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みなさんは、学校現場で「がん教育」が進められているのをご存知ですか?日本人の死因で最も多いがんについて、子どもの頃から正しい知識をもってもらおうと新しい学習指導要領に基づいて、一昨年から段階的に、小中高校で必修化されています。

語り手として、子どもたちに、がんの知識や自らの闘病体験を伝える男性を取材しました。

沖縄がん教育サポートセンター 代表 徳元亮太さん「先生からこの一言目ですね。この検査結果が残念ながら、このしこりは、首のしこりは悪性でしたと。かなり重症の度合いかもしれない。聞いた瞬間頭がすごい真っ白になったんですね」

那覇市の中学校で、自身の闘病体験を語る徳元亮太さん。2年前にステージ3の甲状腺がんが見つかりました。

がん教育必修化 がん患者らが語り手に

沖縄がん教育サポートセンター 代表 徳元亮太さん「一番先に浮かんできたのが、子どもたちの顔なんですね。この先この子供たちの成長、自分見届けるのかなとか。子供たちは大丈夫なんだろうかなとか」

がんを克服した徳元さんは今、がん経験者や医療従事者とともに、「がん教育」の語り手として活動を始めています。日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなる「がん」

がん教育は、新しい学習指導要領に基づき、子どもの頃からがんの正しい知識や検診の大切さを理解してもらおうと、小・中・高校で導入されています。

国は、がんの専門性から、医師やがんを経験した人を外部講師とするよう勧めていますが講師ができる人が少ないため、授業の割合は伸び悩んでいます。そうしたなか、県内では、今年10月に、がんを経験した医療従事者が中心となって、NPO団体「沖縄がん教育サポートセンター」を設立。

県と連携して、がん経験者を講師として育成する活動を始めることにしたのです。

サポートセンターの代表をつとめる徳元亮太さんは、南風原町の病院で、理学療法士として働いています。学生時代は野球部のピッチャー、社会人になってからは、マラソン大会に出場するなど、健康には自信があった徳元さん。

2年前に、ステージ3の甲状腺がんの診断を受けた時は、「まさか自分が…」と、現実を受け止めることができませんでした。

がん教育必修化 がん患者らが語り手に

ふたりの娘は、当時まだ3歳と1歳になったばかり。家族に余計な心配をかけたくない思いから、精密検査の結果が出るまでの1週間、不安を胸に秘めて過ごしました。

沖縄がん教育サポートセンター 代表 徳元亮太さん「いろんなことが頭の中がパンクしそうな感じ。とりあえず子供たちのためにも早く良くしないといけないっていう気持ちがあったので、そこだけを思って治療に臨もうと思いました」

幸い他の臓器への転移はみられなかったため、検査の2週間後にすぐ手術をおこない、甲状腺を切除しました。

退院後は、甲状腺の機能をおぎなう薬を服用しながら、職場に復帰しています。

がんをきっかけに、生き方を見つめ直した徳元さん。何かの役に立ちたいと願うなかで、語り手が不足していた「がん教育」を手伝うことにしたのです。

徳元さんは、ともに講師をつとめる新垣さんと病院を訪ねました。迎えてくれたのは、がんの専門医として20年近く治療にあたっている玉城医師です。医師の立場から、がん教育サポートセンターの活動を支えています。

沖縄がん教育サポートセンター 代表 徳元亮太さん「遺伝子因子っていうのもあるんだけれども、ごく一部なので、必ずしも家族がなってるからといってもすごい怖がる必要はないですよっていう形で説明しようかなと思ってます」

この日は、がん教育で子どもたちに話す内容についての確認です。

がん教育必修化 がん患者らが語り手に

那覇西クリニック 玉城研太朗 理事長「親も兄弟も誰もがんがいないので自分も絶対ならないから、がん検診を受けないっていう方が結構いるんですね。例えば乳癌に特化し、フォーカスを当ててお話をすると、 乳がんの遺伝性乳がんというのは全体の5%ぐらいで、大部分が遺伝じゃないと、なので、しっかり早期発見早期治療のための検診がすごく重要なポイントだというふうに思いました」

誤解を与えないように、情報や伝え方のニュアンスなど、細かな配慮が求められます。

那覇西クリニック 玉城研太朗 理事長「いきなり大人になって、ご自身ががんです、あるいは両親ががんです、おじいちゃんおばあちゃんががんですと言われてですね、やっぱりショックが大きいだろうというふうに思います。そして特別視をしてしまう、ああもうお父さんはかわいそうな人だ、お母さんかわいそうな人だ、でもそういうことじゃないという、もうこういうのは誰がなってもおかしくない時代で、実際身内にそういうことが起こったとき、あるいはご自身、子どもたちが大きくなってなったときにどういうふうな心構えが必要かっていうものを若いうちからやっぱり浸透させていくということはものすごく重要だと思っていますね」

沖縄がん教育サポートセンター 代表 徳元亮太さん「がんって聞くと、珍しい病気って皆さん思うんですね、でもそうじゃないんですね、やっぱり生涯のうち、いまは2人に1人がなるっていうことなので」

徳元さんは、がんの正しい知識だけでなく、がん患者が感じる不安や、病気を克服したあとも続く大変さについても自身の経験を踏まえながら伝えました。

沖縄がん教育サポートセンター 代表 徳元亮太さん「甲状腺を取っちゃったので、この甲状腺に代わるお薬を飲まないといけないんですねそれをちょっと毎日飲むんですけれども、この副作用でやっぱりこの少しめまいがしたりとかですね、やっぱりちょっと眠くなっちゃったりとか、で、私はこの現状をこの職場の方にですね、しっかりこの相談してこのどうやったら職場復帰をできるんだろうかっていうのを一緒に相談してもらって、仕事の時間だったりですね。この量調整してもらいました」

がんの当事者の声は、子どもたちにどう響いたのでしょうか。

中学生「実際にがんになった人が話していると、すごく現実味を感じました」

中学生「生活習慣でも少しでもリスクは抑えられるので、今から自分の生活習慣とか見直していきたいなって思いました」

がん教育必修化 がん患者らが語り手に

徳元亮太さん「がんに対する正しい知識っていうのを身につけた上で、これをからまた偏見のないこのがんについてのこの社会っていうのを、あの創造できると思いますので、1人1人、がんについてこの考えてくれたっていうのはすごい私の中で大きなこの喜びかなと思います」

外部講師を活用している学校は、全国8%、沖縄2.9%と低い状況にある。徳元さんたち「沖縄がん教育サポートセンター」では、琉球大学と協力してがん経験者やその家族を対象に、外部講師の養成講座を企画。がん教育を広げていこうと取り組んでいます。