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沖縄本島の北にある与論島。かつてパナウル王国という名で売り出していたんですが、意味はわかりますか?三上パナは花、ウルはさんごで、花とサンゴの島なんです。そういう与論も沖縄本島と同じく、1998年の海水温の上昇でサンゴが激減し、魚も取れなくなっていました。そこで7年前から「ウルプロジェクト」を立ち上げ、島をあげてサンゴの再生に乗り出しています。そんな与論島を北谷町でサンゴの移植に取り組むこの人が尋ねました。

人口5700人の与論島。この小さな島がサンゴの再生に熱心だと聞いて、金城浩二さんは興味を持ちました。5年前、北谷町で海人とサンゴ植え始めた時も、地域の理解を得ることが一番大変だったからです。

金城「近い!近いなあ。もしかしたら、こういう小さな島の方がみんなでできるのかなと思うよね」

到着後すぐに海に出た金城さん。目的は、電流を流した金属にサンゴを固着させる、通称「電流サンゴ」の実験を見ることです。

実は3年前、インドネシアのバリ島で、海底に沈めた構造物に電流を流してサンゴの成長を助けるというプロジェクトを見に行ったことがあり、北谷でもできるかを考えていたのです

九州大学・野島哲准教授「この場所は与論でいちばんサンゴの幼生が流れてきて、今までで一番、1歳のサンゴが見つかる場所なんです」

与論で電流サンゴの実験を進めているのは、九州大学の野島先生。早くからサンゴの再生を手掛ける研究者です。

水深16メートル。半円形の金属製のカゴがあります。

電流を流して炭酸カルシウムが付着させてから、今年6月の産卵に合わせてここに設置しました。カルシウムの基盤にはサンゴがつきやすいのです。

流れ着いた卵をキャッチするだけではなく、丸い着床具ごと移植できるようになっています。

少し離れた所に置かれた「着床具」。この形は効率よくサンゴの卵を付着させるための工夫で、サンゴがついたらコマごと移植します。

そのほか浅いところでは、通電し続けているもの、6月からやめたもの、電気は通していないものと3つのパターンで、どれがサンゴの再生にむいているのかを実験しています

金城さんは網目がテーブルサンゴに似ていると感心しています。サンゴの卵がくっつきやすい形なんだとか。

金城さん「クシハダミドリイシみたいな感じの、きれいなメッシュ作られていて、なるほどなあと思った。僕がミドリイシだったら着く。そんな感じ」

この「ウルプロジェクト」は、サンゴの現状を調べ始めたダイバーを中心に、漁業・観光業、役場を巻き込んで広がりました。

ヨロン島観光協会・田畑克夫会長「東洋に浮か真珠とうたわれた、サンゴに囲まれた島をもう一度取り戻すんだということで、協会の中でウルプロジェクトを立ち上げて。意識も変わったと思いますよ、その立ち上げた時からは」

田畑さんが子どものころ、与論の海は竜宮城のようでした。やがて沖縄が復帰し、与論の観光ブームが去り、何とか観光を立て直そうと焦る中、10年前の白化現象でサンゴはめちゃめちゃになりました。ならば「サンゴの再生に本気の島」として頑張る姿を丸ごと見てもらおうと、野島先生のような専門家に働きかけました。

野島さん「地元の人が熱心で、自分の島にとってサンゴは宝だ、海を取り戻したいんだって言われた時に、お手伝いができるならやってみようと」

一人の学者を本気にさせたウルプロジェクト。島の子どもたちも、立派な一員なのです」

先生「砂糖、ヨーグルト、ドライイーストをいれまーす!」

調理実習でしょうか?いえいえ。これは、ヨーグルトや納豆という家庭の食材で作れる「えひめAI-2」という排水をきれいにする物質です。

汚染物質の分解を助けるもので、各家庭でこれを作り、地域の浄化に成功した例も報告されています。

ペットボトルに入れて35度の環境で1週間置くと、日本酒のような発酵臭がして出来上がり。

子ども「台所の排水口とかに流したらそこが白くなって、においがなくなった「海を汚さないように」

例えば、米のとぎ汁を畑にまけば土が栄養を分解し、地下水はきれいになりますが、パイプで海に流せば海を汚してしまいます。「えひめAI-2」は栄養分を分解する土の役割をはたすのです。

与論では家庭の排水と海の距離が近く、まさに台所の流しは「海の入口」。「えひめAI-2」を使うことで、そんな意識も高まります。

茶花小学校・坂元充校長「子どもたちが作って持ち帰ったえひめAI-2で、非常にきれいになる様子を自分で見ますので、お父さんお母さんも非常に納得行くと思う。納得がいけば実践につながると」

金城さん、サンゴの大切さをみんなに話しました。

金城さん「世界中に海はいっぱいあるけど、わずか0.2%だけがサンゴがある場所。意味わかる?だからこの与論の周りにあるサンゴ礁は地球上の0.2%のなかのこの島になるわけ」

与論が大好きという子どもたちに、金城さんは大きな可能性を感じました。

金城さん「どっかからえらい人が来て、この島をきれいにしてくれたりはしない。ここに暮らしてる人みんながこの島を大事に思って、できることからやっていれば、たぶんとってもきれいになると思う」

もう一度サンゴの島にしようと大人が頑張って、それを見て排水の浄化を進める子どもたち。いい雰囲気ですね。地域が変われば、海も変わる。与論は最初にそれを示してくれる島になるのかも知れません。