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日本軍の関与を認めた2審の判決が確定です。沖縄戦で日本軍の指揮官が住民に集団自決を命じたとされる、作家・大江健三郎さんの記述をめぐって、当時の守備隊長らが名誉を傷つけられたとして大江さんと出版社に出版差し止めなどを求めた訴訟で、最高裁第一小法廷は22日までに、原告の上告を退ける決定をしました。これにより、大江さん勝訴の判決が確定しました。

この裁判は、住民に集団自決を命じたと沖縄ノートに記述され、名誉が傷つけられたとして元隊長らが訴えていたものです。

一審の大阪地裁は、集団自決への軍の関与が認められるとして、大江さんが軍の命令があったと信じたことには相当の理由があったとして、名誉棄損には当たらないとしました。また2008年10月の大阪高裁判決でも軍の関与は否定できないと判断、元隊長らが直接命じたかどうかは断定できないとしましたが、名誉棄損には当たらないとして原告の控訴を棄却していました。

今回の最高裁の決定は、原告側の主張は上告理由にあたらないとして上告を棄却したもので、内容には踏み込みませんでした。これにより、大江さん勝訴の判決が確定しました。

大江健三郎さんは会見で「沖縄戦で日本人がどのように沖縄の日本人に対して苦痛を与えたかということを我々はずっと記憶し続けていよう。この本のことを覚えていてもらいたい。高校生にも読んでもらいたい」と話していました。

一方、この裁判は2006年度の教科書検定で集団自決に関する日本軍の命令や関与の記述が削除される理由ともなっていました。今回の結果を受け、琉球大学教育学部の山口剛史准教授は「軍と行政、住民との関係が証言から見えてきました。これを沖縄戦研究を深めながら教科書に反映させていく。教科書記述に関しても大きな前進を見るのではないかと思っている」と話しています。