縄の風景で:これが沖縄じゃない風景」「ここは平和だけど、あっちは戦争が終わったとこ」「終わった?始まる?」「終わった」

この寂しげな陰に、関心が集まってきました。子供「これはアメリカ軍の兵隊さんが立ってるみたいな」子供「戦争の… ぶっ壊れた・・ 兵隊で・・ 生き残った。戦争で生き残った人」

知念先生「みんな兵隊って言ってるけど、どんな仕事かな」「この人の仕事を考えてみましょう。どんな仕事をしているか、それはなぜなのか?」子供「大工さん。どこを見て?橋に見えたから。完成したけど、倒れてしまった。」「アーサ採り。これはアーサにみえる。これがアーサで、これは手に持っているかごに見える」先生「北中のアッタと言うところにあるんだよね」次に、この人の気持ちを想像してみてと問いかけました。

子供「このひとは、みんなもうかえってから、国に帰ってこの人だけ置いて行かれて悲しんでる」子供「この人はどこの国でも勝ってきたけど、街が焼けているのを見てショックを受けている」

この作品沖縄の作家・安谷屋正義の「望郷」というベトナム戦争が悪化していく1965年の作品で権力者・抑圧者とアメリカ軍を描かず、個々の兵隊を人間としてとらえなおしたことで知られる作品です。子供たちは対話を重ねながら、戦争のむなしさと故郷への思いに到達していきました。

Q自分の意見を発表するのって難しくない?女子「少し恥ずかしいとか思うけどやってみたら楽しい」男の子「算数とか国語は最初に頭に浮かんでこないけど絵は簡単に考えれるから」女子「一人で見たら自分の意見しかわからないけど、みんなで見たら自分の意見もほかの人の意見もわかるから、、みんなで見たほうがいいと思います」

知念先生「普段はなかなか発表しない子も、今日は発表していました」「正しい正しくないという判断が子供たちの中であって、間違ったらどうしようというのが一番のネックだと思っているのでそれが払しょくできれば今日みたいな感じで発表できるんじゃないかと思います」