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集団自決への日本軍の強制、関与の記述が教科書検定で削除された問題で、仲井真知事や県民大会実行委員会の代表が3日、渡海文部科学大臣らと面談し、検定意見の撤回と記述を元に戻すよう要請しました。

渡海大臣への要請で、県民大会実行委員長の仲里県議会議長は、9月29日の県民大会決議を読み上げ、「教科書は未来を担う子どもたちに真実を伝える重要な役割を担っている。だからこそ、子どもたちに沖縄戦における『集団自決』が日本軍による関与なしに起こりえなかったことを正しく伝え、悲惨な戦争を再び起こさせないようにするためにはどうすればよいのかなどを教えていくことは、我々に課せられた重大な責務である」と述べて、決議文を手渡しました。

これまでの要請では大臣不在と、決して良いとはいえなかった文科省の対応でしたが、3日は大臣自らが仲井真知事ら14人の要請団に会い、25分間にわたって県民の声を聞きました。

しかし渡海大臣は「知恵を出せば問題に反映できるのでは」と県民の思いに一定の理解を示したものの、「検定制度に政治介入があってはならない」と強調、明確な回答は避けました。

要請後、仲井真知事は記者団の質問に「大臣からきちんとした答えはいただけなかったが、県民大会への大きな流れ、62年経っても傷が癒えないのを汲み取ろうという姿勢は評価できた。解決に向けてまとめてもらいたい」と述べました。

要請団はこのほか、岸田沖縄担当大臣や河野衆院議長、江田参院議長とも面談し、記述の復活を求めました。

要請団した仲井真知事や仲里委員長は政府の反応にどう感じているでしょうか?

島袋記者「『もう少し前向きな発言があると思っていた』仲里議長のこの言葉がとても印象的でした。11万人という県民大会の結果、それに対する政府の反応を見て、問題解決は早いと思っていたのに、はっきりとした回答は得られず、何度も『政治介入すべきではない』と繰り返す大臣の発言にがっかりした様子でした」

仲里利信委員長「マスコミの報道で『山が動くか』という風な感じを持ちつつ来た。目的は検定審議会を通すどうのこうのという事ではなくて、元あったように、事実は事実として戻していただきたい、手続きの問題じゃない」

島袋記者「総理と面談できるかも…と言う話もありましたが、それも叶いませんでした」

政府側は、検定意見の撤回ではなく、出版社の訂正を受ける形で収束させようとしているようですが、これに対して要請団の皆さんは?

島袋記者「ひとつは県民大会のタイトルにあるように、文科省に『撤回』宣言させ、間違いを認めさせるか、それとも執筆者や出版社に訂正申請を出させ、第3者の働きかけで記述を元通りに近づけていくかです。『撤回』させるとなると、文科省に事実上、謝罪させる事にもなる訳で、そこまで求めるかどうかと、要請団そして県議会内部でも意見が分かれています。しかし、訂正手続きは教科書会社に委ねられますので、どこまで検定前の状態に戻るか不透明です」

今回仮に、記述が元通りになったとしても、将来再び、書き換えられる可能性もありますよね。それについて関係者はどんな考えなんでしょうか?

島袋記者「二度と沖縄戦の記述を変えさせないために、何らかの布石を打っておきたい。そこで提案されているのがアジアの国々に配慮してできた『近隣諸国条項』の沖縄版です。『近隣諸国条項』とは80年代に『中国への侵略』を『進出』と書き換えようとしていたことが外交問題に発展したため、日本の教科書検定に定められた規定でつくられたものです。この条項がつくられたため、アジア諸国との歴史的な出来事については簡単に記述を変えられないようになっています。実行委員会のメンバーからはこれの『沖縄版』を作りたいとの意見も出ています」