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「集団自決」訴訟判決 日本軍元隊長の訴えを棄却

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沖縄戦で座間味島に駐屯していた元隊長らが「集団自決」を命じたとされる本の記述で名誉を傷つけられたと出版の差し止めなどを求めた裁判。大阪地裁は28日、元隊長側の訴えを棄却しました。

この裁判は沖縄戦当時、座間味島の元守備隊長らが、大江健三郎さんの著書で「集団自決を命じた」ととり上げられ、名誉を傷つけられたとして出版の差し止めなどを求めていたものです。

28日の判決で大阪地裁の深見敏正裁判長は当時、貴重な武器だった手榴弾が住民に配られていたこと。また、集団自決が起きた全ての地域に日本軍が駐屯していて、軍がいなかった近くの島では集団自決が発生していないと指摘し、「集団自決に日本軍が深く関わったものと認められる」として、原告の訴えを棄却しました。

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沖縄戦で座間味島に駐屯していた元隊長らが「集団自決」を命じたとされる本の記述で名誉を傷つけられたと出版の差し止めなどを求めた裁判。大阪地裁は28日、元隊長側の訴えを棄却しました。

この裁判は沖縄戦当時、座間味島の元守備隊長らが、大江健三郎さんの著書で「集団自決を命じた」ととり上げられ、名誉を傷つけられたとして出版の差し止めなどを求めていたものです。

28日の判決で大阪地裁の深見敏正裁判長は当時、貴重な武器だった手榴弾が住民に配られていたこと。また、集団自決が起きた全ての地域に日本軍が駐屯していて、軍がいなかった近くの島では集団自決が発生していないと指摘し、「集団自決に日本軍が深く関わったものと認められる」として、原告の訴えを棄却しました。

沖縄戦史守る闘い

この裁判、もともとは日本軍元隊長の名誉回復のための裁判だったんですが、次第に別の側面から注目されることになりました。

沖縄戦当時、慶良間に駐留していた日本軍の元隊長が大江健三郎さんを相手に起こした裁判。元隊長側はこう呼んでいました。

「沖縄集団自決冤罪訴訟」

大江さんの沖縄ノートで集団自決を命じた責任者とされ、名誉を傷つけられたと主張、自分は自決を命令していないと訴えたのです。こうした中、裁判は隊長個人の名誉回復の目的を越え、別の点から注目されることに。

県民大会「県民一丸となって頑張るぞ!」

去年持ち上がった教科書検定問題、集団自決における日本軍の強制の記述を削除させる理由に文科省はこの裁判を上げたのです。

元隊長側 徳永信一弁護士「隊長の命令があったんだということを想起させる、教科書でオーソライズされていたという錯覚を与えていたんじゃないかと。これまでの教科書の記述といったものを、この裁判をきっかけに変えよう、変えるべきじゃないかという文科省の判断というのはある意味において原告の方々が歓迎している部分があることは事実なんです。」

大江岩波側 岡本厚さん「一つの結論も出ていないし、原告側の主張に同意したこともない、一方の主張だけとりあげて、一つの結論も出ていないのに、出すこと自体おかしい。」

そして迎えたきょうの判決。大阪地裁は、集団自決における元隊長の命令までは認定しませんでしたが、「日本軍が深く関わったものと認められる」として事実上、軍の責任に踏み込んだ判決を出しました。

大江健三郎さん「裁判長が私の沖縄ノートを正確に読んでくださった。そしてこの判決を下されたということです。それは私にとって強い感銘でした。」

元隊長側 徳永信一弁護士「不当な判決である。軍の関与ということで、隊長の命令があったという内容の(沖縄ノートの)表現を免責したことには明らかに論理の飛躍がある。」

また、文科省が教科書書き換えの根拠とした元隊長側の訴えが棄却されたことを受けて、教科書執筆者たちは早速、検定意見の撤回をさせなければと声を上げています。

高校歴史教科書の執筆者 坂本昇さん「きょうの判決は大きく背中を押していただいた。励ましていただいたということを皆さんとともに喜びたいと思います。」

一方、渡嘉敷島での集団自決の生き残り、金城重明さんは「妥当な判決だ」と評価したうえで、「日本軍の命令についてもう少し踏み込んで欲しかった」と語っています。

金城重明さん「軍命があった。強制があったと多くの人々の証言にあると加味して判決を出せばなお良かった。」「あと10年すれば私はいない。戦争の悲劇(という事実)を残すことをしなければならない。」と語りました。

沖縄戦の歴史認識に大きな影響を及ぼすものと注目されたこの裁判、裁判所が日本軍の責任に大きく踏み込んだことを受け、沖縄戦の体験者や教科書執筆者はひとまず安堵した様子でした。

裁判は、沖縄の声を反映して決着した形です。しかし日本軍の強制について直接的な表現を避けた高校の歴史教科書は、来月から生徒たちに配られることになります。教科書検定審議会が記述変更の理由としてあげたこの裁判で、原告敗訴となったきょうの判決を受け、検定意見はもはやほとんど根拠を持たず、撤回を求める声が再び高まりそうです。