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20日後に迫った総選挙。自民・民主両党の政権争いは激しさを増しています。政権交代があるかという大きな焦点と、もうひとつ、注目されるのが、子育てを巡る政策論争です。県内で子育てに励む若い世代は、この選挙をどう見ているのでしょうか。

南城市大里のみどり保育所。ここで唯一の男性保育士として働いているのが、城間一樹さん、23歳。2歳児のクラスを担当していて、自身も1歳半の子を持つ父親です。

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城間一樹さん「自分が親になって、子どもは宝だなって思って。その宝を預かってるじゃないですか、宝物を。ちゃんと、もっと責任持っていかないといけないなって思いますね」

学生のころから保育士を目指し、夢を叶えた城間さんですが、保育所では、給与が日給計算の臨時職員という不安定な立場にいます。

城間一樹さん「男の人で、保育をやっている人が少ないのは、賃金が安いという面もあって。保育の現場からは、もうちょっと賃金を上げてほしいってのがありますね」

毎日子どもの顔を見ることができて充実した日々ですが、今の状態がいつまで続くのか、不安もあります。

城間一樹さん「ただいま〜」

アパートには妻と息子の3人暮らし。まもなく2番目の子どもが産まれ、4人家族になる予定です。しかし、逆に経済的な不安は増すことになります。

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〔Q月収は?〕城間一樹さん「10万ちょいとか。12、13万とかですね。」「今は何とかやっていけているけど、これが厳しくなったら、そういうこと(転職)も考えないといけないときが来ると思いますね」

そんな城間さんにとって、今回の総選挙は、いったいどんな意味を持つのでしょうか。

城間一樹さん「子どもたちが安心して暮らせるような社会になってくれればいいかなと思います」

親として、当然気になるのは「子ども」に関する政策。そこで、政権を奪い合う自民・民主両党の子ども政策を専門家に分析してもらいました。

加藤彰彦教授「これからの時代を作る人たちにむしろ投資をしていくと」「で、今回はその頭だしが一斉に出たんだと思うんですね。」

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沖縄大学の加藤彰彦教授は、今まで高齢者中心だった社会保障政策を支える、若い世代が少なくなってきていることに危機感を持った各政党が、今回の選挙で動き始めた、と分析しています。

加藤彰彦教授「自民党と公明党が出しているのは、幼稚園教育ですね。幼稚園教育の無償化っていうことですね」「小学校に連動するもっと小さい子どもたちが安心して生まれるようなところにシフトを置こうと」「それに対して民主党は、(今児童手当といいましたけど、)児童手当てを、中学校卒業まで、という風に言うわけですよね」「あとのほう(小学校卒業後)に力を入れようというのが民主党」

幼児教育無料化。年額31万2千円の子ども手当て。どちらも、保護者の負担を軽減する方向性では一致しています。しかし城間さんは、自分の息子が保育園に入ることすら難しかった現実を経験しただけに、突然状況が変わるとは思っていません。言葉に踊らさるだけでなく、その公約が本当に実現しそうなものかどうかを重視したい、と話します。

城間一樹さん「どの政党になったとしても、実際にその公約を実現したときに、日本は変わったかなとか、政治は変わったなと思えると思うんで、そういう時が来たらいいなと思うんですけど。」

加藤教授も、大事なのは家庭単位ではなく、社会全体で子育てを考えるように変わっていけるかどうかだと話します。

加藤教授「子育てがきちっとされているということは、次の時代を保障していることなんですね。」「もっと本質的な、子どもをどう育てていくかというね、そういう議論がこれから始まることができれば、とっても今度の選挙はユニークな選挙になっていくと思いますし」

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「投票日になったら、投票は?」城間一樹さん「行きます」「最後の最後まで、よく考えて、決めたいと思います」

取材した久田記者です。子育て政策も注目の焦点ということですが、今までの選挙で、これほど子育ての問題が注目されたのは記憶にないんですが。

はい、これだけ子育て支援が注目を浴びるということは、加藤教授が言ったように、少子化に対する危機感と、これまでの個人任せの子育て政策に対する国民の不満に配慮した、ということではないでしょうか。このフリップに各政党の子育て関係の公約がありますけれども、見ていただいて分かるように、様々な分野で公約が出ていまして、おおむね意見の一致する政党が多いんですね。

保育所の待機児童解消という問題は、特に沖縄では長年の課題ですよね。そうですね。県内の待機児童は2000人近くいて、全国平均の6倍という深刻な問題です。これは現在与党の自公両党も公約にしていますし、どの政党も触れている問題ですから、注目されるところですよね。

そして、2005年から段階的に削減されて今年度からなくなった生活保護の母子加算復活という問題があります。これについては加藤教授の見解を聞いています。

加藤教授「だいたい5割以上の方たちが、10万前後なんですよ。収入がね。母子家庭の方たちはね。だからそこに加算が付かなければもう生活できないという状況ですね。」「ここはもう当然沖縄では絶対改善しなきゃならないという課題だと思いますよね」

母子加算は2005年から段階的に廃止されて今年度からなくなったわけですが、野党は即復活を求めて足並みを揃えています。政権が変わればすぐに動く問題の1つですね。このほかにも高校教育の無償化など、かなり予算のかかる公約が出ていますけど、肝心なのは実現するかどうか、ですよね。

はい。自民党、民主党どちらが中心の政権になっても、本当に公約が実行されれば、子育てを巡る環境は大きく変わっていくことになりますね。

しかしこれだけ子育て支援策を並べてまったく実現しなければ、票集めのためにアメをチラつかせただけ、ということになります。それなりの計画と覚悟を持ってやってもらわないといけません。また有権者も、多岐にわたる公約、政策を十分見極めて投票する責任がありますね。