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沖縄に古くから伝わる追い込み漁「アギヤー」。アギヤーとは宮古島の方言で「網を揚げる」という意味。今日のQプラスリポートは、伊良部島で唯一、本格的な追い込み漁・アギヤーを行っている國吉組に密着しました。

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

海の中を優雅に泳ぎまわるグルクン。それらを網に追い込み、一網打尽。今日のQプラスリポートは、伊良部島・追い込み漁「アギヤー」にかける男たちの姿を追います。

伊良部島・佐良浜地区。少しこわもてのこちらの男性。県内で唯一、本格的な「追い込み漁・アギヤー」を行っている國吉組。潜り長の國吉正雄さんです。

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

國吉正雄さん「(Q:この黄色い棒は?)これで魚を追いつけるよ!(Q:これ名前は?)サッビャ(Q:伊良部の方言?)うん」

こちらは潜るときに使用するタンク。傷つけないようにタイヤのチューブを巻き、その上からさび止めのペンキを塗り重ねています。

この日は、グルクンはグルクンでも商品として出まわるグルクンではなく、カツオ漁のエサに使うグルクンの稚魚を捕りに行きます。

現在、國吉組でアギヤー漁を行っているのは9人。そのほとんどが高齢者。平均年齢は何と65歳。

「(Q:これは何ですか?)航海安全。泡盛」

伊良部島から北東へ20キロ。八重干瀬というエリアに向かいます。國吉さんの頭の中には数百もの漁場が入っていて、その日の天気予報や風の向き、潮の動きを計算に入れポイントを決めています。

泡盛を海の中へ。これが漁場に到着した合図です。

タオルで頭部を覆うのは、けが防止と髪が太陽と塩水で赤く脱色するのを防ぐため。海に潜る前に、まずは水面からグルクンの群れを探します。

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

『下にたくさん魚がいるということで、今から網を張る作業が始まります』

重さ20キロのタンクを背負い、いざ海の中へ。網を張る作業に入ります。

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

アギヤー漁に使うのは2種類の網。袖網と袋網と呼ばれるもので、それらを海の中に設置し、漁師たちがグルクンを追いこみます。

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

まずは袋網の設置から。かつてのアギヤー漁は、全員素潜りで潜行し作業をしていました。今はタンクを使用しているので作業もはかどり、人手が少なくてすむようになったそうです。

袋網の設置が完了すると、次は袖網です。1枚の袖網の長さは50m。それを手際よく張っていきます。

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

水中での会話はもちろんできません。阿吽の呼吸でそれぞれ作業をこなしていきます。

すべての網の設置が完了すると、國吉さんが追い込み棒を持って入ってきました。アギヤー漁のスタートです。

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

棒を突き刺すように激しく動かし、網の中へグルクンを追い込んでいきます。1匹たりとも、袖網から出ていかないように、横1列になりグルクンを追い込みます。

そして、袋網まで追い込んだら固定ロープをほどき、サバニの上からロープを引き、網を揚げていきます。

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

網にかかったグルクンの群れ。まさに一網打尽です。

捕獲したグルクンはカツオのエサとして使うため、海水が入った生簀の中に入れ、生き餌として持ち帰ります。

一度、網を引き揚げるとすぐさま違うポイントへ。休む暇はありません。

50年前までは100人の組が3,4組いたそうですが、現在、アギヤー漁を行っているのは國吉組のわずか9人だけ。過酷さゆえに、年々、漁師の数が減少しているんです。

國吉さん「後継者よ!後継者がいなかったら、いつ辞めるかわからない。できる範囲は頑張るしかない」

Qプラスリポート 追い込み漁 “アギヤー”に密着

ある時は海に溶け込むように素早く網を張り、そしてある時は狩人のごとくグルクンを追い込む。伊良部島が誇る貴重な伝統漁・アギヤー。だからこそこの先も途絶えることなく守り続けてもらいたい。