名護市辺野古沖で船2隻が転覆し女子高生と船長の2人が死亡した事故からきょうで1週間です。
現在も海上保安庁や運輸安全委員会による捜査・調査が行われている中で当時、現場では何が起きていたのか。関係者への取材を基に事故の経緯を追います。
今月16日、研修旅行で京都から訪れていた高校生らを乗せた船が辺野古沖で転覆しました。
転覆したのは「不屈」と「平和丸」。この事故で平和丸に乗っていた女子高校生と「不屈」の船長の2人が亡くなりました。
この周辺の海域では、アメリカ軍普天間基地の移設を巡って国が強行に埋め立て工事を進めています。
今回、転覆した船は、辺野古移設に反対する「ヘリ基地反対協議会」が運航しています。海上では抗議活動の際にも使用されていますが「現場を視察したい」と一般からの希望があれば航行していました。
午前9時半ごろ、辺野古漁港を出港した2隻は、珊瑚礁をみたあと、大浦湾を一周する予定でした。
当時、波浪注意報が発表されていましたが、船長の判断で出航。海保によると、海上では2隻に対し注意喚起のアナウンスを呼びかけていて「不屈」の乗船者が手を上げて合図を送ったことが確認されています。
出航の判断について、平和丸に乗っていた男性は次のように話します。
平和丸に乗っていた男性「波も考慮しますけど(波が)3メートル以上であれば出ない。当時は3メートルから2.5と下がる予報だったので、でれる海況というふうに」
「不屈」と「平和丸」は「不屈」を先頭に航行し、長島を通過して大浦湾方面へ北上、その後Uターンし南へ戻るルートを取っていました。
平和丸乗組員「最干潮の前後1時間は(長島を)通るのが難しい。船体を傷つける可能性がある。外洋周り(外回り)になるのが一般的です」
辺野古の海域は陸地に近いところにリーフが広がっていて、その先は水深が深くなっています。リーフ周辺は押し寄せた波が高くなりやすく、この時期は急な天候の変化で風が強まり、海が荒れやすいといいます。
平和丸乗組員「リーフの上は白波立っていてて、はしれる(航行できる)ような状況ではなかった。ニンガチカジマーイ(2月風回り)の時にしか起こらない特有の諸条件、寒暖の差が大きいだったり、その当時だと波の周期もかなり倍異常に遅かったと言われている。色んな所条件が重なってこそ起きる大波だったのかなという」
出航して40分後、先頭を航行していた「不屈」が高波をうけて転覆。その状況を見た「平和丸」が助けに向かいます。
平和丸乗組員「平和丸は(不屈が転覆した)2分後に駆け付けて、なんとか助けたいという思いで一心で、波が来ているもの気づいてなんとか波を立てようとしたものの、舵をきるのが少し遅れてしまって」
しかしその直後、高波を受け平和丸も転覆します。
平和丸乗組員「大きな大波4メートル5メートル近い波が来たというのもまた事実で、リーフの中ではなくて、リーフから離れたところでもそれだけの大波が来てた」
2隻に乗船してた高校生らは海に投げ出されましたが、事故発生からおよそ30分以内に海保や消防によって救助されました。しかし、亡くなった女子高校生は、転覆した船にライフジャケットが引っかかった状態で見つかりました。
平和丸乗組員「目の前に溺れかけている生徒たちがいて、それで引き返して自分たちだけ緊急避難ということができるのかというのが、本当に問われてしまった。亡くなられた彼女が平和丸に乗っていた以上、責任は免れないというか、僕も乗っていた人間として申し訳ない気持ちでいっぱいで。船内に取り残されている人がいるかもしれないということに早く気づいて、船内に潜って探してあげられればなと。すぐに救出できていればなというふうには、本当に後悔の思いでいっぱいです」
女子高校生と船長の2人が亡くなった今回の事故。出航の判断は適切だったのか。日本水難救済会の理事長は次のように指摘します。
日本水難救済会 遠山純司理事長「波浪注意報が出されてたということは、基本的に波の高さ2.5mの波が発生する可能性があるということなんですよね。この2.5mの波のときにこの小型船ですね。これだけもう定員ギリギリの人を乗せて、安定性が悪い状態になって出港するというのは基本的にあり得ません。危険な状態になってからではそれから離脱するというのは極めて困難です」
また、今回の事故は船長や運航団体に刑法犯が適用される可能性が高いといいます。
日本水難救済会 遠山純司理事長「業務上過失致死傷ということで、これは船を危険な状態にして乗っている人にですね、死に至らしめるケガを負わせるということですね。もう一つは業務上過失往来危険罪。これは船を運航してですね、船に安全の危険を生じさせるということですね。これが成立する可能性が高くて、まず海保はこの容疑で捜査を開始しているということですね」
キャスター:ではここからは取材を続ける山本記者とお伝えします。よろしくお願いします。
山本記者:よろしくお願いします。
キャスター:VTRの最後にもありましたが、今回の事故が立件されることが可能性としてあり得るのでしょうか。
山本記者:はい。11管区で長年勤務し、第3区海上保安本部で本部長も務められた元海上保安官の遠山さんによると、その可能性は「かなり高い」としています。
山本記者:今回立件される可能性があるのは3つの容疑です。1つ目が必要な注意を怠り、人を死亡、または負傷させる「業務上過失致死傷」。2つ目が、船長などが船などの往来に危険を生じさせ、転覆などさせる「業務上過失往来危険」。そして3つ目が「海上運送法違反」です。
キャスター:「海上運送法」というのは…?
山本記者:「海上運送法」とは、船による運送の安全や利用者の保護、事業の健全な発展などを目的とした法律です。その中で、旅客定員12人以下の船であっても、人の需要に応じて輸送する場合は「一般不定期航路事業」として登録が必要となります。
山本記者:これは、2022年に北海道・知床半島沖で発生した遊覧船「KAZUⅠ」の沈没事故を受けて、2023年6月に改正されたもので、12人以下の船であっても、書類を提出するだけで事業を開始できる「届け出」ではなく、審査を経て承認が得られる「登録」が必要になりました。
山本記者:今回転覆した2隻については、最大搭載人員数は「平和丸」が旅客12人、船員1人「不屈」が旅客9人、船員1人でした。
山本記者:また会見で記者から「事業登録をしていない」ことついて問われ、団体は「活動はボランティアでやっていて、事業としてやっているわけではない」と回答。しかし、海上運送法には「有償、無償を問わず」とされています。海保は、そもそも登録が必要な船だったかどうか含めて捜査を進めています。
キャスター:今回の事故では誰が立件される可能性があるのでしょうか。
山本記者:まずは船を運航していた2人の船長は該当すると思われます。波浪注意報で2.5メートルの波が発生する可能性があるときに定員ギリギリの人数で船を出した船長の判断がどうなのかなどを詳しく捜査していると思われます。次に運航していた団体「ヘリ基地反対協議会」です。この船は組織として運航しているため、組織として誰かが責任を取る必要があります。
山本記者:専門家によりますと、この「誰か」を特定するために、海保は先週、事務所などに家宅捜索を行ったのではないかと考えられ、当日出航するときにどういう判断があったかなどがわかる書類やメールのやり取りを抑えたのではないかと考えられるということです。
キャスター:きのうは、船長を連れて現場で事情を聞くなど海保の捜査が進んでいます。今後、詳しい原因や責任の所在が明らかになっていくと思います。
キャスター:以上ここまで山本記者とお伝えしました。ありがとうございました。
