先月、ある本の刊行記念イベントに多くの人が詰めかけました。人々が手に取るのは「沖縄県史(各論編6)沖縄戦」。沖縄戦の研究書として、県が43年ぶりに刊行したことで注目されています。

慰霊の日リポート(2) 受け継がれる沖縄戦研究

来場者「本当に今までの研究の蓄積がガッとまとまってすごい本ができたなと思って」「知りたい分野というのがけっこう今度は細分化されているし、そういう意味ではもっともっと私たちや若い人たちへの良い資料になるなというのはとても感じます」

編集事業が始まったのは22年前。実は、1970年代に刊行された旧・県史など、それまでの研究書は住民の証言集といった形をとるものが中心でした。編集部会の会長を務めた沖縄国際大学の吉浜忍教授は新・県史のねらいをこう話します。

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吉浜忍教授「実相とか史実を描く場合には証言だけでは足りないわけです。それを裏付ける資料をやっぱりしっかり置かないと。日本軍の資料とか米軍の資料を裏付ける資料として収集ないし分析する。そういうことを合わせてこの県史は出来上がったということなんです。したがって県史沖縄戦というのは、現段階で最新の沖縄戦研究の集大成ということです」

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住民証言に最新の研究成果を盛り込んだ824ページ。72のテーマで描かれ、近年の研究で明らかになった「戦争孤児」や「ハンセン病者」などの分野にも光を当てています。

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吉浜教授「2000年代に新たなテーマで、沖縄戦研究したのがどんどん出てきまして。住民と言っても色んな住民がいるわけですから、その中でも弱い立場の人しっかり描かないと真実が見えてこないものもありますから、それを入れているということです」

幅広いのはテーマだけではありません。執筆陣は、戦前生まれのベテラン研究者から30代の若手まで37人。その中には、吉浜教授のかつての教え子の姿もありました。吉浜教授のもとで歴史学を学び、現在は地域の戦中戦後史を研究する伊佐真一朗さん。

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伊佐真一朗さん「本格的に執筆経験はそんなにないんですけど、チャレンジしてほしいということお話をいただいて。背中押してもらったと思いますね」

担当したテーマは「障害者の沖縄戦」。先輩たちが積み重ねてきた資料や論文などを読み漁り、戦闘に巻き込まれ戦場をさまよった障害者たちの過酷な状況を明らかにしました。またその一方で、戦争によって障害者になってしまった人々の戦後の暮らしにも着目するなど、新たな視点での論考にも挑戦しています。

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伊佐さん「まだまだ知らない沖縄戦の姿がある。まだ語られないけれども僕らが聞かないといけない戦争体験がまだまだたくさんあるのかなってことは今回意識しました。最近アメリカ軍の資料どんどん公開されていってる。手つかずの世界がまだあるってことを考えると、僕自身見てみたいし、知りたい視点というのはいくつかあります」

まだ知られていない沖縄戦の姿を解明したい。教え子の思いに恩師もエールを送ります。

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吉浜教授「沖縄戦というのは“つなぐ”という沖縄戦研究もこれが大事だと思う。今まで描かれなかったものを若い人たちがきちっと押さえて。次もし県史が生まれるなら、若手中堅が今度は中心になって描いていくということになるんじゃないかな」

次世代へバトンを渡しながら続いていく沖縄戦研究。次の県史の編纂はすでに始まっているのかもしれません。

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