2012年4月17日 18時40分

検証動かぬ基地 vol.108 「辺野古案」アメリカの有識者はこう見る

日米両政府による再編の見直し協議が進んでいますが、両政府は辺野古への新基地建設にこだわり続けています。この辺野古の問題はアメリカ国内ではどう受け止められているのか。草柳キャスターが取材しました。

人口、およそ60万人。様々な分野で世界を動かすアメリカの首都ワシントンは、驚くほど小さな町でした。

草柳キャスター「ワシントンには、今年、早目の春がやってきました。日米協議がにわかに動き始める中、今、ここワシントンでは何が起きているんでしょうか」

この街には多くのシンクタンクがあり、日米外交の専門家・政策立案者がいます。彼らの多くは、辺野古への移設案に正面から異を唱えています。

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スティーブ・クレモンス(アトランティック・主任編集員)「不可能な案だと思いますよ。日本政府には進める意思も能力も、予算もないでしょう。選択肢であるように装っているだけで、もはや選択肢ではありません。それは机上の空論であって、政治の現実の中では、そんな案は存在しません。幻想ではなく、政治的現実が必要なのです」「アメリカ政府はSACO合意通り、自ら普天間基地を返還すべきです。そして嘉手納に統合するか、もしくはその機能をグアムや他の場所に移転すべきです。そして日本に対して、同等の施設の提供を期待してはいけません。それはおろかで、出口のない、現状では実現できないことだからです」

著名な軍事評論家のマイケル・オハンロン氏は、去年11月、やはり日本の専門家である大学教授とともに海兵隊の撤退、後方展開論を発表し、話題を呼びました。

この中ではいくつかの選択肢が示されていて、海兵隊員をアメリカ本土に撤退させ、その代わりに自衛隊基地や民間の空港・港を自由に使用できれば新基地はいらないと主張しています。

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マイケル・オハンロン(ブルッキングス研究所・上級研究員)「例えば韓国周辺やどこかで危機が発生した場合、日本に配備した船は物資を積んで韓国に向かいます。そしてカリフォルニアやハワイに戻っていた海兵隊員は直ちに飛行機で現場に向かい合流するのです。こうすれば、沖縄の海兵隊員を削減してもこれを補うことができるでしょう」

一方で、辺野古への基地移設を巡る日本国内の議論にはいら立ちを隠しませんでした。

マイケル・オハンロン(ブルッキングス研究所・上級研究員)「日本国民と沖縄県民の双方が納得する解決法を導き出すことはできないのではないか。これは日本国内で、日本の国土をどのように使用するのか、地方と国の政府がコンセンサスを得ながら決める事柄です。沖縄県民だって、何を望むべきかはっきりしないでしょう。経済的側面から、基地に賛成する人も明らかにいるのですから」

オハンロン氏と連名で論文を発表したモチヅキ教授は、日本全体で負担を共有すべきだと訴えています。

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マイク・モチヅキ(ジョージワシントン大学教授)「長期の健全な日米同盟を構築するには、抜本的な米軍負担の再構成を考えなければならないでしょう。もし日本国民が、日米同盟を日本の安全のために重要だと考えるのであれば、日本の他の地域の皆さんも一歩前に出て、日本や東アジアの安全のために必要な軍事力の負担を受け入れるべきでしょう」

また、保守派の論客の中には、さらに踏み込んで、日米同盟そのものを不要とする声もあります。

「沖縄は沖縄県民に返せ」。レーガン政権で外交アドバイザーを務めたダグ・バンドウ氏は、今年発表した論文で、普天間だけでなく全ての基地を撤去すべきだと主張しています。

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ダグ・バンドウ(ケイトー研究所・上級研究員)「アメリカには、もはや予算もありませんし、この地域から撤退すべきです。もちろんこの地域の国々と、友好的な関係を築かなければなりません。また軍事的にも協力する必要があります。しかし、沖縄や他の日本国内、韓国に基地や部隊をこのまま維持する必要はありません。部隊は本国に帰るべきです。将来については、日本などが国防や他の国との関係について、自分で決断すべきだと思うのです」「80年近く前の出来事のために、引き続きこの地域に費用を出し続けるのは、アメリカ国民にとってもとても不公平なことです」

そして、アメリカで提起されたジュゴン裁判。裁判所は今年2月、実現するかどうかわからない計画を前提に審議するのは時間の無駄だとして、審理を一時停止しました。

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ビル・スナイプ(生物多様性センター・弁護士・原告)「ただ単にジュゴン、漁業、水質といった環境への影響だけではなくて、日本の文化の根幹にかかわる問題なのです。アメリカ政府がこうした根本的な疑問に答えない限り、我々は絶対にこの計画を前には進めません。もう終わりにすべきです」

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インタビューの結果をまとめてみました。辺野古への移設について、クレモンス氏は「不可能」。オハンロン氏とモチヅキ教授は「撤退・後方展開」。バンドウ氏は「全基地撤退」。そしてスナイプ弁護士は「反対」。

こうして見ると、もはや辺野古にこだわっているのは日米両政府だけなのではないか、という構図が見えてきます。

アメリカ国内では財政上の問題が一番の理由ではありますが、「普天間は辺野古へ」という図式が、亡霊のように彷徨っているだけ、という印象です。

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